ねえ、酔っ払いねーちゃん。知ってる?
視点変更。
『ふふっ、ああ! ああ! 早く、早く彼のところへ行かなくちゃっ!!』
ぅう……気持ち、悪ぅ……飲み過ぎ、たぁ……
ん? あれ?
なんか、いきなり気分最悪になったんだけど……?
それが、少し楽になった?
「それはよかったねぇ?」
つか、さっきまであたしになんか喋ってた、ちょっとヤバい系の女の子どこ行った?
「ああ、うれしそうに推し活行ったよ?」
は? マジ?
つか、待って? 今からっ!? ぁ~……やっぱり、ちょっとヤバい子だったの……?
「そうだねー? ああいう輩とは、なるべく関り合いならない方がいいと思うよ? 寄って来ても、ヤバいと思ったら無視すればよかったのに。なんで話してたの?」
いや、その……誰でもいいからあたしの話聞いてよ! って、叫んだような気がしなくもないけど。あれ? 誰もいないから叫んだような……? まあ、気が付かなかっただけかしら?
「あ~……酔っ払って……」
ああんっ、そんな呆れた声しないでよもうっ!
あの子に話し掛けられて質問に答えてたら……ちょっと身動き取れなくなって、なんか返事するのも億劫なくらい身体重くて気持ち悪くなったのよねー? なんだったのかしら?
気持ち悪すぎて、それに耐えるのに必死で、途中からあの子がなに言ってるのか全然わからなかったし……?
「ははっ、酔っ払いねーちゃん。さっきの推し活ねーちゃんと話してる間に、酒回り過ぎたんじゃないの? 飲み過ぎ。急性アル中は怖いよ~? こんなところで管巻いてるよか、楽になったならさっさと帰ってスポドリでも飲んだら? 明日、二日酔いで大変なるんじゃない?」
ぅうっ、こんな酔っ払いアラサーになんて優しい子なのっ!? ありがとうね~っ!?
「はいはい、まだ酔ってんだね。別にさ、本気で死にたいとか思ってなくて。誰かに構ってほしいとか、優しくしてほしいだけなら、もう家帰りなよ? ね? 酔っ払いねーちゃん」
うわ~ん、いきなりそんな冷たいこと言わないでよ~っ!?
「貢いで尽くした男に振られたんでしょ? 家政婦だって言われて? よかったね? これでもう、そんなクズ男に貢がなくて、尽くさなくてもよくなったんだから。お一人様ばんざい! 時間もたくさん余るね? 美味しいものやケーキでもやけ食いすれば? 少なくとも、深夜の公園で女一人で酔っ払うより健全だと思うし」
や~だ~っ!! おうちに一人でいるのはさみしいの~っ!! おねーさんに構ってよ~っ!?
「はぁ……だからって、こんなとこで飲まなくてもいいでしょうに? ねえ、酔っ払いねーちゃん。知ってる?」
んぅ~? なにを~?
「ここの公園さ、少し前にね……女の子が、亡くなってるの」
え? ……は? 今、なんて?
「ほら? 最近、暑いじゃん? いきなり気温上昇とかしてさ?」
ああ、うん……確かに。気温の乱高下、結構激しいかも?
「なんか、この前。すっごく痩せた女の子が熱中症で倒れて、救急車で運ばれたけど……ってやつ。ニュースとか見てない? 発見されるのが遅かったみたいで、間に合わなかったって。過度なダイエットが原因じゃないか? って言われてるやつ」
あ、うそっ……それ、この公園だったのっ!?
「そ。ほら……あっちに、お菓子やジュース、お花が供えられてるでしょ? クソ暑いとき、飲まず食わずが長時間続くと普通に命に関わるからなぁ……」
うわっ!? ほ、本当だ……
「そんな場所で、しかも深夜にさ? よくこんなとこで酒飲もうと思ったよね?」
ぅう……振られてヤケ酒して、買い足しがてら変なテンションでここで缶開けた的な?
「普通に不審者じゃん。家帰ってから飲めばよかったのに」
ヤだ……小学生に本気でお説教されてる……恥ずかしいっ……!
「酔っ払いねーちゃん、不審者だけど一応女の人だし? 深夜に一人でうろつくとか、もう少し危機感や防犯意識持ったら? 犯罪に巻き込まれてからじゃ遅いんだからさ?」
ぅ~……はい。ごめんなさい……
「それに、そんなに誰かに貢いだり尽くしたりしたいなら、看護師にでもなったら? やりがいあるんじゃない? ま、看護師って駄目男製造機の人多いって聞くけど」
看護師? 駄目男製造機ってなにそれ~? 酷くない?
