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憑いた大地の因果を巡る旅路の始まり

 忠誠を誓うと息まく骸骨たちに、世界樹がごく自然にマウントを取る。


「オマエラ小さきもののボスは、オレだ。クソチビが隊長って事は、そのボスであるオレが自然と頭になるな」


「はあ? いきなり何言っとるんじゃあ、この唐変木は」


「えっと。今までにクソチビが二号までだったから、八増えて、三、四、五――そこのオマエが、九号で最後だな?」


「ひとつ数え間違てるぞ。八体いるから、最後は十号だ」


「お、そうか。じゃ、十号な」


「はあ? 誰がクソチビじゃとお!? もしかして、そりゃあ、あっしらに向けて言うとるんか!? 唐変木!」


 クソチビ呼びが余程、気に障ったのか、世界樹に食ってかかるが、巨大さに尻込みし、大人しくなる。


(おまえら! この唐変木がおらん時を、狙うぞ……!)


「それにしても、お前たちの身体は、どうやって動いているんだ?」


 一体に近づいて、膝の関節あたりを指で確かめて見るが、明らかに接合していない関節が、音もたてずに動く。


「魔法ってのは不思議なものだな。他の関節も、どれも繋がっていない上に筋肉もないが、問題なく動作してる」


 身体を調べられた一体は、もじもじと奇妙な動きで距離を取る。


「ん? アンデッドにも羞恥心が……?」


「アニキィ! 当然ですぜ。死んだって、心はありまさぁ」


「そこだ」


 こちらの発言の意図が読めず、骸骨たちが固まるが、それを横目に、這い出て来た穴を覗き込み、穴の状態を確かめた。


「お前たち。全員、意識に、感情らしきものがあるんだな?」


「へ、へえ。そりゃ、そうでしょう」


「妙なんだよな……。ネクロマンサーにとって、使役する死者は、心など持たない道具の方が扱いやすいはずだ」


「そ、そんな薄情な」


 掘り出した湿った土の壁面を指でなぞり、状態を調べると、独特な土臭い匂いがした。


「それが普通だよ。自分の仕事の補佐官、他のアンデッドを統率する立場の一体、そういった対象に、心を与えれば、いちいち命令する手間が省けるだろうが、そうでなければ、心なんてない方がいい」


「一方的に与えられた命令を、文句も言わず、命も顧みず実行するような、一般的に求められるのは、そういう便利な道具であって、心を持ったアンデッドを生み出しても、気味悪がられるだけさ。どちらにしろ、人間に受け入れられはしないだろうが……」


「そ、そういうもんですかね……」


「やっぱ、オマエは特殊だな。クソチビ」


 土塗れになった指先を払い、他の穴も検分する。


「お前たちの墓、荒らされた跡があるな」


「な、何じゃと!?」


「最初に骨だけが露出した時から、妙だと思っていたんだ。でも、簡単に掘れたのも、草が根を張ってなかったからさ。……つまり、最近誰かが掘り返して、墓を暴き、棺も開けて、骨を取り出し、また綺麗にそろえて土をかけなおした」


 その場の誰も、答えは返さず、黙りこくる。


「元……盗賊だろ? 処刑された理由は――」


「そうだ!」


 頭に浮かんだ疑問の答えを探し、骸骨に迫り、目を近づける。


「不躾になんです!? 隊長!」


 頸椎に……切れ目が!


「やっぱりそうだ。お前たちの首、あまりにも滑らかに、人体みたいな動きな上に、元から浮いていたから、見落とした。……でも、それぞれ場所に多少のズレはあるが、頸椎の一部が損傷している」


