第2話 急ぐ旅路
一夜明け洞窟から外へ…
漸く、ダンジョンから脱出することができた!
半年もの長いあいだダンジョンに篭っていた弊害か、眼球を射す光が痛い‼︎
しかし、朝日を全身に浴びる感覚がこれほどまでに気持ちのいい事だったのかと痛感する。
(無くして初めて気がつくね…何時だってそんなものか…)
朝日を感動しながら眺めていると…グゥキュ〜と隣からお腹のなる音が聞こえてきた。
「シューゴ!お腹減った!ご飯にしよう?」
「そうだね!昨日は何も食べずに寝ちゃったからなぁ…周りの状況がわからないから朝は干し肉で我慢してね?」
「食べられるならなんでもいい!早く食べよ‼︎」
急かされながら朝食の準備に取り掛かる。
近くに流れていた川の水を自作した鍋で沸かし、マシューボアの干し肉、マシューボアのキノコに野草などを入れてスープを作る。
味付けは塩だけだが、暖かいご飯が食べられるだけで二人にとってはご馳走だ!
朝食を済ませ、手早く出発の準備をしていざ出発!辰之助は足りなかったのかご不満のようだが、持って運べる量にも限りがあるので我慢してもらうか自ら狩ってきてもらうほかない。
洞窟の出口付近には獣道があり、道なりに辿っていく。
暫く歩いていると魔物の気配を察知する。
将吾は腰を落とし警戒すると辰之助も機敏に察知して剣に手をかける。
脱出前までかなり迷っていたようだが取り回しやすい長剣を選んだ。
馬鹿でかい大剣とかじゃなくてよかったよ…一時期は振り回してたけどね?
気配を消して魔物の反応のする方へと静かに歩み寄る。
4ヶ月の間に辰之助もいくつか新たにスキルを取得している。
今回使用しているのは歩法の下位互換に当たるであろう歩術だ。
歩法より万能性はないが、歩行祭の物音はかなり出なくなる。
隠密なども習得できればよかったが…辰之助はかなり鈍感なようで…習得できていない。
いつかは出来ると思いたいね。
魔物を視認できる距離まで近づき鑑定を使い情報を集める。
(…これは…まさかっ!これほどなのか‼︎)
鑑定によってもたらされた情報に将吾は驚愕する!
ゴブリン(劣等種)
種族 亜人種
Lv.10
生命力 104
魔力 25
筋力 86+5
耐久 72
俊敏 62
知力 12
抵抗 35
運 3
スキル
棍棒術L v.3
繁殖強化L v.5
腕力強化L v.2
(笑えるほど弱い…弱すぎるよね?でも、こいつを基準に考えるんじゃなくて、最低ラインに設定しておいた方がいいかな?用心するに越したことはないしね!)
未だにこちらに気がつかないゴブリンに一瞬で駆け寄り首を落とす。
自らの死を認識することなくこの世を去っていったゴブリンから魔石を取り出す。
(うわぁ…これは使い物にならないなぁ…こんな質の悪い魔石見たことないや…)
取り敢えず魔石をしまい先に進む。あまり猶予もない旅である。
(そう言えば辰之助になんの説明もしてなかったな…歩きながら簡単にしておくかな)
ふと思い出し、辰之助に説明していく。
「…ということで、今回の旅の目的はジルバトリア帝国で死者の蘇生を阻止。そして、蘇生術の破棄が最終目標になるかな?ここまでは大丈夫?」
「…何となくわかった‼︎悪い奴らを懲らしめたらいいんでしょ?」
「まぁ…そうだね。善悪は分からないけど、やる事はそうだよ。
それでね?これから一国を相手にしなきゃいけないだけど…辰之助はどうする?無理についてこなくてもいいし、親元に帰りたいなら帰ってもいいんだよ?」
(…多分だけど帰らないだろうな…これから先は危険だし、意思の確認はしとかないとね…それにこれから関係を築いていくならこういう話は避けられないから早い方がいいよね)
辰之助は俯き考え答える。
「おれは…ついていく!…おれ、親いないし里でだって嫌われて追い出されたし…人族の奴らだって…おれを生贄にしてあのダンジョンに送り込んだんだ‼︎
だから…おれに居場所なんてないんだ!
