第5話 面倒な話
扉を開けると一人の男がそこにいた。年の頃は三十代後半だろうか?
(うーん…確か村長と話してた人かな?厄介ごとの匂いしかしないな)
とりあえず家の中に入ってもらい、話を聞く事にする。
「夜分遅くに済まない。…どうしても聞いてほしい願いがあるんだ!」
「それは…できることなら聞きますが、こちらも目的があって旅をしてますのであまり期待しないでください」
「…とりあえず話を聞いてくれ!この村の…いや、この国には死者の蘇生術が存在する。その術の素材は秘匿されてはいるが…一つだけ、分かっているものがある…人の命だ!
約20年周期で領主や皇帝が村々から人を集め、蘇生術を使って生き返ってるんだ…蘇生術が開発された当初は成人だろうが子供だろうが奴隷だろうが命なら何でもよかったんだ!それがいつしか…子供の命を使った方が若返るなんて噂が流れて…それからは子供が生贄として集められるようになったんだ‼︎
初めは抵抗もあった!でも、相手は国だ…訓練された兵士なんかに農民が勝てるはずもなく鎮圧されていった。
そして今は抵抗することすらできずに子供を連れて行かれる一方だ!この村には10人の子供がいるが…今年には連れていかれてしまう!
だからあんたに頼みたい!
どうか子供達を逃がしてくれないか?
それが無理なら反乱軍に何とかして連絡してくれないか?
どうか頼む!このとうりだ!」
地に額をこすりつけ願う村人を見下ろしながら将吾は問う。
「…仮にですが、俺が子供を連れて逃げたとしてその後はどうするんですか?
子供がいなければあなた達はどうなるんですか?
それに子供達の面倒は誰が見るんですか?
反乱軍に連絡して欲しいと仰いましたが、その連絡手段は?
その手段を俺が探すとしてどれだけ時間がかかるんですか?
俺には目的があるといいましたよね?時間の余裕なんてほとんどないんですよ。
貴方の言ってることは現実的じゃ無い。
実現できない事を受けるわけにはいきません。お引き取りを」
無情に断りを入れる将吾を睨み、食い下がろうとする男に向かって抑揚のない冷たい声で終わりを告げる。
「…なにを仰っても俺の答えは変わりません。どうぞお引き取りください」
男を入り口まで送り、後ろ姿が見えなくなったのを確認して声をかける。
「…もう帰りましたよ。隠れてないで出てきてください。村長さんですよね?」
かさり。家の木陰からバツの悪そうな顔をして村長が姿をあらわす。
「ホッホッホッ!よく気がついたの?…これでも昔はやる方だったんじゃが…年かの?」
「いえ、お見事でしたよ?かなり気づきにくかったですから…何かご用でもありましたか?」
さきの男との話に疲れていた将吾はぶっきらぼうに言葉を発する。
「すまんな。うちの者が迷惑をかけた…大体の話は聞いたのじゃろ?
ならばその話は忘れてくれ。これはこの村の問題であってお前さん達には関係のない話じゃ…子供達が連れていかれるのは一週間後じゃ…おっと、これも忘れてくれると助かるの?
では、儂もこれで失礼する…」
それだけ言って去っていった村長の姿を見送って…
「みんな!本当に!図々しいよね‼︎命が掛かってるから必死なのは分かるけどさ、子供連れの俺に頼むって…」
独り言ちていると辰之助が声を掛けてくる。
「シューゴ?なんだか面倒そうな事になってるけどさ、どうするの?」
「だね?あまり気がすすまないけど仕方ない、明日からは反乱軍の情報を積極的に集めていかないといけないかな?
そうすれば自ずと帝国の情報も入ってくるし…とりあえず今は寝よっか?」
眠気からか、若干目が座った辰之助を促し、将吾はベットへと潜り込んだ。
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