「この筋肉はそのために」
『ウオオオオオオッ!! メルクリスティアを討ち取れエエエエエエエエエッッ!!』
「来い、我が“一騎当万”の力に刮目せよ! あの世への土産に存分に魅せてやろう!」
――謎の女性を追って“鏡の中”へ。たどり着いた先で見たものは、荒涼たる平原の彼方より押し寄せる無数の“兵隊”。
夕陽を後光に続々と猛進するさまは、言うなれば炎の波とでも言い現せましょうか。
『ギャアアアアアア!!』
「フッ、これぞ我が奥義“包囲焼滅陣”よ! 聖なる焔に抱かれ消えるがよかろうぞ!」
対するは先ほどの彼女の、風など目じゃない、まるで時間をも真ッぷたつにしたほどの超高速の絶技。
四方八方からの残影、いや“斬鋭”とともに大軍を裂き崩し、トドメはなんとリアル炎でひと呑みにしてしまいました。
間違いない。大地そのものが叫ぶみたく轟く蹄の音、嵐のように飛び交う矢に、僕の足元まで転がってきたこの鉄兜。
何よりも単騎であの軍勢をすべて倒してみせたあの強さ。ここが――“異世界”だというのでしょうか。
「ウッ、ウグ――アアア」
僕はというと様子をずっと木陰から覗いていましたが、その後は思わずへたりこみ両方の手と膝をつき震えるばかり。
人ヒトひと、その圧巻なる数とそして――暴力。かつてのトラウマが静かに、かつ鮮烈に記憶に蘇ってゆきます――。
* * *
『ようやく出てきやがったか! よくも3年間もふざけた書き込みしてくれたな!!』
『この野郎、ガキだからって容赦しねーぞ!! ドチャクソにブッ殺したらぁッ!!』
* * *
「これで終わりですわね」
「ぐぐ、ぐ!!」
「……(*´罒`*)」
そんな中新たに現れた敵ふたりに、さすがの女傑も無双から一転して劣勢へ追い込まれてゆきました。
文字通りの一騎当千、それ以上に形容する言葉が見つからないのにそんな実力者が他にもいるなんて。
駄目だ、もうこんなところは嫌だ、何もかも無茶苦茶だ。ともかくも巻き込まれる前に逃げなくては。
もとの世界に、家に帰らなくては。やがて震える脚を何とか奮わせ立ち上がります。そして、僕は――
……僕、は……
* * *
『今回は大変だったね。昔は刃が人の命を奪ったが、現代は言葉が殺める時代だ。君のような子供であっても容赦なく』
『……』
『なるほど確かに、もう君に光輝く晴れ舞台で活躍できる将来はないかもしれない。私としてはそれが不憫で仕方ない』
『……』
『だが光は太陽だけじゃない。その時が来るまでこれからは静かに慎ましく、月星の下でやり直せばいいさ。明暗くん』
* * *
『細っこい腕をしやがってよ。泰平の世だからと手前の身も守れねえでどうするんだ。これこそがその“代償”なんだぜ』
『……』
『そして日本男児たる者昨日の己よりも強く在れ。おめえのその情けねえ限りの“現実”――このおれが聢と鍛えてやる』
* * *
「くっ――うおおお!!」
やがて脚が動き出しました。逆方向へと。自分でも何をやってるんだと思いますが、止められません。
「そなた、何故ここへ!」
この距離では間に合うはずなかったのに。だけど気づけば彼女を抱え、助けることができていました。
「ふむ、見慣れない装いですがご立派な体格ですこと。そちらの兵卒にもなかなかの手練がいらっしゃるようですわね」
「……(ꎤ’ω’)و三 ꎤ’ω’)-o」
そして眼前に立つこのふたりの少女。容貌こそ中学生ぐらいですが、何十年も修羅場をくぐってきたようなスゴ味と冷静さを感じる迫力。
現に、リアル無双ゲーの武将キャラかというほどの、この姫様以上の実力を目の当たりにしたばかり。
ヘビの前のカエルのごとく、僕に残された道はただひとつ。逃げたとしても追いつかれ、殺されるだけのはずでした。
「ここがどこで、あなた方が一体誰なのか。なぜ日本語が通じるのか。そんなことはどうでもいいです」
「多勢に無勢で、殴られ蹴られボロボロに。この人は昔の僕なんです。この傷も全部――僕のものです」
しかし、僕はどういうわけか騎士様をそっと降ろすと逆に再びあちらへ歩を進め、こんな風に連続して口走ったかと思えばあろうことか、
「“己”を護るもの。この筋肉はそのために」
と、こんな大見得を切ってしまいました。
「……!! (`Д´)≡⊃」
宣戦布告には充分過ぎたのでしょう。即座に【鉄碧】と称された子のパンチが、猛烈な風圧と凄絶な怒気の重なりながらくり出されます。
「ハッ!!」
「……!? Σ(゜д゜ ;;)」
「ヤア!!」
「……!! )`Д゜).・;;」
僕はそれを受け流すと、空いた左手で彼女の腹部を一突き。周囲の大気や地面の雑草ごと削り取りつつ一直線、漫画のように吹き飛ば――
「……(*゜ω。)(。ω゜*)」
って――えっ。なっ、何。何が――何が起きたんですか今。
「は!? ちょ、お待ちなさ――って。は? ――えっ??」
「は!? いっ、今のは何じゃ。どうしたことなのじゃ??」
姫様も敵もただただ目を丸くするばかり。でも一番驚いていたのは他ならぬ僕でした。そう、今放ったこの超パワーに、神スピードは――
「僕の身に一体……何が」




