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神の雷(トール・ハンマー)〜家族を奪われた天才物理学者の逆行転生。未来の知識で四大勢力に復讐する〜  作者: 天音天成
第5章:審判の日

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第81話 狂乱の超大国と、全世界への宣戦布告

 南太平洋上空から降り注いだ百発のタングステン弾(神の槍)により、G4(臨時四ヶ国協調体制)の誇る合同大艦隊は、わずか数分で文字通り海の底へと姿を消した。


 アメリカ合衆国、ワシントンD.C.。

 ホワイトハウスの地下に位置する大統領危機管理センター(PEOC)は、絶望と狂気が入り混じる完全な阿鼻叫喚の地獄と化していた。


「――通信途絶! 第7艦隊、および空母打撃群の全艦艇からの応答がありません! すべて……すべて海の藻屑となりました!」

 オペレーターの血を吐くような絶叫が、司令室に響き渡る。


「馬鹿な……! あり得ない! 我々の無敵の艦隊が、たった数分で全滅しただと!?」

 アメリカ大統領は、血の気を失った顔でメインスクリーンに映る「信号ロスト」の砂嵐を睨みつけていた。

 隣に立つCIA長官や国防長官も、震える手で頭を抱え、言葉を失っている。


 彼らは数時間前まで、ニヴルヘイムの地上施設を制圧し、日本列島を四分割する『勝利の美酒』に酔いしれていた。極東の悪魔がついにエネルギーを尽きさせ、自分たちの圧倒的な物量の前にひれ伏したのだと確信していた。

 だが、現実は違った。

 神盾宗一は、彼らが歓喜の頂点に達するその瞬間を冷酷に待ち構え、宇宙空間から物理的な『質量メテオ』を落として、彼らの希望ごと大艦隊を粉砕したのだ。


「大統領! 中国とロシアの首脳から緊急のホットラインです! 彼らも艦隊の全滅を把握し、完全にパニックに陥っています!」

「繋げ!」


 大統領が怒鳴ると、モニターが三分割され、中国の国家主席とロシアの大統領の蒼白な顔が映し出された。


『これはどういうことだ! 貴国は、奴らの宇宙インフラは限界を迎えたと報告していたはずだぞ!』

 ロシアの大統領が、画面越しに唾を飛ばしながら怒号を上げる。

『我が国の艦隊が全滅したのだぞ! このままでは、我々の国家防衛網そのものが崩壊する!』


『……もはや、通常戦力で奴を止めることは不可能だ』

 中国の国家主席が、震える声で、しかし底知れぬ狂気を孕んだ瞳で言葉を継いだ。

『奴は悪魔だ。地球上のいかなる軍隊も、宇宙からの質量兵器の前には意味を成さない。……我々に残された道は、ただ一つしかない』


「……ニュークリア、か」

 アメリカ大統領が、重々しく呻いた。


 ICBM(大陸間弾道ミサイル)による、孤島要塞ニヴルヘイムへの戦略核攻撃。

 放射能汚染や国際社会の非難など、もはや考慮している余裕はない。彼らのプライドと国家の威信は完全に砕き割られ、残されたのは「自分が殺される前に、相手を消滅させなければならない」という動物的な恐怖だけだった。


「やむを得まい。G4の総意として、最高警戒レベル(デフコン1)を発令する」

 大統領は、震える手で自らの前に置かれた『核のボタン(フットボール)』の認証ケースに手を伸ばした。

「ターゲットは南太平洋の孤島、および東京。各国の戦略原潜およびサイロから同時に核ミサイルを発射し、あの悪魔を文字通り地球上から地図ごと消し去――」


 大統領が認証コードの入力を開始しようとした、まさにその瞬間だった。


 ピーーーーッ!!


 突然、PEOCの司令室内のすべてのスピーカーから、鼓膜を劈くような甲高い高周波音が鳴り響いた。

 同時に、メインスクリーンから手元のタブレット、さらには大統領のスマートフォンに至るまで、すべてのモニターが強制的にブラックアウトする。


「な、なんだ!? システム障害か!」

「違います! 外部からの異常なトラフィックが……ファイアウォールを完全に無視して侵入しています!」


 そして、ブラックアウトしたすべての画面に、極低温の暗闇の中で、顔の上半分を『漆黒の仮面』で覆い隠した一人の男の姿が浮かび上がった。


『――愚か者どもよ。お前たちのその浅ましい決断は、すべて私の想定内だ』


 ボイスチェンジャーを通した、金属が擦れ合うような無機質で冷酷な声。

 それが、ホワイトハウスだけでなく、クレムリン、中南海、そして欧州の安全保障本部……さらには、世界中のテレビ局の電波塔やインターネットのサーバーを強制的にジャックし、地球上のすべてのモニターから同時再生されていた。


