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ジュリアの国王の暗殺未遂 70

 シャインさんと王宮をウロウロして、結構な場所を回った。


「……そろそろ、いいかな」

「では、ノワール様の執務室に戻るんですか?」

「いや。国王の寝所へ行くよ」


 ——うわっ。


「いいんですかね?」

「ん?」


 だって、気後れするよね。

 国王様のお休みになってる場所なんて。


「……私のような者が行っても」


 シャインさんがクスッと笑う。


「君が行かなきゃ話が終わらないよ」

「そうでしょうか?」


 彼は淡い淡いブルーの瞳で優しく私を見つめる。


「心配ない。妖精眼と小鬼が組めば、いい結果が出せる。違うかい?」


 ——そうかな。

 そうかもしれないな。

 シャインさんが側に居てくれるんだものね。


「そう……ですよね。はい。行きましょう!」

「それでこそ、僕のジュリアだね」


 彼はクルッと周りを確認して、私の黄色い色付き眼鏡を外すと、ふわっと唇を合わせた。


「!!!!」


 悪戯そうに笑った彼は、小さくウィンクする。


「少年仕様のジュリアなんか、滅多に拝めないだろ? 我慢してたんだからね。ちょっと、充電させてもらう」

「シャ、シャ、シャインさん!」

「しー。騒ぐと人が来ちゃうよ」


 もう一度、甘い吐息が吹き込まれると私の方がクラクラする。

 シャインさんに少年趣味があるとか、いらない疑惑が生まれても知らないからね。


 唇を離した彼は、少し頬を染めて恥ずかしそうに首を竦める。


「……なんか、すごくいいな。今度、僕の部屋で、僕の為にそういう格好してよ」

「すぐ、そう言う——ん、やっ、シャ……ダメ」


 そっと私の耳に唇を寄せて、甘く噛むから、変な声が出ちゃうじゃない。

 彼は少し掠れた小さな声で囁いた。


「約束だよ。夫を喜ばせるのは、妻の務めだからね?」

「こんな所で……そういうの意地悪ですよ」


 私がムクれて彼を見上げると、少し赤くした顔で嬉しそうに笑う。


「知らなかった?」


 ——知ってましたけど。


 これから国王様の寝所に行こうっていうのに。

 私の顔は真っ赤になってるに違いない——。


 ☆


 シャインさんに手を引かれて、重厚な扉を前にすると甘い気分は吹っ飛んで行く。この先に、国の命運を握る国王様が伏せっているんだものね。


「じゃ、行こうか」

「……はい」


 開いた扉の先は、ふかふかで毛足の長い絨毯が敷かれ、大きな天蓋のあるベッドが——って!


 シャインさんが引きつった声を出す。


「ジュリア、僕の後ろに回れ」


 そこには、幽鬼のように虚ろな目でアイアン大公が佇んで居た。


 彼はベッドに横になっている国王様を、感情の無い目で見つめていた。足元には魔法兵と思われる男性が二人、力なく倒れている。


「……アイアン大公」


 シャインさんに名前を呼ばれ、ゆっくり顔を上げた大公は、小さく嗤った。


「遅かったな?」


 走り出したシャインさんは、彼を突き飛ばして国王の首筋に触れる。そのシャインさんに、大公の手がゆっくり伸びてく。私も走り込んで大公を突き飛ばした。


「シャインさんに触らないで!」

「ジュリア!」


 私が睨み付けると、大公は我慢できないと言った風に笑い出す。


「はははははは。触らないで、触らないでか。お前は——スノーと同じことを言う」


 どこか正気を疑いたくなる表情だ。


 ——でも。

 私が触れたんだもの。


 振り返ると、背後でシャインさんが国王様の額に触れて魔法呪文を唱えてるのが見えた。大公が嘲笑うように言う。


「無駄だ、妖精眼。ソイツの心臓は止まった」


 そこにノワール様とルーランが入って来て、ルーランの唸るような声が聞こえる。シャインさんが、ルーランに向かって叫んだ。


「早く来い、ルーラン! まだ間に合う!」


 走り出したルーランを庇うように、ノワール様が私の隣に立つ。


「アイアン大公。国王暗殺未遂の現行犯だ」

「未遂? ソイツは死んだ」


 私は彼を睨みつけて、言葉に力が篭るように祈りながら叫ぶ。


「死んでないわ!」


 大公の顔が悲壮なくらい歪んでゆく。


「死んで無いわ——か。お前は、本当にスノーと同じ言葉ばかり言うな」


 ビックリするくらい素早く動いた大公が、私の首に手をかけて締め上げた。ノワール様が大公の後ろに回って彼を羽交い締めにして私から引き離す。


「観念するんだ」


 ノワール様は上着から黒い鋼を取り出すと、アイアン大公の首に押し付けた。


「捕縛!」


 彼の言葉に反応して、鋼が輪になって大公の首にハマる。


「ジュリア!」

「大丈夫です」


 シャインさんの声に応え、立ち上がった私は——大公の顔を引っ叩いた。


「いい加減にして! ここに、スノー妃はいないわ!」


 大公は少し目を見開いて、初めて私を認識したような顔になる。

 ルーランが泣き出しそうな声を上げた。


「父さん! 鼓動が戻った!」

「ああ。もう少しだ、ルーラン。回復魔法をかけ続けるんだ」


 シャインさんが、ホッとしたようにルーランを励ましてる。

 それから、凄い目で大公を睨んだ。


「絶対に死なせたりしない。お前の望むようにはならない」





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