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ジュリアの騒つく朝 67 

 いつもの朝ごはんを食べている時、ルーランが意外なことを言った。


「え? マーカーライトさんが、リュカオン殿下の側付きになったの?」


 朝から彼のテンションが下がってる。

 なんだか、だだ下がり。


「ノワールさんがそうしろって言うからさ」

「だって、あのマーカーライトさんだよ?」

「あの、マーカーライトだね」


 ルーランはパンケーキに食いついて少し溜息をつく。


「来月、僕の誕生日があるんだよね」

「え? それは、おめでとう。って、なんでその話し?」

「リュカオンは成人するわけだ」

「そうか。十六歳」

「そう十六歳」


 それが、マーカーライトさんとどう関係するんだろ?

 ルーランはエメラルドの瞳を少し細める。


「国王はリュカオンに王位を譲る気でいる」

「………国王様、そんなに体調悪いの?」


 ルーランが息をついて、目を伏せた。


「……ジュリア。僕にも紅茶を煎れてくれない?」

「え? ああ、分かった。ミルク入れる?」

「入れない。砂糖だけ」


 彼はスクランブルエッグを口に入れ、ホットミルクを飲み干す。


「父さんね、最近は、僕の回復魔法が欠かせないんだ。なんか——変なんだよな」

「……変って?」

「少し元気になってたのに、ここに来て急に体調が悪くなり始めた」


 ルーランは私に話すというより、自分の考えを整理するみたいに話してる。


「シャインさんに見てもらったけど、いろんな魔法の跡が有りすぎてハッキリ特定できないって言われた。本当に病状が進んでるのかもしれないし、他に原因があるのかもしれない。ただね、僕の誕生日が来る前に王弟派の動きがあるんじゃないかって……」


 私は彼の前に紅茶を置き、少し不安を感じてしまう。

 だって、動きって……ルーランの暗殺とか、国王の暗殺とかって話だろうから。


「気をつけてね、ルーラン」


 彼はふっと顔を上げて笑った。


「もちろん。僕は絶対に殺されないし、父さんも殺させたりしない」

「私が役に立つことがあったら、遠慮なく言ってね?」

「頼りにしてる」


 紅茶を飲み干したルーランは、立ち上がって微笑んだ。

 最近になって、彼の身長は私を追い越してしまった。


「ごちそうさま。そろそろ、ノワールさんもシャインさんも出かけるはずだよ? 見送り行かないと」

「ルーランも出かけるんでしょ?」

「マーカーライトが迎えに来たらね」

「……来るんだ」

「そ、僕の側付きだからね」


 マーカーライトさんは、悪い人じゃないと思う。

 どっちかと言えば良い人だろうな。


 でも——なんか、私は敬遠されてるみたいなんだよね。

 それでも、ルーランのことはお願いして置きたいな。


 ☆


 玄関ホールで秋物のコートをシャインさんに着せかけながら聞いてみる。詮索はメイドの仕事じゃないけど、シャインさんの婚約者としてなら聞いたっていいかなって。


「シャインさん。マーカーライトさんが、ルーランの側付きになったんですか?」

「ん? 早耳だね」

「ルーランに聞いたんです」


 彼はコートを着込みながら、軽く眉を上げた。


「ま、アレはアレで役に立つ男なんだよ」

「……お城の状況が不穏なんですか?」


 シャインさんは私の頭に手を乗せて、ポンポンと軽く叩いた。


「ジュリアが心配することはない。兄貴も、僕もついてる。それにね。国王には、支持者が多いんだよ。君が思うほど火急の事態じゃないさ」


 私たちの話を聞いていたんだろう、ノワール様もコートを羽織りながら言った。


「私達を信じて任せて置きなさい」


 ノワール様の瞳は優しい。

 ——そうだよね。この二人が付いててくれるんだもん。


「はい。あの……お二人も、お気をつけて」


 二人は私に向かって同時に微笑んだ。

 パスカルさんがノワール様にカバンを渡す。


「お気をつけて、行ってらっしゃいませ」


 少しして、ルーランを迎えにマーカーライトさんがやって来た。

 私はルーランを見送りに出て、何日ぶりかのマーカーライトさんに会った。


「あれ、君は城へは行かないのか?」


 相変わらず少し皮肉な笑みを浮かべてる。


「私はモンテール家のメイドですので」

「へぇ。シャインの側付きとして一緒に行くのかと思ってたよ」

「いえ……あの、マーカーライトさん」

「何かな?」


 私は深々と頭を下げる。

「ルーランをよろしくお願いします」


 頭を上げると、彼は不思議な笑みを浮かべてた。


「君には大切な人が沢山いるんだね、小鬼ちゃん。いつか、その中に俺も入れてもらいたいもんだ」


 私が首を傾げると、彼は微笑んで請け負った。

「俺が側に付いた以上は、大船に乗った気でいるんだな」


 ルーランが支度を終えて出て来た。マントを羽織ってるんだけど、その下には王太子殿下らしい少し華美な服を着込んでる。もう——ここに居ることを隠す気はないんだな。


 マーカーライトさんがルーランの隣に立って小さく笑った。


「おはようございます、殿下」

「おはよう、マーカーライト」


 送りに出てる私に、ルーランが小さく笑う。


「行って来る」

「行ってらっしゃいませ、お気をつけて」


 私が頭を下げると、マーカーライトさんがルーランの横に立って扉を開いた。


 ——なんだか、気持ちが騒つくなぁ。

 皆んなが無事に一日を終えますように。

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