「そ、そりゃ、まさか」


「ああ。刃物で切断された、人為的な傷の痕だな」


「あっしらは、打ち首で死んだって事ですかい?」


「何時の時代かまでは分からないが、恐らくそうだろうな」


「そ、そんな! 盗賊とはいえ、同じ人間になんて仕打ちだぁ!」


 他にも傷がないか探すと、生前に受けた傷が、骨にまで達した箇所が幾つか見られた。


「お前たち。ただの盗賊だったんだよな? その記憶は確かか?」


「へ、へえ。間違いありやせん。在りし日のアジトの光景が、今でも脳裏にありありと浮かびまさぁ」


「……それにしては、人の武器でつけられたと思しき傷が多い。まるで――」


「戦にでも駆り出されたみたいだ」


 一体の顎が、カタカタと音を立て、笑っているのが分かった。


「そりゃ、ありやせんぜ。隊長! 自分たちより弱い者だけを狙う、気楽な盗賊稼業でさぁ!」


「……となると、死後にアンデッドとして、従軍した可能性も出て来るな」


「断じて誓いやすが、殺しもほとんどやってやせんぜ! ぜ、ゼロとは言えやせんが」


「そういう事を聞いてるんじゃないさ」


 他の穴も、出てきやすく用意されたように、土は草の根も張らず、締まってもいなかった。程よく空気の入り込んだ。まるで何かの巣の様だ。


「何故、荒らされた……? 副葬品も、あの木箱以外は、何もない。罪人が埋葬されたと分かる場所に、金品目的で暴きはしないだろう……」


 副葬品……?


「そうか! あの剣とお守りだ!」


 最初の穴に戻り、墓の上に乗せていた箱から剣を取り出し、光にかざす。


「そいつぁ。何ですかい?」


「覚えはないか……?」


「へえ、まったく」


 手首を捻り、剣の角度を変え、全員に見せる。


「お前たちの中に、金属や、武器の目利きはいないか?」


「へ、へへへ! アニキィ! 冗談が過ぎやすぜ。あっしらは、ただの盗賊。そんな目利きなんて――」


「いないと困るだろ? 全員が、物の価値が分からないのでは、略奪品の処分に困る」


「へ? そ、そりゃ理想論ですぜ。アニキ。……あっしらみたいな、弱小の盗賊に、そんな仲間は普通いやせんて」


 ふむ。確かに一理ある。考えすぎか……?


「こっちの木彫りのお守りに覚えは?」


 掌に載せたそれを、良く見えるように突き出す。


「――これ。見た事ありやす」


「本当か!? 何処で見たんだ?」


「へ、へえ。よくある魔除けでさ。……よく見てくだせえ、フクロウかミミズクか、そういう鳥に見えやせんか?」


 一部を摘まみ、目を近づけてよく見てみると、最初は何かも分からなかったそれが、確かにフクロウのように見えてくる。


「……ここの小さなふたつの穴が目で、張り出した頭部の羽毛か。繊細すぎて、気付かなかったな」


「両目が前に向いて、前方の空間を睨む様な形でしょう? それが、玄関の軒先や、身に着けた時に、悪霊を払うって言われてまさぁ」


「お前。盗賊にしては詳しいな」


「そりゃ、そうですぜ。俺らも、生まれた時から賊だった訳じゃありやせん。郷土での平穏な暮らしの記憶も――」


 思わず、その一体の両肩を掴んでいた。


「それだよ! その記憶を、出来るだけ引っ張り出すんだ!」


「へ、へえ? そうは言われやしても……、今のは、たまたまというか。一般論でさ」


「はあ。要領を得ないな」


「すいやせん」


 そこで、意外にも世界樹に問いかけられた。


「おい。何か忘れてねえか、クソチビ? そもそも、ソイツラの墓。古い地面から出て来たんじゃねえのか?」


「そうだった!」


 もう一度、最初に掘った場所を調べ、立ち上がり、宣言する。


「とりあえずの方針が決まったぞ!」


「へ、へい。アニキ! あっしらは、これからどう動くんでさ?」


 全員によく見える様に、一歩下がり、憑いている大地の穴を指す。


「まずは、この大地について説明しないとダメだろうが、それは後だ。ここを掘れる限り掘るぞ! 目ぼしい物が何も出なくなるまでな!」


 その言葉を、全員が噛みしめる中、もう一度、穴に目をやり、改めて奇妙さを実感する――。

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