9話 クマ撃退!
わたしたちはもう一度、精霊の森へ足を踏み入れた。
「大丈夫よ、わたしたちなら大丈夫……っ!」
リディは足を震わせながら言う。わたしは、ポケットからあるものを取り出した。
「リディ、これ」
リディは両手を広げる。その上にわたしはお守りを置いた。
「これは?」
「お守りだよ」
わたしは両手でお守りをリディの手と一緒に包み込む。そして、おまじないの呪文をとなえる。
「シャンリ、シャンリ、シャンゼ。リディに勇気をください」
ふしぎと手の中が温かくなる。
「その呪文、はじめて聞いた。何の魔法?」
「魔法じゃないよ、おまじない」
「おまじない?」
「そう。おまじないは何かするときに、うまくいくようにお祈りするものなの。炎を出したり、空を飛べたりするようなことはできないけど、気持ちをサポートしてくれるのよ」
「へえ、ふしぎなものが真琴の世界にはあるのね」
「この世界にはおまじないはないの?」
「ないわよ。だって、魔法があるもの」
そう言いながら、リディは杖を手に持つ。
「勇気……。そうね、勇気出てきたかも。わたしはビビりで怖がりだけど……これは、わたしが王様になるための試練。真琴にばかり頼っていられないわ」
わたしも魔法の剣を手に持ってかまえる。
「行こう、リディ」
「ええ、行きましょう!」
森の中を進んでいく。リディはおびえた様子で歩いていた。
「リディ。最初の方は、リディが魔物を倒してみようよ」
「ええ、わたしが!?」
「入り口付近は、まだそんなに強くないよ! 何かあったら、わたしが助けるし!」
「でもぉ……」
「リディ、これも試練だよ!」
わたしがそう言うと、リディの顔つきが変わった。
「……そうね、これも試練ね。わたし、がんばるわ!」
わたしの後ろを歩いていたリディが、わたしの前を歩きはじめる。
「リディ、そこにねずみの魔物が!」
わたしが指をさすと、リディは呪文をとなえた。
「トネーラリー!」
杖を振りかざすと、そこから雷が放たれる。その雷がねずみの魔物をおそった。
「ンギィ!」
ねずみの魔物は悲鳴を上げて、消えていく。
「やった……。やったわ!」
リディは嬉しそうにジャンプすると、わたしに抱きついた。
「わたし、倒せたわ!」
「さすがリディだわ! この調子でがんばりましょ!」
わたしたちは小さな魔物を倒しながら進んでいった。
リディが魔物と戦って、倒せなかったら、わたしが剣で倒す。
そして、この前来たところまで、たどりついた。
「真琴、またあの魔物出るかな……」
「わからない。けど、進まないと」
わたしとリディはまわりの様子を見ながら、おそるおそる歩いていく。
その場所を通り過ぎようとしたとき、それは現れた。
「真琴! また、クマの魔物よ!」
木々の向こうには赤く目を光らせたクマの魔物がいた。その目はわたしたちをとらえていて、こちらへ走ってくる。
「リディ、杖をかまえて!」
わたしがそう声かけをしても、リディは動かない。
「リディ!」
「真琴……。わかってるの。わかってるのに、体が動かないの……」
リディの目はこちらを向いていない。クマの魔物から目が離せないようだ。
「わかった……。じゃあ、リディは見てて。わたしがあなたの助けになるから!」
わたしは剣をかまえると、こちらに走ってくるクマの魔物に剣を振った。
「やああっ!」
剣でクマの魔物を傷つけることができた。けれど、その傷は浅い。
「真琴!」
遠くに離れたところにいるリディが声をはりあげた。
「その魔物、左胸をかばってる! もしかすると、そこに弱点があるのかも!」
さすがリディ。相手をちゃんと観察してる!
「わかったわ! 左胸を攻撃してみる!」
わたしはクマの魔物の方へ駆けていき、剣を振る。
「はああっ」
けれど、クマの魔物はすばやく動いて、剣をよけた。
「あいかわらず、動きが早い!」
わたしはクマの魔物に向かって、何回も剣を振る。けれど、クマの魔物の動きが早くて、剣が当たらない!
「どうしたらいいの……っ!」
わたしがそう思ったとき、遠くから呪文が聞こえた。
「トネーラリー!」
大きな雷がクマの魔物をおそう。
「グワアアッ」
クマの魔物は悲鳴を上げて動きを止めた。
「今よ!」
リディの声を聞き、わたしはクマの魔物の左胸をつきさした。
「やああああっ!」
剣がクマの魔物に刺さると、魔物は消えていった。
「やった……」
「やったわ! さすが真琴!」
リディがかけよって、わたしをだきしめる。
「わたしじゃないよ! リディ! よく魔法使ってくれたね!」
わたしがだきしめかえすと、リディは照れくさそうに笑った。
「実は、これのおかげなの」
リディが持っていたのは、わたしが渡したお守りだった。
「どうにかしたいって思って、このお守りをにぎりしめたの。そしたら、怖い気持ちがなくなって……真琴を助けなくちゃ! って思えたの!」
リディは目を細める。
「だから、真琴のおかげよ。さすが、わたしのパートナー!」
そう言われると、うれしくなる。
リディにパートナーって言われるのは、本当に約二叩ているかわからなくて不安だった。けれど、今はリディのとなりに立てているような気がした。
「リディががんばったからだよ! さすが、わたしのパートナー!」
わたしがそう言いかえすと、リディはうれしそうに笑った。




