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「前に話したことがあるだろ。俺達の村から出稼ぎに出ている大人達の事…」
「そう言えば…」
ブドウ作りだけでは生活が立ち行かずに、村を出て働く者(竜)が絶えないという話…
「そいつらの中には都会の慣れない仕事で苦労してる奴もいる。だが村の復興はまだまだこれからの話だし、俺達青年部が取り仕切っているからと遠慮してるところもあるみたいだ。俺としては条件の良い仕事を探してやりたい、と思っているんだが…」
「ほ、本当か?本当に転移竜が協力してくれるのか?」
「協力じゃない。仕事としての話だ」
「…そ、そうか…」
どうにもこの国王は、商売交渉が不得手のようだ。
紗由理が呆れた感じでふん、鼻を鳴らしながら、立ち上がった。
ティムローとシャーマ三世を交互に、超のつく上から目線で見下ろす。
「私が間に立って折り合いをつけてやる。おい、二人ともこっちへ来い。それぞれの条件を聞かせろ!」
いよいよ本格的にコンサルタント業務になって来たな…
「あの、本当に私のパートナーとして」
「しつこい!」
「あんたもういい加減諦めた方がいいぞ」
紗由理達は騒ぎながら隣の執務室へと入っていった。
しんと静まった国王室で、俺はマイドと顔を見合わせた。
「どうやら、一件落着ってところか?」
「あー、そうですね。帝国側の船会社の件は俺の方から報告を入れておきます」
さて皇帝の渋い顔が目に浮かぶ。だがまあ、皇帝ならなんらかの手は打つだろう。
「あのバーガーでしたっけ?あれはこのままここの名物料理にして構わないんですか?」
「ああ、問題ない」
レシピと製造施設は、丸まま屋台のおじさまにら引渡してきた。
おじさまも、
「必ずこの国の新しい名物料理にしてみせます!」
と息巻いていた。
「では発酵技術の取り扱いについては、イオリ様の技術指導がなされたと私からイコイに話しを通しておきましょう」
そうだった。この世界にはもう一人紗由理バリなのがいた。
「しっかり頼むな、ヒシャ!」
念を押した俺の袖を、ノーマがそっと掴んだ。
らしくない、しおらしい態度で。
「ごめんなさい…私のせいで皆様にご迷惑をおかけしてしまって…」
「いや、誰も迷惑なんて思ってないから」
「でも…」
「そうですよ。なんならおかげでこうして久しぶりに皆さんに会えてよかったっすよ」
「私も当事者なんですから、気にしなくていいですよ」
ヒシャとマイドが笑いながら親指を立てて前に突き出した。
「気にするな!私は結構面白かったぞ!」
わざわざドアを開けて紗由理が叫んできた。
相変わらずの地獄耳だ。
「まあなんだ。とにかく無事で良かった。俺も思いきり料理出来たし、まあ、良かったんじゃないかな」
ノーマが嬉しそうに腕にしがみついてきた。
「あれ、フィッシュバーガー、めっちゃ美味しかったです!」
「だろ!」
「またイオリ様の美味いものが、いろんな人を助けちゃいましたね!」
良かった。その笑顔が見たくて、俺は頑張れる。
「ところで、イオリ」
アルページュがやけに真剣な顔を向けてきた。
「渚の女王は、私ってことでいいわよね?」
俺はノーマと顔を見合わせた。
「そうね。今回は私の負けね、アル」
ノーマが笑うと、アルページュは親指を立ててぐっとに突き出して、珍しく、にかりと笑った。




