7話 精霊の森
ここは街のはずれにある精霊の森。わたしは真琴と二人でその入り口に立っていた。
「これが魔法の剣よ!」
「あ、前に話してたやつ! 届いたんだね!」
リディから魔法の剣を受け取る。剣なのに、わたしにも持ちやすい重さだった。
「ねえ、振ってみて!」
リディに言われ、試しに振ってみる。本物の剣ははじめて振ったのに、とてもしっくりする!
「すごいすごい! 様になってる! さすが真琴ね!」
「本当に大丈夫かなぁ」
「大丈夫よ! わたしもいるんだから!」
リディはわたしの隣に並んで、わたしの手を握る。
「それじゃあ、行きましょう!」
森の中は暖かかった。木と木の間に花も咲いている。……なのに、鳥の鳴き声が聞こえない。
「リディ。ここに魔物が出るの?」
「出るわ。気を引きしめて」
二人でおびえながら、ゆっくり歩きすすめていくと、小さな二つの影が現れた。
それは大きなねずみのようだった。大きな歯を突き出して、わたしたちを威嚇している。
「リディ、なにあれ!」
「魔物よ! 真琴、剣をかまえて!」
リディに言われて、わたしはすぐに剣をかまえた。わたしはかけていき、ねずみに剣を振り上げた。
「やあっ!」
剣をねずみに振り下ろす。剣でねずみを切ると、ねずみはキラキラとかがやいて消えた。
「すごい、倒せた!」
「真琴! 右も!」
リディに言われ、右にいたねずみも切る。こちらもキラキラとかがやいて消えていく。
「リディ、倒せたよ!」
振り返ると、リディは木の後ろにかくれていた。
「……リディ?」
「さ、さすがわたしのパートナー! 強くてかっこいいわ!」
「どうして木の後ろにかくれてるの?」
リディはあわてて首を横に振る。
「べ、べつに怖いわけじゃないわよ! 後ろで真琴の活躍を見ようと……」
「怖いんだ?」
リディをじーっと見つめると、リディは観念したように息を吐いた。
「こ、怖いわよ! なによ、あの大きなねずみ! こっちを攻撃してこようとしていたじゃない!」
そう言って、リディはその場から動こうとしない。わたしはリディのそばに行って、手を差し出した。
「わたしが守るよ、リディ。いっしょに進もう?」
「真琴……っ!」
リディは目元に涙を浮かべてわたしに抱きついた。
「さすが、わたしのパートナーだわ!」
わたしたちはどんどん進んでいく。
「真琴! 右から、犬のような魔物が!」
「やあっ!」
わたしはリディを守りながら、森の奥へと進んでいた。
「ここまでは順調ね」
「この剣すごいね! 魔法がなくても倒せるからよかった!」
わたしがそう言うと、リディはにっこり笑った。
「何言ってるのよ。これは魔法の剣。真琴の魔法を使って、力を強めているのよ」
リディはわたしが握っている魔法の剣に触れる。
「だから、これは真琴の力。真琴が強いから、敵を倒せているのよ」
そう言ってわたしに向かってウインクした。
「ありがとう、真琴。あなたのおかげで前に進めるわ」
「リディ……」
けれど、近くで草が揺れる音が聞こえた。
「まだ魔物がいるのね」
わたしとリディは音のする方を向く。わたしが剣をかまえると、草むらの向こうから大きなクマが現れた。
「大きい! クマの魔物よ!」
「あれも魔物なの!?」
「ここには魔物しか出ないのよ!」
さっきまで出てきた魔物はわたしより小さかった。けれど、このクマの魔物はわたしよりもうんと大きい。それがわたしたちの方に威嚇している。
……怖い。けれど、リディはもっと怖いはず。
わたしは剣を強く握ると、クマの魔物の方にかけていく。
「やああっ!!」
大きく振りかぶって、クマの魔物に振り下ろした。
けれど、クマは剣に当たらないように、後ろに下がった。
「うそっ!」
「攻撃が外れた!」
「このクマ、動きが早いよ!」
どれだけ剣を振るっても、剣をよけられてしまう。
クマは魔法の剣をつかんだ。
「えっ」
剣をつかみ上げて、わたしごと持ち上げる。そして、遠くに投げた。
「きゃーーーっ!」
「真琴!」
木に打ち付けられそうになったけれど、リディが魔法でやわらかいクッションを出してくれた。クッションのおかげで、ケガをしなくてすんだ。
「ありがとう、リディ」
「まだ敵がいるわ!」
リディが魔法の杖をクマの魔物に向けている。けれど、その手はふるえていて、魔法で攻撃することができない。
「リディ、逃げよう!」
「でも……っ」
「一旦、引くべきだよ!」
リディはくやしそうに唇をかむと、呪文をとなえた。
「ルライト!」
まぶしい光がクマの魔物をおそう。クマの魔物は眩しそうに目をそむけた。
「逃げよう!」
わたしとリディはクマの魔物に背を向けて、走り出した。
もと来た道を走っていくと、森の出口に出ることができた。
はあはあ、と息をしていると、リディが大きな声を出した。
「くやしい……っ! わたし、何もできなかった!」
「そんなことないよ! リディは逃げれるようにしてくれたでしょう?」
「そうだけど、それしかできなかった!」
リディはしゃがみ込んで、顔をうつむかせる。
「……弱いパートナーでごめんね」
わたしとリディはそのまま寮へと帰った。けれど、リディはずっと暗くて……次の日、ベッドから出てこなかった。
「リディ。学校へ行ける?」
「……今日は行かない」
いつも優等生で、真面目なリディが学校に行かない。それほど、森で何もできなかったのがショックみたい。
「じゃあ、行ってくるね」
わたしは一人で学校へ向かった。




