表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狐さんと行く歴史探索  作者: 貝石箱
中二、最強説ホラー

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/43

41.八剣祭祀⑥ーー終幕。


 そこには、尻餅をついたまま、わなわなと震える庄屋の息子がいた。

 自分の最高傑作だった化物を、物欲まみれの謎の新技で消し飛ばされたのだ。ショックじゃないはずがない。


「……ふ、ふざけるな! なにが、陣羽織だっ!!」


 男の瞳から、スッと光が消える。

 同時に、地面に溜まっていた「黒い水」の残滓が、生き物のように男の体に吸い込まれ始めた。

 男の皮膚が、みるみるうちに黒く変色していく。

 人の形を保つことを捨て、街全体の「悪意」そのものと同化しようとしているみたいだ。

 土手の向こう、街のあちこちから「ドクン、ドクン」と不気味な心音が響き始めた。

 川の底から、今までとは比べ物にならないほど濃い、漆黒の「何か」が這り出してくる。



 その時、住吉パパの吹く笛の音色が変わった。


 そろそろ終幕が近いようだ。

 住吉さんの巫女の舞がよりいっそう激しさを増し、高く澄んだ笛の音と、地を震わせる太鼓の連打が響き渡る。

 そして、僕達の視界に飛び込んできたのは、住吉パパが複数の楽器を器用に操っている姿だった。


 笛が、ひときわ鋭い音を奏でると、続いてパパの叫びが周囲に響く。


「今だ! 八剣を、澱みの中心へ投げ込め!」


 きた! パパの合図だ。だけど、今、川の方ではなく、澱みの中心と言ったか?

 僕は思わず、澄んだままの川面と、街から流れてくる黒い水を見比べた。

 まぁ、何か原因があるとすれば、あっち側としか思えないもんな。


 僕達は、協力して土手の上に転がっている八本の刀を集めると、庄屋の息子がいる方へと投げ込んだ。


 八本の刀は放物線を描き、庄屋の息子が立っている真っ黒な水溜まりへと次々に突き刺さる。

 同時に、周囲を衝撃波が襲う。ただの鉄の塊のはずなのに、『八剣』と『祭祀』の力が共鳴したのか、八本の刀から眩い光が溢れ出した。

 ドロドロとした黒い泥水が、その光に触れた端からシュアァァ……と音を立てて透き通った「真水」へと浄化されていく。


 そして、僕たちの背後の空間が陽炎のように揺らぎ、そこにあるはずのない、巨大で荘厳な「光の鳥居」が姿を現した。

 毛利さんが感嘆の声を漏らした瞬間、浄化された水面が大きく盛り上がり、神様が遣わしたであろう、十メートルはあろうかという「巨大な錦鯉」がバシャァァッ!と跳ね上がった。


「うわぁぁっ!? な、なんで僕が乗ってるのー!?」


 気がつけば、僕はなぜかその巨大な鯉の背中に、ロデオのように跨っていた。

 鯉の鱗は黄金色に輝き、その背中からは温かな、けれど圧倒的な神気が溢れている。


「山田! そのまま突っ込め!!」


 熊谷君の叫びを背に、巨大鯉は空を駆けるように、黒い怨念の塊と化した庄屋の息子へ向かって突進を開始する。


「う、うおおぉぉぉっ! 陣羽織も堪能したし、新技も出したし、こうなったらヤケだ! 喰らえぇぇっ!!」


 黄金の鯉と一体化した僕の突撃が、男の胸中にある「澱みの核」を真っ向から貫く。

 黒い悪意が霧散し、光が弾けた。


 崩れ落ちる男の背後に、空間がパリンと音を立てるようにしてひび割れて行き、現実世界へと続く光り輝く『帰還ゲート』が現れ始める。


「……ふぅ。なんとか、なった……?」


 消えゆく巨大鯉の背から、ふらふらとゲートの前に着地すると、みんなも集まってくる。あれに飛び込めば帰れる。しばらく、みんなで勝利を喜んだ後、ゲートをくぐっていると、ふいに住吉さんが足を止めた。


(さち)、待って……」

「お姉ちゃん、置いて行かないで……」


 ……えっと、この世界での住吉さんの知り合いかな?


「咲ちゃん…………と、あれ? 山田君、妹の名前なんだっけ?」

「何、わからない事言ってんの? あっ、ゲート消えそう。住吉さん、もう帰るよ!」


 僕は、住吉さんの手を取ると、光の中へと飛び込んだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