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4話 伝説の魔法書

 次の日、授業が終わったあと、わたしたちはクラスの先生にさっそくたずねた。


「先生、聞きたいことがあるんですけど」


 リディが声をかけに行くと、先生は立ち止まってくれた。


「どうしたんだ、リディ」

「もっと魔法が使えるようになるのは、どうしたらいいですか?」

「魔法? リディは十分魔法が使えるじゃない」

「もっと、もーっと使えるようになりたいんです! もっとじょうずに、すごい魔法を使いたいんです!」


 リディが真剣にそう言うと、先生は笑いながらリディの肩をたたいた。


「リディは十分じょうずだよ。がんばってる。それ以上、むりしなくていいんじゃないかな」

「でも……」

「魔法のこともっと知りたいなら、学園長先生に聞くといいよ。学園長先生は、昔、魔法の研究者だったんだ」


 わたしとリディは顔を見合わせる。


「わかりました! 聞いてみます!」


 二人で声をそろえて言うと、先生は「わはははっ」と笑った。


「うんうん、がんばってね!」


 先生はそう言って、教室から出ていった。

 わたしたちはカバンを持つと、学園長室へと向かった。


「学園長先生、失礼します」


 そう言って、扉をノックすると、学園長先生が顔を出した。


「あら、リディさんと真琴さん。いらっしゃい。授業はしっかり受けれた?」

「はい! がんばりました!」


 そう答えると、学園長先生は目を細めてうなずいた。


「そう、それはよかった。それで、どうしたの?」


 学園長先生はそう言って、中に入れてくれる。

 真ん中に置いてあるテーブルのソファーに座ると、その前に学園長先生が座った。


「実は、学園長先生に聞きたいことがありまして」


 わたしが口を開くと、リディが手をあげる。


「もっとじょうずに、すごい魔法を使えるようになりたいんです!」


 学園長先生はそれを聞いて「あらあら」と口元に手をあてて笑う。


「同じことをほかの生徒も聞いてきたわ」

「ほかの生徒? 誰が聞いてきたんですか?」

「ジルさんよ」


 学園長先生の言葉にリディが固まる。


「彼にも教えてあげたのだから、あなたたちにも教えましょう」


 学園長先生は人さし指を立てて、教えてくれる。


「すごい魔法が使える伝説の魔法書があるの」

「魔法書?」

「そう。それは、本当にあるかわからない、まぼろしの魔法書で、とくべつな魔法について書かれた本なのよ」

「とくべつな魔法って、どんな魔法が書かれてるんですか?」


 学園長先生は首を横に振る。


「それはわからないの。手に入れようとした人はたくさんいたけど、だれも手に入れることができなかったのだから」


 そんな……。だれも手に入れることができなかったなんて……。そんな魔法書、手に入るのかな。

 わたしはそっと、隣を見る。リディはうつむかず、まっすぐ前を見ていた。

 リディは本気なんだ。リディががんばろうとしてるのに、わたしがおじけづいちゃいけない。

 わたしは学園長先生に言う。


「魔法書、見つけてみせます!」


 わたしの言葉に、リディは大きく目をひらいた。


「真琴……っ!」

「リディ、いっしょにがんばろう!」

「うん!」


 学園長先生はほほえみながら、拍手をしてくれる。


「二人なら、きっと見つけられるわ。がんばって」

「はい!」


 わたしたちは、学園長先生の頭を下げると、学園長室を出た。


「魔法書はどうやって手に入れるんだろう。そもそも、どこにあるの?」

「聞き込みをしてみましょう! 誰か知ってる人がいるかもしれないわ」


 わたしたちは残ってる生徒に声をかけてみることにした。


「ねえ、ちょっといい?」

「リディ、どうしたの?」


 リディが生徒に声をかける。わたしはその後ろで様子を見ていた。


「伝説の魔法書について知らない? とくべつな魔法について書かれた本なんですって!」

「伝説の魔法書? うーん。聞いたことないな」

「そっか、ありがとう!」


 わたしたちは何人かの生徒に聞いてまわった。けれど、知ってる人はいなかった。


「どうしよう、知ってる人がいない!」

「みんなが知らないことを調べるには、どうしたらいいの!」


 わたしたちがさわいでいると、クラスメイトの子たちが声をかけてきた。


「リディたち、何をしてるの?」

「ねえ、伝説の魔法書って知らないかしら? 探してるのよ」

「聞いたことないな……」

「そうよねぇ」


 リディが肩を落とすと、その子は「でも」と言葉を続けた。


「調べものにはいい方法があるよ」

「え、何をするの?」

「図書館の妖精に聞くの!」


 胸を張って言うその子に、リディは嬉しそうに手を打つ。


「なるほど、図書館の妖精ね!」


 わたしはそっと、リディの服のすそをひっぱった。


「リディ、図書館の妖精って?」

「この世界にはね、台所の妖精や鍛冶の妖精とか、いろんな妖精がいるの。図書館の妖精はいろんなことを知っているのよ」


 すごい、お話の世界みたい!

 魔法もそうだけれど、この世界には不思議なものがいっぱいあるんだなぁと改めて実感するよ。

 リディはクラスメイトの子をぎゅっと抱きしめる。


「ありがとう! さっそく図書館へ行ってみるわ!」

「どういたしまして。探しもの、見つかるといいね」


 わたしとリディはさっそく図書館へ向かった。図書館に着くと中に入った。リディは奥へと歩いていく。


「ここよ」


 そこには誰も使っていないテーブルがあった。そのテーブルには小さなお皿とカップが置かれている。


「小さいお皿とコップだね」

「妖精用よ。ここにお供えをするの」



 リディはカバンから袋を取り出した。


「このお皿にはお菓子を、カップには紅茶をそそぐの」


 そう言って、リディは準備をしていく。


「妖精は甘いものが好きなのよ。妖精が来るまで、少し待っていましょう」


 二人で少し離れた席でお供えをしたテーブルを眺めながら待っていた。五分くらい待ったころ、テーブルの上にきらきらとしたものが見えた。


「リディ、あれ……」

「ええ、妖精ね」


 じっと眺めていると、小さな人が見えた。わたしの人さし指くらいの大きさだ。桃色の長い髪を肩まで伸ばして、可愛らしいドレスを着た女の子だ。

 リディが立ち上がり、テーブルに近づいた。


「こんにちは、図書館の妖精さん」


 妖精はクッキーにかじりつきながら、こちらを見上げる。


「あら、あなたたちがお客さんね。このわたしに何か用かしら?」

「はい。伝説の魔法書について知りたいの。教えてくれる?」

「伝説の魔法書? ああ、昔の王様が書いた本のことね」

「昔の王様が書いたの?」

「そうよ。昔のある王様が書いたの。城の図書館なら、その魔法書について詳しいことが書いてある本があるはずだわ」


 リディが顔をかがやかせる。


「城の図書館! なら、わたしにも入ることができるわ! だって、わたしは精霊姫だもの」

「そうね。今の王の娘、リディアーヌ様なら、お顔を見せるだけで入れるでしょうね」


 妖精はかぷりとクッキーを食べる。


「でも、魔法書を見つけられたとしても、あなたたちに読めるかしらね」

「どういうこと?」


 質問すると、妖精はちらりとこちらを見た。


「そのままの意味よ」


 そう言って、紅茶を一口飲むと、妖精はきらきらと光を放って、消えていった。

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