5話 歴代の王様
次の日、学校がお休みだった。なので、リディと一緒に城へ向かった。
「すごい! お城に向かうのは馬車なのね!」
ふかふかのソファーに座りながら、窓の外を眺めた。
馬車は馬が引いてくれている。こんなの、絵本やアニメでしか見たことない!
「そりゃ、城に行くんだもの。馬車に乗らなくちゃ」
リディは慣れた様子で馬車に乗っている。さすが、お姫様!
「お城が近づいてきたわ」
窓の外に大きな建物が見えてきた。高い塀が続いていて、端っこが見えない。
白い壁にとがった屋根が並んでいる。絵本でも見たことのある城って感じ!
大きな門を通って、塀の中に入っていく。中にはお花が咲いた庭が広がっていた。
「すごい! 綺麗!」
「まあね。庭師が毎日手入れしてるからね」
しばらく走っていくと、大きな建物の前に馬車が停まった。
「ここが図書館よ」
リディが指さしたのは、お城にしか見えなかった。それくらい大きかった。
「ここが図書館!? すごい大きい!」
「城の図書館だからね。入るわよ」
リディと手をつないで、図書館の入り口に向かう。扉を開こうとすると、勝手に扉が開いた。
「わっ。扉が勝手に開いた!」
「魔法よ」
中に入ると、壁一面の本棚が広がっていた。外で見ていたとおり、中はとても広く、そこに本棚が並んでいる。学園の図書館とは大違いだ。
中を歩いていると、こちらに一人の女性が歩いてきた。
「いらっしゃいませ、リディアーヌ様。お待ちしておりました」
「連絡していたとおり、昔の王様が書いた本について知りたいの。案内してくれる?」
「かしこまりました。こちらです」
その女性は案内するように歩きはじめる。
「あの人は?」
「司書よ。本について、詳しいお仕事をしている人。こういう本が読みたいって伝えたら、その本を提案してくれるの」
「図書館の妖精には頼らないの?」
「毎回お菓子を用意してたら大変じゃない。司書はとても優秀だから、大丈夫よ」
司書さんのあとをついていくと、一つの本棚の前に来た。
「ここの本棚に過去の王様について書かれた本が多くあります。本を読むときは近くのテーブルをご利用ください。何かわからないことがありましたら、またお声がけください」
「ありがとう」
リディがお礼を言うと、司書さんは頭を下げてその場を離れていった。
「じゃあ、探してみようか!」
リディの言葉にわたしは思わずうつむいてしまう。
「わたし、この世界の文字読めない……」
「あ……そうだった」
顔を上げられないでいると、リディがわたしの肩を叩いた。
「大丈夫だよ! わたしが調べるから! 真琴はわたしが困ったときにいっしょに考えてくれる?」
リディの言葉にわたしは顔を上げてうなずいた。
「うん! まかせて!」
リディは本棚から一冊、本を抜き出すと読みはじめた。わたしはやることがなくて、本棚を眺めてみる。
わたしにも読める本があれば、いいんだけどな……。
でも、そこにあるのは、わたしが日本で通っていた学校にあった本よりも、ずっと厚い本ばかり。一冊抜き取って、広げてみる。やっぱり、この国の言葉で書かれていて、まったく読めない。
「真琴、真琴。来て来て!」
リディに呼ばれて、テーブルに広げられている本を見る。
「どうしたの?」
「この本はね、今までの王様について書かれたものなの」
「へぇ……」
そう言われても、そこには何が書かれているかわからなかった。
「今まで王様になったのは、人間以外のいろんな生き物ばかりで、悪魔、吸血鬼、精霊とか、いろいろな種族がなっていたの。みんな長生きだから、千年くらい王様をつとめていたのよ」
「千年! すごいね。リディも千年生きるの?」
「そうなるわね」
リディが人間ではないことは知っていたけど、大きな違いがわからなかった。でも、そんなに長生きだなんて……。
「それなのに、ここ。この王様だけが五十年しか王様をつとめていないの」
「ほかの王様より短いってことは、人間が王様だったのかな?」
「わからない。王様をつとめていた期間が短くて、情報が出てこないのよ」
そう言って、リディは腕を組む。
「もう少し調べてみるわ」
リディが本をじっくり眺める。わたしも何かしたい。
本棚をじっと見ていると、一冊の本が気になった。その本は他の本と違って、少し薄い。
その本を引き抜いて、開いてみる。
「これ、日本語で書かれてる!」
見たところ、たぶん日記だ。日にちとその日にあったことが書かれてる。
『日本からこのワードリナ王国に召喚されてしまった。次の王のパートナーになるためだという』
最初のページにはそう書かれていた。この人もわたしと同じように日本からこの世界に来たんだ!
わたしはすぐに最後のページを見てみた。もしかしたら、元の世界に帰る方法が書かれているかもしれない!
けれど、最後の方の日記には、帰る方法が書かれていなかった。
「真琴、どうしたの?」
「この本、日本語で書かれているの」
「えっ!」
リディはわたしのとなりに立って、その本を見た。
「なんて書いてあるかわからないわ。どんなことが書いてあるの?」
「次の王様のパートナーになるためにこの世界に来たって書いてあるよ。あと……あっ!」
「どうしたの?」
「魔法書について書いてあるよ!」
わたしは本に書いてあることを口に出して読んだ。
『この世界にはない魔法を見つけた。その魔法について一冊の本にまとめた。その本は城の地下書庫の奥の部屋にしまった。その部屋に入るには、カギが必要だ』
リディは考えるように腕を組む。
「地下書庫の奥の部屋ね。ちょっと司書に聞いてみましょ」
リディはカウンターにいる司書に声をかけにいった。
「地下書庫の奥の部屋ですか?」
司書さんは困ったようにほっぺに手を当てた。
「あそこのカギは精霊の森にあるのです」
「精霊の森? どうして?」
「かつての王がそうしたのです。その部屋にしまわれているものは、ふさわしい人に持ってほしいから、といわれています」
「ふさわしい人……つまり、その魔法書にふさわしい人がその本を持つべきってことね!」
リディはわたしの方を向いた。
「真琴! これはわたしたちへの試練よ!」
そう言ってわたしの手を取った。
「わたしたちが魔法書にふさわしいって、証明しましょう!」
「でも、子どもだけで森に行っていいの? 危なくないの?」
「大丈夫よ! きっとなんとかなるわ!」
「む、むりだよ~」
リディはそう言ってたけど、わたしの手をにぎってるリディの手はふるえていた。




