12話 バルギーラとの貿易
「私はテラッサ。テラッサ・オルマーノ。バルギーラ共和国でしがない商人をしている者です」
俺の前に立つ茶髪の女性、テラッサ・オルマーノはそう言った。
「バルギーラ共和国………、ということは!?」
ハッとした声で俺の横にいたルビナが呟いた。
そう。俺が作ってる贋作のブランド陶器、それがこのバルギーラ産の品なのである。
「ええ。貴方がたが贋作を作っている陶器、その本家です」
「ふん……、商人さん、ずいぶん耳が良いじゃないの」
「わたくし共が出荷しているはずのない量の流通が確認されたので、生産元を追っておりましたわ」
テラッサはフフンと小さく笑ってみせた。
俺は予想外の情報網にバルギーラ共和国、ひいてはテラッサの評価を高める。
「まあ……、立ち話もなんだ、商人さん。せっかく新調したばかりの家具があるわけだし応接室に来てくれ」
「ええ、わかりました。こちらとしても『商談』は望むところです」
女商人テラッサは、その深緑の瞳に笑みを浮かべて言った。
◆◆◆
「ほう……、バルギーラの商人と交易し、バルギーラにとっての異国の品を作ってほしい、というわけか」
「ええ。うちの秘伝の釉薬をやすやすと再現したペンテイアの技術力なら、それもまた可能でしょう?」
「まあな」
テラッサから差し出されたのは、フロウス王国が特産品とする陶磁器だった。
俺にとって出身国であるフロウス王国の品は地元の品であるが、たしかに異国バルギーラの彼女にとってはフロウス王国の品は遠い異国の品である。
フロウスの品を再現するよりバルギーラのものを再現したほうが利益が出ると考えたのは、俺がフロウス王国近辺までしか商業ネットワークを持たないからだ。
遠く西の海へ積荷を運搬する海運ネットワークを持つバルギーラ商人ならば、フロウス陶器の偽物を売り捌くことができるだろう。
俺としても、地元で長く活動を続けるのはリスクが高いし、フロウス王国の貴族たちがバルギーラ陶器に飽きてしまえば収入源が断たれることになる。
「バルギーラの正規品をこちらから運び、フロウス陶器の偽物と積荷を入れ替える。お互いに利益のでる交易でしょう?」
「なるほど……、良い案だ」
示された利益配分にも文句はなく、不満があれば一年毎に契約を確認して結び直せる決まりつきだ。一度騙されたとして永久に不平等な契約を続ける必要はない。
「よし! 契約締結だ。バルギーラのテラッサ、よろしく頼むぞ!」
「感謝申し上げます、ペンテイアのシゴル様。どうぞよしなに!」
俺と女商人は立ち上がり、契約を書いた羊皮紙にサインをして握手する。
こうして、ペンテイアは国際貿易港へと発展することとなったのだ。
◆◆◆
「そうだ。これはペンテイアの主としてではなく個人的な依頼なのだが…………、西域で探してほしい宝石がある」
「宝石……、ですか?」




