小話4 水羊羹のお返し
6月半ば、突然のインターホンに耀はどきりとした。
開けてみれば、大家の徳田トメがちょこんと立っていた。耀はトメを居間に案内した。
「トメさん、お久しぶりです。見ない間に随分小さくなりましたね」
「は?この前あったばっかりだろが」
耀の言葉にトメは耳を疑った。前回会ってからはまだ
2ヶ月も経っていないのに、と。
「あ、、、そうでしたっけ、あはは」
耀は瞬時に悟り、話を合わせることにした。そうか、記憶喪失の時に会っていたのか、と。
「で、耀。二人で住むことにしたんか?」
「はい?!何の話です?」
「だから、この前の、ほら、あの子!なんて言ったかな、ほら!」
トメは相手の名前を思い出せないでいた。男の子っぽい名前だとは思っていたけれど、そこまでしか記憶にない。
「あぁ、恋人とは別れたんですよ。万が一誰かと同棲することになったらすぐ言いますって!」
「そうか、、、。ほら、これでも食って元気出せ」
トメは詮索をやめ、差し入れを手渡した。近所の洋菓子店の人気商品であるプリンだった。
「ありがとうございます」
耀は笑顔でプリンを受け取った。
「どうせなら一緒に食べましょう?」
耀は受け取った2つのうち1つをトメに渡した。
耀は近所のこのプリンが大好きだった。これより美味しいプリンは食べたことがないと思うくらいに。
「「いただきまーす!」」
"あれ、、、"
「美味いな。お前、ここのプリン好きだっただろ?」
「え、ええ」
トオルはトメの言葉に合わせた。
美味しいには美味しい。
でも、何かが足りない。
耀は疑問に思いながら、プリンを食べ進めた。
結局何かはよくわからなかった。




