表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/73

シャインの悪友2 58

 マーカーライトは椅子から少し身を乗り出して僕を見る。


 コイツは昔から綺麗な顔してやがって、性格のひねくれ具合からは想像し難い魅惑的な表情を作るのが得意だ。別に魅了魔法を使ってるわけでもないのにな。


「お前に頼みがあるんだよな」


 こんな顔で頼みごとをされると断り難い。

 だけどな——そのせいで、学生時代にどんだけ面倒事に巻き込まれたか覚えてる。


「お前の頼みはロクな事がない。断る」

「……この絵、いいだろ?」


 マーカーライトは少し皮肉な笑みを口元に浮かべた。


「完成したら、お前にやるよ。お前が望むなら、仮想の裸婦画にしてやってもいいぞ?」


 ——コイツ。


「もう一回、殴られたいのか?」

「まさか」


 僕のことを脅しにかかりやがって。

 要するに、そういう絵を描かれたくなかったら、頼みごとを飲めっていってるんだ。


「シャイン。プルパルって町を知ってるか?」

「……聞いたことならある」

「小さい田舎町でな。そこの教会にジンジャーって神官がいる。もう、爺さんなんだが、婆ちゃんが世話になったんだ」


 ……あぁ。

 祖母絡みの頼みごとなのか。


「マーガレットさんが世話になったのか?」


 マーカーライトは皮肉な笑みを消して、少し寂しそうに笑った。


「ジンジャー神官は、祖母の最後を看取ってくれた人だ。プルパルへ移動する前は、王都の教会に居たんだ。もう歳だけどな」


「お前、そうならそうと先に言え。何もジュリアの絵を引っ張り出して脅さなくても、マーガレットさんが世話になったなら話も聞くのにさ」


 奴は不思議そうに僕を見る。


「脅す? 脅してなんかいないぜ? そういう絵が欲しいかと思っただけだ」

「ふざけんなよ。そういう絵を描くってことは、お前がそういう想像するって事だろうが」


 なんだよ。

 目を丸くするような話か?


「いや。男なら普通に想像するだろ? 仮想なんだし」

「仮想でも許しがたい」


 マーカーライトが弾かれたように笑った。


「はははは、なんだ、お前、初めて彼女が出来た小僧かよ」

「煩いな。嫌なもんは嫌なんだよ」

「分かった。わーかった。勝手に想像しても、口には出さないし、絵にも描かないよ」


 僕が睨むと困った顔で眉を下げた。


「想像するなってのは無理だぜ? 頭が勝手にやることだ」

「そういう目で彼女を見たら殺すからな」

「怖いな」


 奴はヒョイと肩を上げると、庭へ目をやった。


「話を戻すぞ。そのジンジャーさんの様子が変なんだ。心ここに在らずって感じで、ずっとボーッとしてる。それだけじゃない、どんどん痩せてる。実は、彼だけじゃない。プルパルの住人の多くが似たような状態だ。なぁ、お前と小鬼ちゃんで何とかできないか?」


 思わず身を乗り出してしまう。


「僕を呼ぶ前に魔法省へ報告する事案じゃないか」


 綺麗な色の違う二つの目で僕を見た奴は、真顔でフルフルと首を振る。


「ダメだ。背景が分からないウチは、大事にしたくない。プルパルのすぐ近くには、荊の塔がある。誰かが意図的に起こしてる事なら、関連があるかもしれないしな。アイツ——アイアン大公が関わってたら面倒だ」


 荊の塔か。そこは終身刑に処された犯罪者を収容してる場所だ。司法省と神官達が管理していて、塔自体に強固な結果魔法が何重にもかけられている。


 収監された犯罪者には、咎の首輪がはめられる。咎の首輪は一切の魔力を封じる強力な魔道具で、神官長以外に外す事はできない。むろん、作り出すのは神官達だ。


 ケイデンス王国は魔法大国だからな。

 犯罪も魔法絡みが多い。


 確かに荊の塔に大公の手の奴が収監されていないとは限らない。そんな奴を逃すような事態になったら、国王の評判も、司法省や神官達の面子も潰れる。


 だから、マーカライトは警戒しているわけだ。


 もし、万が一、ジュリアが荊の塔の結界を解くなんて事態になったら、毛嫌いしている大公の即位を後押ししかねない。


「ジュリアを連れてかなきゃいいんじゃないか?」

「そういうがな。町全体に及ぶような魔法がかけられてたら、彼女以外に誰が解除できんだよ」

「……時間をかけられるなら、魔法兵団にも能力者はいるが」

「ジンジャー神官は、どんどん痩せてるって言わなかったか? 時間なんか、かけてられない」


 困ったもんだな。

 だが——。


「放置はできないな」

「だろう?」


 僕は真面目にマーカーライトを見る。


「兄貴には報告させてもらう」

「なんでだよ」

「あのな、兄貴は僕の上司で、ジュリアの雇用主だ。休みをもらうにしろ、仕事として行くにしろ、報告しないわけにはいかない」


 首の後ろに腕を回して空を仰いだマーカーライトは、小さな声で文句を言った。


「遠出のついでにバカンスとか、少しは考えてたのにな」

「急いでんのか、遊びたいのかハッキリしろよ」


 奴は面白そうに笑った。


「どっちもに決まってるだろ? じゃなきゃ、こんな手の込んだ呼び出し方はしねぇよ」


 ——頭の痛い男だよな。

ブックマーク(^○^)ありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