38.八剣祭祀③
祭祀を執り行うのは、神社関係者である住吉親子の二人だ。
祭祀は、400年前当時に行われたものを、忠実に再現する必要はないとの事で、今回はオリジナルな祭祀を執り行う。
八剣も地中に埋めるでもなく、地面に転がったままだ。
住吉パパの合図で、川に投げ込む手筈になっている。
……えっ、刀を川に投げ込んで大丈夫なの?って言及されそうだけど、そもそも、ここは住吉さんの夢の中の世界なので、環境問題とか気にする必要もない。
目的はあくまで住吉さんを連れ、皆で元の世界に戻る事なのだ。
狐さんがこちら側に来たことで、現実世界の、あまり丈夫ではない僕の体の事も気になる。
変わらず、狐さんに護られているのか?……とか、
お腹、冷やしてないかな?……とか、
……心配だ。とっとと祭祀を済ませて現実世界に帰ろう!
僕を含めた他のメンバーは、邪魔にならないよう周囲の警戒にあたり、僕も、すぐに動けるように、ハナコモードのまま待機。
静寂の最中、八剣祭祀が開始される。
祝詞をあげる、住吉さんの澄んだ声が周囲に響き渡る。
まず、一般的な祝詞を一通り唱え、続けて特別な祝詞を唱える。
そして、住吉さんが足を一歩踏み出すと、同時に笛の音色が鳴り響き、巫女の舞が始まる。
音色を奏でるのは、福島正則さん扮する住吉パパだ。
なかなか、シュールな姿である。
舞を舞う住吉さんも、巫女装束は用意できなかったので白装束姿なのだが、まぁ、こっちは似合ってるからいいか。
「ねぇ、なんか街の方から黒い水が流れて来てるんだけど……」
周囲を警戒していた武田さんの声で、皆が土手の下を覗き込む。
見ると、土手の下の道は『黒い水』に浸かっていた。
いつの間に浸水したんだと川の水位を確認しに行くも、川は通常時の水位のままだった。水も澄んだ透明で『黒い水』などではない。
では、あの『黒い水』は一体…………水は、河川の浸水ではなく、武田さんの言う様に街の方から流れて来ているようだ。
「……てか、黒い水ってなんだよっ!」
住吉親子の祭祀の邪魔をしてはいけないのは重々承知してるが、思わず大きな声でツッコんでしまった。
「貴様等ッ! 誰の許可を得て、このような事をしておるのだ!?」
祭祀の事を言っているのだろう。そこには、足首まで黒い水に浸かった30代くらいの男が立っていた。
ちなみに、僕達は土手の上にいるので水に浸かる心配はない。
そして、登場の仕方からして、この男が祭祀前の打ち合わせで話題にあがった『庄屋の息子』という奴なのだろう。
男の言葉に、皆が住吉パパの方を指さすと、その方向を見た男が驚愕の表情を見せた。
……どうだ、参ったか。こっちは福島正則の許可を得ているのだ。文句はなかろう。
「ぉ、おのれぇ、小癪なっ!」
そう言うと、男は、何やらブツブツと呪文のようなものを唱え始める。
ボコッと、男の前の水が浮き上がり人の形を成していくと、刀を持った侍へと変わって行く。
最初の一体がこちらへ向かって歩きはじめると、再び男の前でボコッ、ボコッ、ボコッと次々黒い水の侍が生まれていく。
水で作り出された侍と、まともに戦えるか分からないが、住吉さんの舞を邪魔させるわけにはいかない。
僕は、周囲の仲間3人に同時に『神降ろし』をすると、土手を登ろうとしている最初の一体目をめがけて地面を蹴った。
今回、少し短いですが、1か月ぶりに再開しました。
というか、夜更かしして書いてたんですが、5:30の投稿に間に合いませんでした><




