第6話 物理的に眠れぬ夜
朝日が昇る前に将吾は起きだし超直の準備をする。
準備が整い、辰之助に井戸から汲んだ水で顔を洗わせると朝食だ。
「朝食が終わったらすぐにこの村から出よう。あまり長居したくないし、これ以上は厄介ごとは避けたいからね」
「わかった。でも食べ物はどうするの?おれ、もっとご飯食べたい…かな?」
「そうだね…道中狩でもしながら行こっか?後は果物とか山菜の採取ができたらいいね!」
「やった!必ずだよ?」
「必ずね!手持ちも少なさそうだから出来るだけ節約しなくちゃね?」
ウキウキしている辰之助に癒されながら朝のひと時が過ぎていく。
村を出て半日ほど過ぎた。
道中は順調に進み…とはいかず、森に入って狩をしているまでは良かったものの、辰之助がはしゃぎ過ぎて森の奥深くまで入り込んでしまったようだ。所謂迷子だ。
辰之助は目に見えて落ち込んでいるようだ。
(こういう時はちゃんと怒らないといけないんだけど…辰之助にとっては人の世界もストレスだらけだろうからこういう時に発散させとかないといけないしな…難しいものだな)
「シューゴ、ごめんなさい…」
「そうだね、これからはちゃんと周りを見て行動しようね?でも、止めなかった俺にも責任はあるから一緒に反省しないとね?」
互いに笑い合い、どんよりした空気が明るくなる。
今日の狩で仕留めたボアのをどうやって料理するか話しながら森を進んでいると日が傾いてきた。
野営の準備をする為に適度に乾いた枝を集め、川沿いに焚き火を起こす。
今日仕留めたボアはワイルドボアと言うらしい。
大味ではあるが、不味くはない。
獣臭さを香草で消せば、かみごたえのある普通のお肉になる。
食感が気に入ったのか?辰之助ははばくばくと丸焼きにしたワイルドボアをたいらげていっている。
その隣で将吾は果物を齧る。
本日の一番の成果だと思う。
赤黒い皮をむくと白くほのかにピンクがかった果肉。花弁を何枚も重ねた中央に種がある。
元の世界ではライチと呼ばれていた果物に似ている。
噛みしめるたびに甘い果汁が口の中に広がる。
そんな至福の時間を過ごしていた二人を邪魔するかの如く、将吾の警戒網に侵入者の気配が…
「…辰之助、何かがこちらに向かってきてるみたい。単独だから大丈夫だと思うけど、油断はしないでね?」
「もがもが!…ゴクリ、わかった!」
返事を聞き終え、将吾は森に身をひそめる。
しばらくすると森から恐る恐るといった体で辰之助の前に姿を現わす。
「子供!なんで子供がこんな森の中に…ねぇ?君?はここでなにをしているの?」
「おれは野営してるんだよ?見れば分かるでしょ!ちゃんと焚き火もしてるでしょ?」
「いや、そうなんだけど、そういう意味で聞いたんじゃないのよ?
なんで子供が夜にこんな森の中にいて野営なんてしてるのか聞いてるんだよ?」
「…知らない人にそこまで教えるのはちょっと…」
「…そうね。まだお互いのこと知らないものね。私はエリスよ、貴方のお名前は?」
「おれは辰之助だよ。エリスはなんで森の中にいるの?」
「たつのすけ?…勇者様みたいな名前ね…まぁいいわ。
私は…ちょっと道に迷っちゃってね…困っていたのよ!そうだ!夜の森は危ないから一緒にいな…」
エリスと名乗る女性がそこまで言いかけておし黙る。
首元には隠者の短剣が添えられている。
(ッ!嘘でしょ!こんなに接近されるまで気がつかないなんて…子供だけだと思って油断した…)
歯噛みしているエリスをよそに喜びを身体で表現してはしゃぐ辰之助。
「やった!シューゴ、うまくいったね!おれ、うまくできたでしょ?」
「…そうだね。上手だったよ!でも、その話はまた後でね?今は先にやることがあるでしょ?」
「あーそうだった!忘れるとこだったよ!」
(本当に忘れてそう…まだ子供だから仕方ないけど、これからのこと考えるとなぁ)
辰之助と和気藹々としているとエリスが割り込んでくる。
「…仲良くしているところ悪いんだけど、これはどういうことかしら?私、貴方たちに何かしたかしら?」
「…貴方は馬鹿ですか?こんな夜に、森の中で何かさせるはずないでしょ?
それで?貴方は子供になにをしようとしていたんですか?素直に話してくれるとありがたいですね」
「だから私は森で迷って…」
「服で隠していますが、鎧や武器を着用している。弓、矢筒など狩用の得物を持つことなく、旅の荷物もなく森で迷子なんて…怪しすぎますよ?
もう一度聞きます。目的は何ですか?」
将吾に手足を縛られて観念したのか?ポツリポツリとエリスは語り出す。
「貴方達…この国の人ではないわね?旅人か冒険者か知らないけれど、今のこの国の現状は知っている?死者の蘇生が…」
(また今日も寝不足になりそうだなぁ…ダンジョンから脱出してもゆっくりできないなぁ…)
否応無く話を聞かされ夜は更けていった。
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