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狐さんと行く歴史探索  作者: 貝石箱
中二、最強説ホラー

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39/43

39.八剣祭祀⓸


 ハナコモードの全開の身体能力で、僕は土手の斜面を滑るように駆け下りる。

 最初の一体——黒い水で形成された侍が、虚ろな眼差しで刀を振り上げた瞬間、僕はその懐へと飛び込んだ。


「邪魔は、させない!」


 瞬間、僕の拳が侍の胴体を貫く。

 手応えはない。まるで冷たい泥水に腕を突っ込んだような感覚だ。

 けれど、黒い侍の体は、僕の腕が触れている個所から色を失っていくと、形を失い、バシャッ!っと、ただの水へと還っていった。

 おそらく、狐さんが黒いやつをどうにかしてくれたのだろう。


「狐さん、ありがとう」

『なに、取るに足らん。それより、今はまだ集中を切らすな!』


 最初の奴の後ろにいた三体の侍が、同時に振るってきた刀を後ろに飛んで躱すと、土手の斜面にそれぞれ刀傷が出来る。それも、かなり深い。水の刀には、ちゃんと武器としての殺傷力が備わっているらしい。

 そして、侍の追撃が来る前に間に割って入ったのは、熊谷君だ。

 大太刀を横に振るい、侍三体を同時に切り崩す。形を失い、バシャ、バシャ、バシャと、ただの水へと還る。

 太刀に宿る力が仕事をしたのだろう。助かった。熊谷君に降りているのは、やはり『熊谷元直』さんのようだ。

 近くで見ると、激しい近接戦闘に耐える「胴丸」をベースにした実戦仕様の『赤糸威あかいとおどし』に、熊谷家の家紋である『鳩に割菱』をあしらった兜を纏った熊谷君が、より頼もしく見える。


 安堵も束の間、庄屋の息子の周囲には、十体、二十体と、際限なく黒い侍が増殖していた。


「…無駄だ! この水はこの地の(よど)みそのものなのだ! いくら消そうと、街からいくらでも溢れてくる」


 その言葉に応じるように、街から流れてくる黒い水の勢いが増してくる。


 これは、……庄屋の息子を叩くしかないか?


 熊谷君も同じ考えなのだろう。正面の土手を登ってくる侍を切り伏せながら、こちらを伺う熊谷君。対して僕はただ黙って首を左右に振る。


 だって、侍たちをの中を突っ切って庄屋の息子のもとへ行くなんて、無謀すぎでしょ。だからといって、みんなで祭壇を守るのも違う気がする。こちらが数体倒す間に、十体、二十体と増殖する相手に対し守りに入るという事はジリ貧でしかない。


 ……なんだろう。きっと、打開策があるはずなんだけど、なにか忘れているような……?


「二人共、下がってッ!!」


 後方から、毛利さんの声と共に空に放たれた煌めく矢の群れが、雨のように降り注ぎ、広域にわたって侍を一掃する。

 矢は、男の頭上にも降り注いだが、男の周囲に水の膜のようなものが出来て全て防がれたようだ。



 あっ、あれは……『黄天鵞絨地桐紋付陣羽織(きびろうどじ きりもんつき じんばおり)』、豊臣秀吉さんが毛利輝元さんに送ったという、最高級の天鵞絨(びろうど)をあしらった豪華な逸品だ。

 とっぼど嬉しいのか、煌びやかな陣羽織を羽織って、だらしない表情を浮かべる毛利さんに、今回、降りてきたのは『毛利輝元』さんのようだ。広島城が近くにあるからだろうか、知らないけど。

 妙玖(みょうきゅう)さんも良いけど、こっちはこっちで良いナァ~~僕も後で、羽織らせてもらえないかナァ~~。


 ……おっと、いけない。今はまだ戦闘中だった。気を引き締めねば!


 作り出すそばから侍を水へと還す毛利さんの矢の雨に対し、男は侍の生成を諦めたようだ。


「……糞っ、小癪(こしゃく)なっ!」


 男は再び呪文を唱えると、今度は男の前に巨大な渦が出来、そこから身の丈五メートルほどの巨大な鎧の化物が現れた。六本ある腕には全て刀が握られている。


「……山田ッ! 行けるか!?」


 熊谷君の合図とともに、僕と熊谷君は鎧の化物に向かって地面を蹴った。


 そのままの勢いで僕の拳が胴を貫通するも、やはり手応えはない。得意な敏捷性を生かして化物の刀の攻撃を躱しつつ何度も拳を叩きこむが効いてないようだ。

 熊谷君の方も、攻撃を刀で弾きながら何度も切って、ボディはすでに色を失っているが怪物は姿を保ったままだ。


「山田、アレを見て見ろ」


 見ると、怪物のボディの中心辺りに真っ黒い丸い塊がある。アレがこの怪物の『核』なのだろうか。

 僕は、怪物のボディに拳を差し込み、腕を肩まで突っ込んでみるが、全然核まで届きそうにない。


 そのうち、僕の体が怪物の中へと呑み込まれていくと…………


「…ぐ、ぐるじい……おぼれるぅぅ……」


 体が抜けなくなった。マズイ、死ぬぅ…………熊谷君に両足を持って引っ張り出されて、ようやく生還することが出来た。


「熊懐君ありがと。それと、この水マズイから飲まない方がいいよ」

「いいから早く立てッ! 一旦、引くぞッ!」


 僕達が下がると同時に、毛利さんの矢の雨が怪物に降り注ぐ。

 だが、核までは届かないようだ。



「やっと、私の出番が来たようネッ!」


 武田さんの声と共に後方から放たれた漆黒の矢が、鎧の化物を貫通して『核』を貫き――バシャアアアッ!と、ただの水へと還っていく。


 あれは、全体を黒漆で塗り固めた、重厚で威圧感のある具足。それに強弓まで漆黒という暴力的なまでの威圧感は、かつて『魔王』とまで比喩されていたという、今回、武田さんに降りてきたのは『武田光和』さんで間違いないだろう。それにしても、人並み外れた「怪力」と「体格」を持つ光和さんは、熊谷君にこそ似合うと思うんだが……。



 一方、生み出した怪物までことごとく倒され、男は相当お(かんむり)のようだ。


「おのれぇ、よくも私の計画を!……貴様らは、一体、なんだのだっ!」


 うんうん、分かるよ。僕も思ったもん。普通はさ、黒い水の侍の時点で対処しきれなくなって詰んじゃうんだよね。だけどさ、狐さんの『神降ろし』の能力に、それを見事に使いこなしちゃう歴史探索部のみんな、おまいら頼もし過ぎかよ!ってネ。


 だが、庄屋の息子は、ここではまだ諦めなかった。再び呪文を唱えると、足元の黒い水が盛り上がっていき、今度はさらに巨大な巨人の姿へと変わる。


 僕達もまた前へ出ると、熊谷君と共に攻撃を仕掛けていく。

 今度は先程とは打って変わって、攻撃しても即座に黒い水へと戻っていく感じだ。


 ……これは、一体どうゆう…………あっ、そうか!


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