シューゴ!お願いだから一緒に連れて行ってよ!」
暗く沈む瞳で将吾を見上げる辰之助の頭を撫でながら落ち着かせる。
「…落ち着いて?大丈夫だから。
辰之助を置いていったりしないからね?
これからは俺が一緒にいるから‼︎
そんな顔しなくてもいいんだよ?
でも…俺も一応人族の端くれだけどいいのかな?」
(龍のみならず、人族にまでも何かされてたのか…厄介だな…辰之助が人族相手に暴走しないように注意しないとな…)
「…うん。シューゴは人族じゃないよ?シューゴはミットナケシュ(מתנקש)でしょ?」
「…いや、確かにそうなんだけど…厳密に言えば、大元は人族なんだよ?
だから一緒にいても平気かなぁって…」
「…?…シューゴの言ってる事わかんないからもういいや!一緒に行っていいんでしょ?それなら問題ないよ!」
満面の笑顔でいう辰之助に押し切られて渋々将吾はうなずきかえす。
(いつになったら理解してくれることやら…でも、取り敢えずは今はこれで良しとしておこう)
話終わり歩き出そうとした時、前方の森のひらけた場所から悲鳴があがる‼︎
「うっ…誰かっ‼︎誰か助けてくれぇー‼︎」
悲鳴を聞いて駆け出そうとする辰之助を将吾が止める!
「どうしたのシューゴ?この先で何かおこってるよ?悲鳴も聞こえたし…助けに行かないの?」
「うーん…そうだね。出来れば関わりたくないんだよね…何があるか分からないし、助けを求めてる者がいい人かどうかも分からないからね…コッソリ近づいて様子見かな?」
少し驚きながら将吾を見上げる辰之助に気がつき目が合う。
「…シューゴなら助けに行くと思ってたけど、行かないんだね?」
「あはは…俺はそんなお人好しじゃないよ?今回は人族との敵対だからね…不用意に近づいて此方の目的や情報を探られるのは面白くないから…それに、この森の魔物って弱いよね?
そんな魔物相手にどんな戦闘をしているのか…観察できるし、一方的に情報を集められるならそんなチャンスは逃さないよ!」
辰之助は眉根を寄せて…
「シューゴはかなり性格悪いのな‼︎」
将吾の心を抉っていった。
「グハッ…そんなストレートに言わなくても…」
膝をつき倒れる将吾を尻目に声のした方へ辰之助は歩いて行く。
少し遅れて将吾も後を追う。
進むに連れて血の独特なにおいが鼻をつきはじめる。
次第に濃くなるにおいを頼りに進んで行くと…惨劇が目に飛び込んできた!
森の端に身を潜め観察する、そこには五体の死体と数十体のゴブリンの群れがいた。
ゴブリンは遺体に貪りつき飢えを満たしているようだ。
凄惨な光景に若干の不快感を感じつつも人族の生き残りがいないことを確認してからゴブリンを掃討する。
数が多くても此方を視認することすらできないゴブリンでは相手になるはずもなく、数分と持たずに掃討は完了する。
(…やっぱり弱いな。こんな魔物に遅れを取るなんて…人族がこの大陸を独占してるって話が疑わしくなるな)
「辰之助は魔石の回収をお願いするね?
俺は遺体の確認してくるよ…」
辰之助の了解の声を確認して遺体に歩み寄る。
気は進まないが、遺体から所持品などを漁り、情報収取兼所持金チェックを行う。
遺体を見るのは初めてではないが、それでもくるものがあるのは確かだ。
吐き気を堪え懐を漁ると…小さな皮袋と手紙を発見する。
皮袋には銀や銅、鉄でできた貨幣が入っている。おそらくこの帝国の貨幣で間違いなさそうだ。
(手紙かぁ…届ける相手も分からないし、翻訳スキルが使えるか試すためにも読んで見るかな…気は進まないけどね?)
そんなことを思いながら手紙の封を切り目を通して行く。
翻訳スキルは文字でも使用できることに安堵しながら読み進め…呟く。
「…やっちゃったよ…大切な情報源失っちゃった…」
そう呟き天を仰ぐのだった。
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