20話 炎と氷の連携
ペンテイア郊外――、俺たちとファングリザードとの戦いは佳境を迎えていた。
「ルビナが前衛だ! カイア、ルビナの援護を頼む!」
「了解しました! 《火属性付与》、《ファイヤーブレイド》! せいっ!」
「ん……、凍えよ氷槍、貫いて、《アイススピアー》」
俺が町への攻撃を阻み、ルビナとカイアがファングリザードを挟み撃ちにする構えだ。
嵐の前の静けさも束の間、炎の斬撃と氷の槍が両側からファングリザードへ押し寄せる。
――ギャオオォォォ!!
「くそっ、硬いな!」
俺は思わず悪態をつく。
このファングリザードの鱗は非常に強固で、なかなか致命傷を与えることができない。
モンスターは追い詰められると凶暴化する。
反撃として放たれたファングリザードの攻撃は、苛烈を極めるものだった。
巨大な尾がブンッと横薙ぎに振るわれ、ルビナの頭上に迫る。
ルビナは咄嵯に身を屈めて回避するが、
「くっ――!」
その隙を狙って突進してきたファングリザードの牙がルビナの目前に迫った。
「ルビナ……、危ない! 《アイスバレット》!」
カイアの声が響くと同時に、彼女が放った氷の礫が飛来する。
氷塊はファングリザードの側頭部を打ち抜き、突進の軌道が僅かにブレる。
その好機を逃さず、ルビナは地面を転がって回避し、素早く起き上がって体勢を立て直すことに成功した。
「助かりました、カイアさん!」
「ん……、無事でよかった」
戦いのなかで、ルビナとカイアの連携はみるみるうちに磨かれていった。
お互いの性格を把握し、意思疎通を図る。
そして今のように、互いの長所を生かし、短所を補う動きができるようになったのだ。
――ギャオオォォ!!
再び猛然と襲いかかってくるファングリザード。
しかし、今度は先程のような奇襲ではなく、攻撃は直線的だった。
ファングリザードは鋭い爪を生やした前足を振り上げ、近くにいたルビナを踏み潰そうとする。
「ん……、させない 《ウィンドカッター》!」
またしても素早く反応したのはカイアだった。
彼女の生み出した風の刃が、ファングリザードの柔らかな腹部を切り裂き、踏み潰す足の軌道がブレてファングリザードがバランスを崩した。
「行きます! カイア、援護を頼みますよ! ――《火属性付与》」
ルビナが言うが早いか、地を蹴って跳躍し、長剣を掲げた。
剣身に魔力が集い、彼女の赤銅の髪のごとく、紅々と燃え盛る火炎へと姿を変える。
それを避けようとするファングリザードだったが、それをカイアが許さない。
「ん……、させない。堅き氷よ、動きを阻め、《アイスプリズン》、そして《テイルウィンド》ッ!」
ファングリザードの脚を拘束するように、幾重もの氷の檻が形成され、さらにルビナを突風が後押しする。
「これで終わりです。――はぁあああっ!!」
ルビナはその一瞬を狙い澄まし、渾身の一撃を叩き込んだ。
――ギャオォオオォォン……! 炎に焼かれ、氷に閉ざされたファングリザードは断末魔の叫び声を上げながら地面に倒れ伏し、……やがて動かなくなった。
「やりましたね、マスター!」
「ん……、私がんばった」
「ああ、よくやったぞ二人とも」
俺は労いの言葉をかけつつ、ファングリザードの死体を眺める。
特筆するべきはその二本の鋭い牙であるが、身体を覆う鱗もまるで鎧のように分厚く頑強で、素材とすれば有用な使い道がいくつも考えられる。
しかし、このようなモンスターがなぜいきなりペンテイアの町に現れたのか……。
俺は胸に残る疑念を感じながらも、ひとまずペンテイアに戻ることにしたのだった。




