18話 魔鉱山の整備
俺は、モンスターが排除されて安全になった坑道の中で、純度のさまざまな魔鉱石を手に取り、鉱脈を探っていた。
「マスター、何かわかりましたか」
「ああ、この鉱石のここを見てみろ」
ルビナの問いに答えつつ、俺の指差した場所には、濁った水晶のような半透明の部位がある。
「これをな。《アナライズ》」
俺が今唱えた呪文は、鉱石へ魔力の波動を当てて、その反響を感知することで内部構造や魔石の純度を解析する魔術である。
「これは……」
響いて返ってきた魔力の燐光を、ルビナが怪訝な顔で見つめる。
「流石に分かりづらいか。これは何より慣れが必要だからな」
熟練した俺の目には、この鉱石の純度から属性の偏り、そして含有されている魔力量まで、すべてが手に取るようにわかるのだ。
「まあ、要はこの埋まり方だと、この辺りにたくさん魔鉱石が埋まっている……、鉱脈が予測できるってことだ」
「おお」
「これだけあれば、かなりの量の魔鉱石の採掘が見込めるし、土属性に親和性が高い石だからちょっとした精錬をすればこの場で作業用のゴーレムを多数製造することもできるな」
「ということは……、採掘から運搬まで、ここに拠点を置けば仕事が捗りますね」
ルビナは納得した表情で頷いた。
一方カイアはというと、こういう話は苦手なのか、目を閉じてぼーっとしている。
「さてさて、カイアも起きた起きた。早速採掘拠点を作っていくぞ!」
「はい、マスター!」
「ん……。ますたぁ、了解した」
俺が手を叩くと、ルビナとカイアも元気良く返事をした。
◆◆◆
数時間後――。
俺がコントロール・グラウンドで鉱山入り口から鉱脈までの道を整備し、ルビナとカイアに邪魔な大岩を運び出してもらった結果、かつて寂れていたダンジョンとは思えないほど整った環境ができた。
「マスター、いずれ寝具やテーブルを運び込み、宿屋も作るとよいですね」
「おっと、それも忘れていたな」
ゴーレム頼りの生活をしていると、ついつい一般人のことを忘れてしまう。
魔石に釣られて現れる雑多なモンスターを排除し、魔石の運搬をスムーズに行うためにも、冒険者にはぜひ来てもらわなければならないからな。
ルビナの言う通り、いずれ宿屋や休憩所も整備していくべきだろう。
「さて、準備はこれくらいで……あとは作業用ゴーレムを作ろうか」
俺は精錬した魔石を手に取って呟いた。
今から作るゴーレムたちは、ルビナやカイア等の魂あるゴーレムからすると格は落ちるが……、それでもけして手は抜けない。
作業用ゴーレムならば作業用ゴーレムとして、無駄な素材や魔力は使わずに、それでいて求められる品質を充分に満たす良いゴーレムを作る。それがゴーレム術士としての俺の誇りであるのだ。
「――対価は我が魔力」
俺が地面と、地面に置いた魔石に向けて手のひらをかざすと、魔石と大地が淡い光を放ち始める。
大地がゆっくりと振動を始め、ゴーレムを形作る「設計図」とでもいうべき術式が土壌へ染み渡っていく。
「――さあ、起きよ! ゴーレムたち!」
俺は詠唱を終えると、まるで魔法陣のように紋様が描かれた大地から、一斉に岩でできた無数の人型の腕が現れる。
さらに頭、胴体と順に形成されていき……、最終的に数十体のゴーレムたちが姿を現した。
曲がる必要のある関節は土塊でできており、手や足は丈夫な岩石でできている。
――ギ……、ゴゴ……。
俺の作ったゴーレムたちは、俺にを敬うように一礼すると、整然と並びだした。
「うむ。こんなもんだろうか」
「たった一回の詠唱でこれほどのゴーレムを……、流石です、マスター」
無骨な作りだが、力仕事ならどんとこいというスタイル。
ルビナやカイアらの陶磁器のような滑らかな肌も素敵だが、こういった機能美のゴーレムもまた趣きがあるというものだ。
さて、次は街道を整備しつつペンテイアに帰るとしよう。