「か、神盾、宗一……!」

 大統領が、画面の中の悪魔を睨みつけ、恐怖で後ずさった。


     * * *


「――全世界への電波ジャック、およびG4首脳陣のモニターの完全掌握、完了しました」

「現在、世界中のテレビ、ラジオ、スマートフォン、そして軍事ネットワークのすべての画面に、ボスの姿が配信されています」


「ご苦労」

 私は、カメラの前に座り、漆黒の仮面の奥の瞳を極寒に細めた。

 隣に立つ玲奈と、モニター越しのDr.クリス・ウォーカー、ヴィクトル・イワノフが、私の傍らで静かに息を呑みながらその光景を見守っている。


 私は、モニター越しに、恐怖に引き攣った顔で私を見上げる大国の最高権力者たちを見下ろし、ゆっくりと口を開いた。


『世界を支配していると錯覚していた、哀れな権力者たちよ。お前たちは、私の警告を無視し、私の家族と領域を脅かすという最大の罪を犯した』


 私の声は、言語の壁を越えて自動翻訳され、地球上の数十億の人々の耳へと届けられている。


『お前たちは、国家の威信というくだらない見栄のために、数百万のミサイルを放ち、大艦隊を太平洋に沈めた。そして今、自らの無力さに絶望し、あろうことか『核兵器』という世界を終わらせるボタンに手をかけようとした』


「き、貴様が我々を追い詰めたのだろうが!!」

 画面の向こうで、アメリカの大統領が狂乱したように怒鳴りつける。

「我々大国が、貴様のような一介のテロリストに屈するわけにはいかないのだ! 核を撃ち込まれたくなければ、今すぐ武装を解除し降伏しろ!」


『テロリスト、だと?』

 私は、喉の奥で低く、身の毛のよだつような冷たい笑い声を漏らした。


『日本の資源を奪うために裏で結託し、私の祖国を不当に四分割して「治安維持」という名目で軍隊を展開させたお前たちが、どの口で正義を騙るのか』


 私の脳裏に、前世の2065年で見た、家族を焼き尽くされたあの絶望の光景がフラッシュバックする。

 歴史の修正力は、大国たちに全く同じ凶行を繰り返させた。彼らは永遠に治らない傲慢という病に冒されているのだ。


『私は、お前たちのその腐りきった本質を誰よりも理解している。……だからこそ、私はお前たちのその傲慢さを、宇宙そらから物理的に粉砕するための「準備」をしてきた』


「き、貴様……何を言っている!」

 ロシアの大統領が、理解不能な言葉に顔を引き攣らせる。


『狂っているのは、自らの限界を悟れずに神の領域に足を踏み入れたお前たちの方だ』


 私は、手元のコンソールを操作し、全世界のモニターの隅に、高度四百キロメートルの宇宙空間を周回する巨大な十字の兵器――『神のトール・ハンマー』の威容を映し出した。


『見ろ。これが、お前たちのくだらない核兵器など児戯に等しい、真の絶対的抑止力だ』


 彼らは理解したのだ。自分たちの艦隊を一瞬で粉砕したあの極超音速の質量兵器が、この人類の常識を遥かに超越した『悪魔の砲台』から撃ち下ろされたという事実を。

 そして今、その砲口が真っ直ぐに、自分たちの頭上(首都)へと向けられているという事実に。


『お前たちのくだらない核兵器など、この神の力の前では児戯に等しい。……このシステムは、私の命、そして私の家族の命と完全に直結している。もしお前たちが核のボタンを押し、私の領域に一発でもミサイルを着弾させれば……その瞬間にセーフティが解除され、お前たちの首都は一瞬で地図から消滅する』


「ば、馬鹿な……デッドマンズ・スイッチだと……!?」

 アメリカの大統領が、絶望に膝から崩れ落ちた。


『だが、私はお前たちの自滅(システム起動)を待つほど、気の長い男ではない』


 私は、椅子からゆっくりと立ち上がり、カメラのレンズ――すなわち世界中の首脳たちの目を真っ直ぐに射抜いた。


『お前たちが核という最終手段に手をかけた以上、私にとってお前たちは、もはや「生かしておく価値のない害虫」でしかない。……これより、私は自らの明確な『意志』として、歴史の修正力を完全に断ち切るための裁きを下す』


