第1話 シャバに出られた訳ではなかった
目を覚ますと辺りは真っ暗で何も見えない。
硬い地面から起き上がり、周囲を警戒する。
地面の感触からして岩のようだ。
湿った空気が漂っているのがわかる。湿度が高いらしい事がうかがえる。水場が近くにあるのかもしれない。
若干だが空気は流れていっている感じがすることから、閉鎖された空間ではない事に安堵する。
もし、仮にだが、またダンジョンに転移していようものなら自称管理者と謳っていた彼奴に天誅を下さなければならない所だった。
照明の魔道具を使い辺りを照らし辰之助の様子を確認する。
難しい話をしていたせいか?疲れているようなのでそのまま寝かせる事にして周囲の安全確保の為に凍結の魔術陣を設置していく。
設置が終わり一息つく頃、唐突に視界にノイズが走る!
フラつき膝をつく。頭を振り暫くして視界が戻った頃、機械音が頭の中に響く。
ポーン『箱庭の管理者 エシュゴゥトより神託が降りました。内容はステータスより確認できます』
「…はぁ…神託が降る度にこんな貧血みたいな事にならないといけないのか…などうにか改善してくれないかな?」
ボヤきながらステータス確認する。
「親愛なる友、楠木 将吾君へ…
『ちょっと待て!いつから俺はお前の友になった!ただの都合のいい女ポジションだろっ‼︎
しかも何だ!このメールみたいな機能?こんなの無かっただろっ‼︎
こんな機能つけてる暇があるなら人族何とかする機能を開発しろよっ‼︎』
…と言う苦情は受け付けてないからさ?無駄なツッコミに労力を割かないように、先に言っておくね?」
「…チッ!」
舌打ち一つ。苛立ちを紛らわし、メールに目を通していく。
「では、無駄なツッコミを阻止したところで本題に入るよ?
今、将吾君と辰之助は人族が占領する中央大陸、エベレスティア大陸に転移している。
四季があり、肥沃な大地は大いなる恵をもたらし、魔物の被害も少ないまさに理想郷といってもいいほどの恵まれた大陸だった。
人族によって奪われ続けた大地はもはやかつての姿はなく、砂漠地帯が広がりつつある不毛の地となりかけている。
その原因の一つに死者の蘇生がある。
本来魂を持つものは死んだ後に僕達管理者や管理者補佐の元に戻り、生きていた頃に魂に刻まれた情報を僕達に持ち帰ると言うとても大切な役割がある。
その最後の役割を遂げた魂は暫しの休息の後、またこの世界に転生する。
勿論前世の情報は消去してだよ?
これにより僕達は下界の詳細な情報を集め、過不足なく魔素を行き渡らせたり、疫病や不作、世界の異変を未然に防ぐ事ができるってわけだ。
その循環を離れ、魂をあるべき所へ返す事なく留まるとどうなるか?
簡単だ。日々、膨大な情報を精査している僕達の知らぬ間に大地は緩やかに死滅する。魔素の供給量が減るからね。
魔素とは人で言うところの血液だ。
栄養が運ばれなければ死ぬしかない。
一部が壊死してしまえば後は雪崩式に…壊死した場所が穴となり、魔素が漏れ出し他の大陸まで影響する。そして世界は崩壊する。
事態の重大性を理解してくれたかな?
してくれたところでお願いなんだけど…半年以内に人族に死者の蘇生をやめさせて欲しいんだ!
エベレスティア大陸の崩壊が思ったより早くてさ、迅速に対処して欲しいんだ。
死者の蘇生を多く行なっているのはジルバトリア帝国と言う国だ。
今、将吾君がいる洞窟を出て北に三日程歩いた所にあるから!
あっ、忘れてた!
死を誤魔化し、長く生きている人族の魂はそれだけ多くの情報が蓄えられる。
でもね?本来50〜60年程しか生きれない者の魂が100年以上生きて平気だと思う?
パンパン膨らんだ風船に更に空気を入れ続ければ…いずれは破裂するよね?
それと同じさ…いずれ魂は壊れ、消滅する。
残った肉体は生前の最も強い欲望に駆られ狂人となる。
大体は生に固執しているからさ〜失ってしまった魂を取り戻すべく、他者の魂に手を出しちゃうんだよ!
まさに負のスパイラルだよね?
かなり狂ってる奴らが多いと思うから気をつけてね?
親愛なる将吾君の友より」
「…半年って…ふざけてるよね?あいつ…もう敬うなんてできないしもうあいつでいいや…まだ続きがあるな…」
「 追伸
帝国には僕の神託を受ける事のできる極めて稀な敬虔な使徒がいるから!
きっと協力してくれると思う!
あと、死者の蘇生を止めれるのなら手段は問わないからね?
最悪人族を滅ぼしてしまっても構わないから?
まぁ、優しい将吾君は困難でも生かす道を選ぶと信じているよ?
僕もできる事なら滅ぼしたりしたくないからね?
吉報を首を長くして待ってます!
将吾君の心の友より?」
「…最後?になってるな…わかってるじゃないか!お前は俺の心の友じゃないし、下手しなくても友ですらないからね!あー腹立つなぁ…誰かを殴りたい気持ちってこんな感じなのか…切り替えていこう。
とりあえず協力者と接触して情報を…協力者って誰だ?何処にも協力者の情報が書かれてないよ‼︎
嘘だろっ?そんな事あるわけ…あったよっ‼︎フザッケルナヨ‼︎特徴、指名、落合場所ぐらい書いとけよなぁぁぁぁぁぁ‼︎うっかりで済ませられる状況じゃないだロゥッ‼︎大体一つの種族滅ぼせって無茶振りだろっ‼︎俺は普通の人だゾッ!そんな事でき…」
一人将吾が騒いでいると…
「シューゴ‼︎ウッルッサッイ‼︎おれ、寝てるんだよ?なんで騒ぐのっ‼︎
…それにさっきから一人でブツブツ言っては騒いで…気持ち悪いよ!…あとシューゴは人族じゃないよ?」
…辰之助に怒られました。
最後の一言に胸えぐられてふて寝する将吾であった。
お読み頂きありがとうございます。
今回から主人公視点に戻ります。
ちょくちょく勇者sideの描写もしていこうと思っています!
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