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君はラストヒーロー  作者: 月 影丸
2章 耀とトオル
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2話 ルームシェア

そこから、106号改めトオルとの奇妙な共同生活が始まった。


最初は怪我が治るまでということだったけれど、トオルの通信と転送の機能が治らず、ダークムーンと連絡を取ることも、元の場所に帰ることもできなくなってしまったのだ。

トオルが居たのは"常夜(とこよ)"と呼ばれる空間で、戦闘空間のようにこの世界とは交わらない場所にあるのだという。



「このとおりだ!ベマ、どうか戻ってきてくれ!」

俺は目の前のベマに頭を下げた。ベマは家出して2日後、ドールがいなくなったか確認しに戻ってきたのだ。

『嫌です。このドールを追い出さない限りは』

ベマは俺の隣に座るトオルを見やってふんと鼻を鳴らした。鼻はないけれど、そう聞こえるのが興味深いところではある。


「トオルには言い聞かせてる。お前を襲うなって」

『トオル?!名前までつけたのですか?!そもそもドールにそんな約束守れるわけがないでしょうが!』

「トオルといる間は俺が肌身離さず守るから!宝石を補充してもいい」

『ふーん、、、そうですか』

そう、ベマは自身を装飾する宝石に弱い。本人曰く、宝石の力で魔力が増幅するのだとか。

『まぁ、種類にもよりますかね』

「俺のバイト代では高価なやつはちょっと、、、」

以前怒らせてしまったときには、仲直りの証として黒蝶のデザインに合うルビーを所望された。俺のバイト代では、蚊の涙ほどのものしか用意できなかったけれど、それでどうにか許してもらえた。

『はぁ、しょうがないですね。今回はモアサナイトで我慢しましょう』

「あの、ダイヤっぽい、人工ジュエリー?」

モアサナイトは近年注目を集めていた人工ジュエリーであり、値段は手頃であり、ダイヤよりも輝いていると噂だった。ちょうどこの前、通販ショップで紹介されているのを二人で見たところだった。

『そう。アレならばバイト代でどうにかなるでしょう。なんて良心的な取引でしょう』

「うぅ、、、わかった」


こうして、俺はどうにかアーリートワイライトマンに復帰した。


後日談にはなるけれど、アーリートワイライトマンの仮面が少し豪華になったのでは、とワイドショーで取り上げられたりした。



ベマとトオルはわかりあえなかったけれど、互いに手を出さないことを条件として生活することとなった。


が、言い争いは絶えず、時々追いかけっこになってしまう。アパートの二階なので、あまり暴れてほしくないのだけれど、こればかりはどうしようもない。下が空き部屋で本当に助かった。



トオルは家でこちらの世界についての勉強を始めた。共同生活を送り始めてすぐわかったけれど、トオルの知識には偏りがありすぎた。基本的にはアーリートワイライトマンを攻略するための知識しか与えられていないので、俺の好き嫌いや得手不得手については異常に詳しい。そのかわり、いわゆる一般常識と呼ばれるものには疎く、それって何だ?が彼の口癖となっていた。

一つ解せなかったのは、ダークムーンの中で俺は"美人ならばどちらもいける"という認識らしく、106号はいざとなれば"色仕掛け"もできるように造られているらしい。それを聞いて青ざめた。


「怖い。ダークムーンが怖い」

「お前のためだけに造られてるからな。大丈夫、色仕掛けは俺だってやりたくない。ドールにも拒否権があると信じたい。実際はダークムーン様の命令ともなれば逆らえないが」

「野郎は無理。トオルは美人だと思うけどやっぱり無理」

顔は正直好みだった。背の高めの女子だと思えばそうとしか見えないけれど、性的指向は超えられない。超えられたくない。


「そうか!これがソウシソウアイってやつか」

「なんか違うけどな!」

こんなやり取りが、段々と自然にできるようになってきた。それがなんとなく嬉しく感じた。



しばらくはドールの襲撃もなく、試験勉強をしながら人助けをする日々が続いた。家でトオルが待っている、その事実が俺の心に安堵をもたらした。



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