ジュリアのお休みで充電66
なんだか、最近は慌ただしかったな。
私は早朝の台所で、シャインさんの紅茶を用意しながら息をついた。
アメリアさんから平謝りの手紙が届いてたし。
兄貴からお説教の手紙が届いてた。
ノワール様には外出の注意点と、魔物についての講釈を受けた。
——悪いことバッカりでもないけど。
初めての魔物にあったし。
あんなの、初めて見たよね。
ジンジャーお爺さんとも友達になった。
友達といえば、ルーランが自分の事を話してくれたし。
きっと、勇気がいったと思うんだ。
それでも話してくれた。
その信頼には応えなくちゃいけないよね。
——ルーランの立場を知った以上は、私も気をつけなくちゃ。
私のせいで迷惑がかかったら嫌だもの。
シャインさんのお部屋へ入ると、彼はまだ布団を被って眠っていた。
最近のシャインさんも忙しかったら、本当ならこのまま寝かせておいてあげたいけど。
私はお盆をテーブルに置いて、カーテンを開く。
気がつけば季節は進んでいるもので、庭の木々が赤や黄色に色づき始めてる。
——もう、秋なんだなぁ。
ベッドの側に行って、しゃがんでから彼に声をかけた。
「シャインさん。シャインさん。朝ですよ?」
疲れてるんだよね。
シャインさん、ピクリともしない。
私はそっと彼の頬を突っつく。
瞼がピクって動いた。
——可愛い。
普段のキラキラしいシャインさんも素敵だとは思うけど。
私はこういう無防備な彼を見ると、胸がキュッと熱くなるみたい。
顔にかかってる髪を避けて、頭を撫でながら小さく言う。
「シャインさん。私、シャインさんが大好き」
瞼がまたピクピク動く。
——もしかして、起きてる?
「だからね。寝たふりしないで、起きて下さい」
彼は片目を開けると、私の体を引っ張ってベッドに引きずりこんだ。
「シャ、シャインさん!」
彼は布団の中で私をギュッと抱きしめると、寝起き特有の掠れた声で言った。
「僕もジュリアが大好きだよ」
彼の体温や香りで心拍数が上がってくる。
長い腕がシッカリ私の背に回されて、体がピッタリくっついてて。
「あ、あの、朝ですよ?」
「……分かってるよ。言い忘れてたんだけど、僕は今日、休み」
「!!」
——もう。
それなら、起こしに来なかったのに。
彼は私の髪を撫でながら、背に回した手に力を込める。
「せっかくの休日だし、充電しないとな」
「……充電ですか?」
「そう」
そのまま口づけされて、心臓が飛び出しそうになる。
身を引いたら首と腰をガッシリ掴まれてしまった。
パフュームの混ざらない彼の体臭と、体の熱さと、吐息の甘さで——クラクラする。長い口づけのあと、唇を離した彼は、私を抱いたままで嬉しそうに笑った。
「おはよう」
「お、おはようございます」
「毎朝、こんな感じで起こしてくれると嬉しいんだけどな」
「……無理」
「無理?」
「私、えっと、恥ずかしくて死にそうです」
ククっと笑うシャインさんの息まで顔にかかる。
彼は長い睫毛を軽く伏せて。
「僕の腕の中で死んでくれる?」
そう言って、もう一度、頭の中が痺れるような口づけをした。
どのくらい布団の中で抱きしめられてたんだろ。
やっと解放された時には、お茶が緩くなってしまってた。
「緩くなっちゃった。煎れ直して来ましょうか?」
「そのままで良い。緩いお茶ってのも、たまにはいいさ」
シャインさんは目を細めて窓の外を見つめる。
「今日も天気は良さそうだな」
「そうですね。秋晴れです」
彼は緩いお茶を飲みながら、眠たそうに目を閉じる。
やっぱり、寝かせて置いてあげれば良かった。
「お休みでしたら、二度寝しますか?」
「……いいの? 部屋の掃除できないだろ?」
「いいですよ。シャインさんが起きたら、パパッと掃除します」
「それは助かる」
彼はカップをサイドテーブルに置くと、モゾモゾとベッドへ戻ってく。私はカーテンを締めなおして、茶器をお盆へ乗せた。
「昼頃に起こして」
「分かりました」
シャインさんは、出て行こうとする私を呼び止めて手招きした。
「ジュリア。忘れ物」
「……忘れ物?」
側へ寄った私の頬へ軽くキスした彼は、甘える子供のように笑った。
「おやすみ」
「……おやすみなさいませ」
お盆を再度テーブルに置いて、彼の首までお布団を引っ張る。
私はそのまま、お盆を持って部屋を出た。
なんだか——顔から火がでそうに恥ずかしいな。
でも——。
「ふふ、変な感じ」
胸の中は熱いのに、足元がふわふわする。
——私も充電できたのかな。
評価、ブクマを有難うございます(^ ^)
あと少しだけ続きます。




