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神の雷(トール・ハンマー)〜家族を奪われた天才物理学者の逆行転生。未来の知識で四大勢力に復讐する〜  作者: 天音天成
第1章:逆行と起業と無双

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第4話 未来のダウングレードと、町工場のオーパーツ

 数日後。

 海外のFX口座から無事に数千万円の現金を引き出した私は、いよいよ「特許無双」のための仕込みに取り掛かっていた。


 私はテキストエディタを開き、猛然とキーボードを叩き続ける。

 頭の中に焼き付いている未来のテクノロジーの設計図を、「特許申請書」と「論文」として具現化していく作業だ。


 ターゲットは明確に決めている。

 これから数年以内に世界中で爆発的に普及するスマートフォンに搭載される『次世代マルチタッチパネルの制御アルゴリズム』。

 そして、十年後のEV(電気自動車)市場を根底から覆す『全固体電池』の根幹技術。

 さらに、『ディープラーニング(深層学習)を用いたAIの最適化理論』だ。


 どれも2010年の現在では、概念すらぼやけているか、実用化には数十年かかるとされている代物である。


「2065年の天才物理学者だった私からすれば、こんなものは足し算や引き算のドリルと同じだ。……問題は、この時代の連中に理解できるレベルまで、どうやって『レベルを下げるか』だな」


 ただ未来の知識をそのまま書き写せばいいというわけではない。

 2065年の完全な理論を今発表したところで、「オーパーツ(時代錯誤の遺物)」扱いされるのがオチだ。現在の未熟な素材産業や製造インフラでは、その理論を実現するための部品すら作れない。


 だからこそ、あえて「数段階ダウングレードした」現実的なレベルへと再構築してやる必要がある。

 2010年の既存の素材の組み合わせでギリギリ実現可能でありながら、現在の世界のトップ企業(AppleやSamsungなど)の開発陣が数年かけても絶対に辿り着けない「絶妙な最適解」。


 カタカタカタカタッ!!


 異常な速度でタイピング音が六畳間に響き渡る。

 頭の中のキャンバスで、複雑な化学式と物理法則が組み上がっては解体され、2010年仕様に最適化されていく。

 この匙加減こそが、兵器開発の傍らで数々の世界的特許を片手間で生み出してきた、天才と呼ばれた私の真骨頂だった。


「……できた」


 私のパソコンの中には、これから数十年の世界の産業を支配する「魔法の書」が完成していた。

 これを特許庁、そしてアメリカの特許商標庁(USPTO)へ直接叩きつける。特許が認められれば、シリコンバレーの巨大テック企業たちは、私の技術を使わずにはいられなくなる。


「だが、机上の空論だけでは彼らも動かない。圧倒的な性能を見せつける『プロトタイプ』が必要だ」


     * * *


 数日後。熱気こもる大田区の工業地帯。

 私はFXで稼いだ帯付きの札束をアタッシュケースに詰め込み、熟練の職人たちが腕を振るう複数の町工場を渡り歩いていた。

 私の頭脳は五十五年先の知識を持っているが、悲しいかな、それを具現化するための高精度な削り出し設備がこの手元にはないからだ。


「おいおい、兄ちゃん。なんだいこの設計図は?」

 油まみれの作業着を着た初老の工場長が、私が持参した図面を見て目を丸くした。

「こんな複雑なセンサーの基板配列、見たこともねえぞ。公差(寸法の誤差許容範囲)も異常だ。うちの最新のNC旋盤でも、ギリギリ出せるかどうかってレベルだぜ。どこの研究所の回し者だ?」


「ただの個人さ。図面通りのものが作れるか、作れないか。それだけ答えてくれればいい」

「作れねえとは言わねえが……手間がかかりすぎる。他の仕事も詰まってるしな」

「手間賃なら、相場の三倍払う。全額、今ここで前払いだ」


 私がアタッシュケースを開き、生々しい現金を見せつけると、工場長はゴクリと息を呑んだ。


「……わかったよ。職人の意地にかけて、完璧なもんを仕上げてやる」

「頼む。納期は三日だ」


 そうやって複数の工場にパーツを分散発注し(技術の全容を盗まれないための処置だ)、私は必要な部品をすべて手に入れた。


 向かったのは、秋葉原の片隅にある時間貸しのレンタルラボだ。

 そこに持ち込んだ部品を自らの手でハンダ付けし、プログラミングした制御チップを組み込んでいく。

 作り上げたのは、黒いプラスチックのケースに収められた、一見するとただの小さなガラス板。

 だが、これこそが数年後の世界を支配する『次世代マルチタッチパネル』のプロトタイプ第一号だった。


「よし、完璧だ。現時点の未熟なインフラでよくぞここまで再現できた」


 2010年現在、スマートフォンのタッチパネルは少し指が湿っているだけで誤作動を起こし、複雑な複数指でのジェスチャー操作も遅延が酷い。

 だが、私の作り上げたこのガラス板は、現在の最高峰のスペックを三世代は凌駕している。


 私は満足げに頷き、そのガラス板の動作風景をビデオカメラで撮影した。

 世界最高のテクノロジー企業の首元に突きつける、致死の毒矢オーパーツが完成した瞬間だった。

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