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狐さんと行く歴史探索  作者: 貝石箱
中二、最強説ホラー

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47/48

47.島根合宿、二日目――夜。儀式への道のり


 旅館に戻り、準備を整えた僕たちは、旅館のさらに奥の急斜面を登っていた。

 儀式を執り行う、かつて『異形の力』を封印した「山の深淵」と呼ばれる場所へは、山道を何時間も歩き続けなければ辿り着けないという。

 先頭を行く尼子先生と、尼子老人の二人は、方位磁石も使わずに立っている木だけを目印に進んでいる。

 そんな二人の後を、「よく迷わないな」と感心しながら、僕は、先ほどの尼子先生との話の内容を思い返していた。


 あの後、狐さんが『我も、あのような者共が地上に這い出るなど、本意ではない』と、儀式への協力を了承してくれた事を話すと、尼子先生は「よしっ!これで儀式を成功させることができる」と意気込んでいた。


 だが、儀式を成功させる為の鍵は、もう一つあるのだ。

 それは、僕が、毛利さんに『妙玖(みょうきゅう)』さんを降ろすのを成功させることだ。

 尼子先生は、毛利から狐の守護が失われた理由についてこう話してくれた。


 その昔、吉川(きっかわ)の娘 (後の妙玖さん)が毛利家 (毛利元就さん)に嫁ぐときに、狐を連れて行ったのだそうだ。

 狐は、元就と生まれてきた三人の子供を守護し、さらには、その子供ら(輝元さんとか)にまで守護はおよんだ。

 しかし、毛利家から妙玖さんの血が失われるのと同時に、狐も姿を消したのだという。

 現代まで残る毛利の血筋は、後妻 (側室)の子である、四男、毛利元清の血統らしい。


 血は繋がっていないとはいえ、妙玖さんは過去に一度、毛利さんに降りてきているので不可能ではないだろう。過去に降りてきた理由が、死して尚、毛利家の子孫を護ってくれようとしているのだとすれば、充分に可能性はある。

 たが、僕が狙って降ろせるかどうかは、話は別だ。

 空気を読んで、降りてきてくれれば良いのだが…。

 後は、儀式でのぶっつけ本番。運を天に任せるしかない。


 尼子先生は、僕(実際は狐さん)が、『神降ろし』が出来ることや、僕たちの周りで起こっている色々な事を、以前から毛利さんに聞いていたらしい。その中で、毛利さんに妙玖さんが降りたと聞いた時、光明が差したという。

 そして、僕の中の狐さんのことは、毛利さんには話していないという。「時が来たら自分で話せ」と言われてしまった。


 ……時が来たらって言ってもなぁ。


 以前のように、「まだ、誰にも知られていない」と思っていた頃とは状況が違うのだ。身近な存在である、顧問の尼子先生が知ってて、共に数々の困難を乗り越えてきた仲間で、部員のメンバーのみんなが知らないのは、みんなを裏切っているような気がしてならない。


 そろそろ、みんなにも話さなきゃだよなぁ……う~ん。


「山田くん? なんか、難しい顔してるようだけど……大丈夫?」


 住吉さんが僕の顔を覗き込む。急に話しかけられて驚いている僕に、それ以上は何も言わず、彼女はそっと水筒を差し出してくれた。

 本当は、まだ入院中の咲さんの事が心配で仕方ないはずなのに、合宿に参加してくれて、今こうしてメンバーへの気遣いもできる住吉さんが、普通にすごいなと思った。


「ありがとう。ちょっと、この後の儀式の事を考えてて……ねぇ、住吉さんは怖くないの?」

「怖いよ。でも……あっちの世界の時だってそうだけど、いつも山田君や、みんなに助けられてばかりだから、私も頑張らなきゃって思ったんだ」


「う~ん、あっちの世界の住吉さん、すごく頑張ってるように見えたけど……?」


「……そ、そうかな?」


「そうだよ。巫女の舞だっけ?あの舞を舞っている時の住吉さん、とても素敵だったよ」

「あの時は一生懸命で全然気づかなかったけど、見られてたって思うと、ちょっぴり恥ずかしいかなぁ……でもね、あの舞だけは、ちょっと自信あるんだ。まだ幼い時の私が、咲ちゃんに教わった舞なんだよ」


 十年間、ずっと『異界』に捕らわれの身だった咲さんと、母親を奪われ続けていた住吉さんのことを思い、切ない気持ちになる項なのだった。




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