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佳境

残り22人。直径300m程度に狭まったドーム内中央付近にて、全員の視線が交錯した。

刹那、ルカは違和感を覚えた。生き残りの数に対して、名札のない者が多過ぎる。敗者復活戦を経た者たちだけが、こんなにも生き残るとはおかしいのではないか。ルカがその疑問の答えを出す前に、まるで示し合わせたかのように、全員が攻撃に移った。一歩でも早く先んじる。先手を取って、体勢を崩す。ここまで生き残った猛者達の考えは共通していた。違いがあったとすれば、標的の選定方法。ある者は無差別に、ある者は狙い澄まして、刹那に賭けた。レーザーが、衝撃波が、土石が、同時に衝突した。


結果、5人もの受験生が脱落した。序盤からノリノリでレーザービームを放っていた眼帯の男も、その内に含まれていた。

ルカはそれを視界の端に捉えていた。

(狙って仕留めたのか。序盤に無差別攻撃を受けた時から警戒はしていたが、ここで奴が落とされるとは)

レーザービームの男を落としたのは黄金の槍であった。投擲後も全ての攻撃をこともなげに回避してみせた亜麻色の髪の少女は、まだ学生の身でありながら、歴戦の強者の風格を纏っていた。

無手となった少女に向かって一歩踏み出したルカは、相手と目が合った瞬間に立ち止まり、躊躇なく撤退を決断した。

(アレは駄目だ。およそ軽々に手を出して良い相手ではない)

ルカとアイリーニは目と目で通じ合った。

無数の攻撃の余波を受けて立ち込める土埃に紛れて、2人は槍の少女から距離を取ることにした。



立ち去っていく2人を、少女はただ見ていた。その背後から赤い男が声をかける。

「良いのかよ、見逃して」

「放っときましょ。面倒くさそうなのはさっき片付けたし、後は勝手に潰し合ってくれるでしょ」

「まぁ、それもそうか」



高みの見物を決め込む二人組をよそに、残り17人となったドーム内は散発的に戦闘が起こる、探り合いの場となっていた。

「嫌な感じですわ。皆狩りやすい相手を探していますのね」

アイリーニは呟いた。先ほどから何度も襲撃を受けているが、指パッチン一発で去っていく。

ルカは黙って頷いた。自分も雑魚狩りを提案しようとしていたことは内緒だ。

そうこうしている内に、ようやく膠着状態も終わりを告げたか、散発的な戦闘音がドーム内の空気を震わせ始めた。


「俺たちは蚊帳の外か。ありがたい」

「助かりましたわ…」


そう言いつつも、アイリーニはキョロキョロと周囲を見回していた。ふとルカは周囲を見回した。何も不自然なことはないはずだ。だが、胸騒ぎが止まない。


「では、そろそろ名札をいただけますか?約束通り、それなりの仕事はしたと思いますわ」

「ああ。ところで…敗者復活戦で生き返ったのは9人だったな」

「はい?ええ、そうですわね」

「さっき中央で全員が集結した時に見た感じ、名札のない者が最低でも4…いや、お前を含め5人はいたな」

「よく…見てらしたのね」

「おかしいと思わないか?確かにお前は強い。だが他は?普通に考えれば一回戦で負け、さらにもう一戦重ねて疲弊した人間が、半数もここまで生き残れるだろうか?」

「……」

「察するに、他の4人も俺たちと同様、ペアを組んでいるのだろう。敗者復活戦の後、ドームに向かう途中でこの計画を示し合わせたな?さっきからそれなりの頻度で襲撃を受けていたが、皆お前に牽制されただけで引き下がった」


ルカは密かに感心していた。それなりに良いプランである。復活した敗者どうしで潰し合うことを避けることで、戦闘の回数自体を減らすことができる。加えて、人数が減るまでは二人組で戦うことで中盤までの勝ち残りをより安定したものにできる。

札を手に入れる手段も増やせる。アイリーニのように馬鹿正直に札の返還を要求するのも一手だが、信用を勝ち得た上で、最後に都合の良いタイミングで上手くペアを裏切れば、かなり楽に合格できる。

約束が守られるか怪しい点を含め不確定要素が多過ぎる策だが、短時間で考えたにしては悪くない。


「……その通りですわ。それで、何が言いたいんですの?二重契約だから約束は無効だとでも?」

ルカは札を差し出した。

「いや、むしろその逆だ。札はくれてやる。むしろ、セカンドプランなしで盲信される方が気持ち悪い」

アイリーニは混乱しながらも、恐る恐るそれを受け取った。

「お前は俺を背中から刺そうとはしなかったからな。生き残るために何をしようが、俺の合格を邪魔しないならどうでも良い。それに」

「それに?」

「どうやら俺たち二人に、組む以外の選択肢はないようだからな。ここからは貸し借りなしで行こう」

ルカの視線に合わせてアイリーニが振り返ると、そこには二人の男が立っていた。その片方、血塗れの男は、他の受験生のものであろう、根本から切断された腕を担いでいる。

「ひっ」

アイリーニは小さく悲鳴を上げ、二人の男は武器を構えた。ルカは険しい表情を浮かべ、呟いた。

「これだけは避けたかったんだが、もう仕方ないか」

ドーム内の人数も減り、あと数人が脱落すれば試験終了。つまり、この一戦をどう乗り越えるかが、合否を分ける分水嶺である。場の緊張は、否が応にも高まっていった。

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