 私は、懐から取り出した小型の電子デバイスのセーフティカバーを開き、その中心にある赤いボタンに指を添えた。

 それは、軌道上の神の雷のプラズマジェネレーターを『戦略消去サージカル・ストライクモード』へと移行させるためのマスターキーだ。

 広範囲を無差別に焼き尽くす核兵器とは違う。周辺の民間人には一切の被害を出さず、敵の『軍事・政治の中枢』のみを直径数百メートルのマグマのクレーターへと変える、神の精密手術。


『最初の標的は……先ほど世界を終わらせるボタン(核)に手をかけようとした、その愚かな心臓と頭脳だ』


「なっ……! ま、待て! やめろ!! 我々の負けだ! 降伏する! だからそのボタンは――」

 アメリカの大統領が、自らのいるホワイトハウスと、軍の拠点であるペンタゴンが同時に狙われていることを悟り、画面越しに狂乱して命乞いをする。


『遅すぎる』


 私は、極低温の死刑宣告と共に、迷うことなくその赤いボタンを押し込んだ。


『私の創った神が、今度はお前たちを裁く。……絶望の業火の中で、己の罪を数えるがいい』


 ブツンッ、と。

 全世界への通信ジャックの映像が、極東の悪魔の姿から、宇宙空間で青白く輝き始めた『神の雷』のライブ映像へと切り替わった。


 極東の悪魔が、真の『裁き』のトリガーを引いた瞬間。

 遥か四百キロ上空の宇宙空間では、先ほど大艦隊を沈めたばかりの悪魔の兵器が、砲身に余熱を帯びたまま、さらなる絶望をもたらすべく、巨大なプラズマジェネレーターを臨界点に向けて限界まで稼働チャージさせ始めていた。


『――マスター・コマンド受領。戦略消去サージカル・ストライクフェーズへ移行。第一、第二ターゲット座標ロックオン。……ペンタゴン、およびホワイトハウス』

 無機質なAIの電子音声が、兵器の内部で響き渡る。


『ヒャッハー!! いよいよ本命メインの出番だぜ!! アメリカのクソッタレどもの頭蓋骨を、二つ同時にぶち抜いてやる!!』

 クリスが、歓喜の咆哮を上げる。


 私は、モニターに映る巨大な五角形の建造物と、大統領のいる白亜の館を極低温の瞳で見据え、静かに宣告した。


「裁きを、下せ」


 宇宙空間の暗黒を切り裂き、二筋の『光の槍』が同時に放たれた。

 マッハ二五という極超音速で大気圏を突破したタングステン弾は、周囲を超高密度に圧縮された数万度のプラズマの膜で覆われ、文字通り『神が投げ放った光の槍』となってバージニア州とワシントンD.C.の空を切り裂いた。


ズバァァァァァンッ!!


 音もなく撃ち下ろされた光の槍は、ペンタゴンとホワイトハウスの強固な防爆コンクリートを、まるで濡れた紙を貫くかのように一切の抵抗なくぶち抜き、そのまま地下深くの戦略会議室と大統領シェルターのど真ん中へと直撃した。


 着弾と同時に『爆縮インプロージョン』を起こしたプラズマの爆圧は、周囲の市街地や民間施設には一切の被害を出すことなく、それぞれの敷地内・直径数百メートルの範囲にのみ、核爆発に匹敵する超絶的な熱量を解放した。


 地下シェルターで命乞いをしていた大統領も、ペンタゴンの将軍たちも。

 彼らは熱を感じる間もなく、悲鳴を上げる神経信号が脳に伝わるよりも早く、細胞レベルで瞬時に炭化し、次の瞬間には文字通り『蒸発』した。

 己の罪を数える時間すら与えられず、彼らの傲慢な魂は、光の奔流の中に完全に飲み込まれ、消滅したのだ。


「――第一射、第二射、着弾確認。……目標であるペンタゴン、およびホワイトハウス地下中枢、完全に物理消去クリアリングされました」


 巨大モニターには、全世界のニュースチャンネルが緊急生中継している、アメリカの二大中枢が突如として巨大な炎の柱とクレーターに変わった映像が映し出されている。


「見事な命中精度だ。……これが、神の裁きだ」

 私は、モニターに映るその二つの焦土を見下ろしながら、特等席の神座レザーチェアから静かに宣告した。


「核のような無差別な破壊ではなく、周辺の市街地には一切の被害を出さず、ピンポイントで罪深き中枢施設だけを完全に蒸発させる。これこそが、私が前世で思い描き、今世で完成させた『究極のクリーンな暴力』だ」


 全世界の人間が特等席で見守る中での、アメリカという国家の完全なる公開処刑。

 大国の傲慢さが完全に粉砕され、命乞いすらも冷酷に弾き返された今、人類の歴史上最も凄惨で、最も神聖な『裁きの嵐』が、いよいよ地球全土を覆い尽くそうとしていた。

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