死闘なのじゃ! 「絶体絶命の危機! わらわも今度こそこれまでか……? その時戦場に、一陣の風が吹き込んだ!」
「兵たちよ、この者はわたくしどもにお任せを。先へ進み、早に本隊を追撃するのですわ!」
『オオオーーッッ!!』
世界の何処かにいるというこのわらわにも比肩せし猛者。名をそれぞれ【翠刃】【雷黄】【緋花】【鉄碧】と呼ぶ4ツ子の姉妹と噂には聞いておった。
なれどまさか、それがまだ乳も大して膨らんでおらぬような娘子であり、今まさにこのわらわと対峙しておるとはのう。
「うふふふ、ですがあなた様といえどここまで。盛者必衰というものを教えてさしあげます」
「その台詞、そっくりそのまま返してやろうぞ。その驕り昂りきった、幼きしたり顔にのう」
「強がりを。手負いの身でしかも、2対1で勝てると?」
「数を覆すは慣れておる。闘いの年季の差を御覧じよ」
「戯れ言を。では是非ともやってみせて頂きましょう」
「……(¯_¯)☆」
緋花が顎で促すと隣の青髪の女子、鉄碧が一歩前に出る。四肢を無骨に飾る篭手と脚甲を除いては、野良仕事の村娘などとそうは変わらぬ軽装である。
見る限りでは武術の使い手か。徒手空拳でわらわに挑もうとは相当な自信家のようじゃな。
「……(― w ―)」
成程、言葉は発さずとも内なる闘志はしかと伝わり来る。「心配ご無用♪ 拳は剣よりも強し、ってのをその身に刻んだげるわ」と言わんばかりじゃ。
「……!! (`Д´)≡」
むっ、その実力はやはり本物らしい。刃にも匹敵するほど疾い切れ味の殴撃を寸前で躱す。
ふむ、無口というのも困ったものよ。闘いの作法とは正々堂々名乗り合うことであろうに。
それでも速度で勝るはわらわの方よ。まずはその左腕を断ち、続けて首級も頂戴しようぞ!
「……!? Σ(;;´Д`)」
白き雷鳴が閃いて真紅の雨粒が風に乗る。流石の我が剣技も万全でないゆえ、皮を少々裂いたのみで切断には至らず。なれどこの第二撃にて終幕じゃ!
「……!! ( ◜ω◝;;)」
「むっ!?」
刹那、にわかに信じられぬ現象が起きた。宙を舞う赤き雫がなんと、鈍色に光る無数の金属片のようなモノへ変異し――わらわの顔へと降りかかる!?
「うぐ!?」
それは植物の棘や針の触れた程度の痛み。傷自体はまったく何のことも大したこともない。なれどその僅かな隙は、攻撃を許してしまうに充分過ぎた。
「うっ――ぐあっ!!」
足払いのち、地に崩れる前に腹への一撃。強烈な衝撃にたまらず一直線に吹き飛ばされる。
「……=ヽ( ̄ー ̄ヽ=ノ ̄ー ̄)ノ=」
「ぐは!! うぐ!! ぐお!!」
くっ、しまった。さらにはその拍子に結いていたのが解けてしもうた髪を掴まれ、全身を何度も幾度もくり返しただひたすら地面へと打ち据えられる。
「チッ!!」
「……!! Σ(・x・ノ)ノ⌒ミミ」
だが、まだまだ。攻撃を受けた際落とした長剣の代わりに腰の短剣を抜いて自ら髪を両断。拘束より逃れそのまま瞬時、鉄碧の喉元目がけて猛進する!
「うあ!?」
されどその決死の刃もやつめには届かず。右手に覚えた激痛とともに地に平伏させられる。
「うふふふ」
今のはもしや――後ろに控えし緋花によるものか。遠目に見るその両手に得物らしき何かが光る。弓や弩の類ではない。
ならばアレは、まさか。遠い遠い大国にて、その技術の粋を集め造られつつあるという脅威の兵器。よもや“魔弾”か!?
そして奴めは「実用化されるのはまだ遠い先のお話。量産も恐らく不可能ですが」と語りつつこちらへと歩みを進める。
「何せ“素養”を持つ者の絶対数が少ないゆえ。そう、天下無双のあなた様にも唯一不足せし、生来の資質――魔導の才が」
「戦場で魔導使いが配備されぬ理由。それはその力をみだりに行使すれば、同士討ちにつながる危険性があるゆえにです」
「そこでこの“魔弾”であれば独自の機構にて、魔導の範囲を最小限に、破壊力を最大限に行使することができるのですわ」
やがてすぐ目の前まで来た緋花は勝ち誇った笑みでわらわを見下ろしつつ顎を鋭く蹴り上げ、我が身はさらに後方のそびえ立つ大樹へ叩きつけられた。
「フフ、これにて最期ですわ。それではどうぞ、我が妹の能力で散華なさいな」
「……!! ( ̄▽ ̄)」
鉄碧が左手でこの首を握り木の磔とし、右でわらわの口より流れ出る血を掬ってみせると再度液体から金属に――そう、小刀へと変容する。これは――
「近年の研究で血液は“鉄”を含むのがわかりましたの。“鋼魔法”の応用ですわ」
「……!! (*´罒`*)」
迫り来る刃に、今度こそ手も足も出ぬ。クッ……わらわもこれまで……か!!
「キャアアアッッ!?」
「……!? Σ(゜д゜ )」
その時この場に一陣の風が吹き荒れた。草を薙ぎ土を削り敵ふたりをも吹き飛ばすほどであったが、何故かわらわのみ宙を泳ぐような感覚に包まれる。
「なっ、何だ。これは」
それは風でなく“人”であった。わらわを抱え上げておるその姿は、あの珍妙にして面妖にして奇怪なる“異界”にて邂逅せし――かの御仁。何故ここに。
否っ、それよりも今のこの速さは一体。まさに神速を極めしわらわでさえ見切れなんだ、超速爆速激速の極みであった。まさかこの者も魔導の心得が?
否ッ、断じて否。もはや人の限界を超えておる。なれど今はただ驚く他なし。
「助けようとは思ったけどなんで。どうしてこんなにも速く、動けるんだ――」
しかし最も驚愕に恐れ慄いておったのは、当人のその表情そのものであった。