「ま、少なくとも駄目男に貢いで、家政婦扱いされた挙げ句、振られて深夜の公園でヤケ酒する不審者よか断然いいと思うよ?」
……って、あれ? ちょっと待って?
深夜の公園に小学生の女の子が一人でいる方が危ないでしょっ!?
「あはは、バレた?」
もうっ、危ないことしてるのはどっちなのよっ!? あなた、どこの子? おうちはこの近く? 一人で出て来たの? おねえさんがおうちまで送ってくわ!
「あ、それはお断りしま~す」
なんでっ!?
「や、酔っ払いねーちゃん。自分の足ふらついてるのわかってる?」
ふぇ? おっ、とぉ……?
「ほらほら、酔っ払いねーちゃん。近くの自販機行くよ。ちゃんとゴミも持って」
え? 自販機? なんで?
「ジュース奢ってよ? 酔っ払いの話聞いて、心配してあげてるんだから優しいでしょ? そしたら、あたしも帰るからさ?」
ん~も~、しょうがない子ね~? でも、おねーさんの話聞いてくれた優しい子に、おねーさんサービスしちゃうっ♪
「自販機はあっちだよ、あっち。早く行くよ」
ふぁ~い、あっちね~……うおっ、自販機がやたらまぶしいっ! 目、目がぁっ!?
「ま、あっちは少し暗かったからねぇ? で、お金は? 小銭あるの?」
あ、うん、さっきお酒買ったおつりある~♪
「じゃあ、ほら? お金入れて。あたし、スポドリがいい。ペットボトルの大きいやつね? 上届かないからおねーさんが押して」
もう、わがままな子ね~? お金、小銭入れて……ピ~っと。ほら、出て来たわよ~?
「……それじゃあね? 酔っ払いはそれ飲んでさっさと家帰んな」
へ? え? あ、れ? 要らない、の?
「ふふっ、もう夜にこんなとこ来るのはやめなよね? 酔っ払うと、よくないモノ寄せる人は特に、ね?」
――――ザッと、冷たい風が吹き抜けたと思ったら、一気に酔いが醒めた。
『せっかく悪縁切れたなら、新しいことでも始めて、幸せになりなよ?』
え? あ、れ? ……さっきまで横にいた女の子の気配が、全く無い。
公園を見渡して猫耳フードの姿を探すけど、もう見えない。相当足の速い子だったのかな?
首を捻りつつ、あの子が受け取らなかったスポドリを飲みながら……多分、これあたしに飲ませるためだよね? 口はちょっと悪いけど、優しい子だったなぁ……
なんて思いながら、家に帰ることにした。ああ、スポドリもっと買ってこ。
――――そんなに誰かに尽くしたいなら、看護師にでもなれば? か……
あの子の言葉が、やたら耳に残った。
なんか、あの子の声……小学生だった頃のときの友達と、似てた気がする。あの子も、どんくさいあたしに優しかったけど、口はちょっと悪くて……
ううん。気のせい、だよね? だって、あの子は小学生の頃に――――
数日後。なんか、メンズ地下アイドルの誰かが逮捕されたとニュースで見た。グループメンバーやプロデュースしてる会社も、捜査されるとかなんとか。
よくわからないけど、えぐい手口使って女の子達に貢がせていたらしい。しかも、自首した男は、なんだかその罪悪感に駆られて自分から警察に駆け込んで捕まえてくれと訴えたとか――――
貢がせて、か……
はぁ……なんだか、全然他人事じゃない気がするわー。一歩間違えば、あたしもああいうヤバい男に騙されてた可能性が……
被害に遭った女の子達、大丈夫かな?
看護師か……アラサーでもなれるかしら?
ちょっと、パンフレットでも見てみようかな? 見るだけ見るだけ♪
読んでくださり、ありがとうございました。
※深夜の一人歩きは危険です。犯罪に巻き込まれたり事故に遭う可能性もあるので、十分ご注意ください。
※酷暑の中で断食や水分摂取の制限するとガチで命に関わるので、ダイエットは程々に。むしろ、熱中症や夏バテにご注意ください。
※夏の飲酒後は、特に水分補給を心掛けてください。水分補給を怠ると熱中症になる確率が高くなります。
※サウナで汗を掻いて酒を抜くなどは、逆効果です。身体を壊して、最悪だと死にます。




