表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/73

ジュリアのアメリアさんの災難4 51

 とりあえず、彼はアメリアさんの後をついてくるという話なので、町中でぶつかってみようという話に落ち着いて、紅茶を堪能してマフィンを平らげ、既成事実を作るための買い物をすることになった。


「先日の顔合わせの時、ナイン家のメイドのリリアに聞いたんですけど」

「最近できた紅茶専門店ね。知ってるわ」

「良かった。好みに合わせたブレンドを作ってくれるらしくて」


 彼女は私の腕をガッツリ掴んで笑った。


「シャイン兵長は紅茶好きですものね」

「ご存知ですか?」

「王宮の貴婦人方には有名ね。コーヒーのノワール様、紅茶のシャイン様って」


 ——ははは。


 アメリアさんに連れられて入った紅茶店は、外出の目的を忘れそうになるくらい素敵だった。微妙に色や香りの異なる茶葉がたくさんあって、私はミルクティーに向く紅茶のブレンドと、フルーティーな紅茶ということで柑橘の香りをつけた紅茶と二種類購入した。


 もう、ほくほく。

 缶もすごく可愛らしいデザインで——。


 アメリアさんも兄と父のために紅茶を買うということで、私は先にお店を出て待ってることにした。店内が混雑していたから。


 そこで、さっき姿を確認した黒ずくめの男性が近寄って来るのに気づいた。


 ——これってチャンス?


 ボンヤリして見えるようにフラッと彼の前に出た。

 案の定ぶつかって。


「大丈夫か?」


 思っていたよりずっと低く、深い声で言われた。


 ——この人、物凄く良い声。


 一瞬、本気でボヤッとしてしまったくらい。


「すみません」


 慌てたふりをして、彼の手に触れると強く握り返される。


 ——え?


「やっと会えたな」

「え?」


 彼はそのまま私を店先から通りに引っ張ってゆく。


「あ、あの! 離して下さい!」

「暴れるな」


 逃げようとする私の腰を捕まえると、そのまま担ぐようにして止めてあった馬車に押し込んだ。


 ——え? え? 何?


 馬車の扉を閉めると、大きな声で御者に言う。


「やってくれ!」

「ちょ、待って、下ろして!」

「ジュリア嬢、落ち着け! 話がしたいだけだ」

「な、なんで私を知って」


 店を飛び出して来たアメリアさんが何か叫んでるのが見えたけど、私を捕まえたままのマーカーライトさんは気にも止めてない。


 馬車はどのくらい走ったんだろう。

 町を離れ、郊外へ向かっているのは確かだ。

 ずっと腰を掴まれてて、すごく居心地悪い。


「離してくれませんか? 逃げませんから」

「どうかな? 信用していいのか?」

「信用して下さい」


 彼は私の腰から手を離すと、黒い眼鏡を取った。

 右目と左目の色が違う。

 薄紫の右目と金に近い茶色の左目。


 ——この人、ルーランも真っ青な美形じゃない。


 量の多い黒髪に、端正な作りの顔、思いの外に肌の色が焼けてる。

 妖精のようなルーランとは対照的だけど、彼は動物的な美しさに溢れてた。


「君がナイン家の小鬼だな?」


 その端正な美形は、少し皮肉な笑みを浮かべて私を見る。


「小鬼じゃありません。ジュリア・フーロラ・ナインです」

「俺はマーカーライト・ホルス・アイアンだ」


 手は離してくれたけど、すぐ隣に座ってて体温を感じるくらい近い。彼からはアメリアさんへのラブレターから香ったものと違う香りがした。もっと焦げたような、強い苦味に薔薇に似た花のような香りが混ざった、複雑な匂いがした。


「どこに行くんですか?」

「俺の住まい」

「……なんで?」

「話がしたいと言っただろ?」

「それで、拉致になるんですか?」

「モンテール家に申し入れたって、却下されるだけだからな」


 この人、私がモンテール家で働いてるのを知ってるんだな。


「それとも、絵のモデルになってもらいたい、とでも言って欲しいか?」

「冗談はやめて下さい。絵のモデルなら、アメリアさんの方が向いてるでしょう」

「そうかな?」

「彼女の方が見栄えがいいですから」


 彼は少し目を細めて、ふーんっと言って私の帽子を取った。


「ちょ、何するんですか!」

「帽子とって、髪を解けば、あんたの方が見栄えする」

「返して下さい。帽子!」

「聞いてたか? 髪を解いてくれ」

「嫌です!」

「俺に解いて欲しいのか?」


 ——なんで、こんな事になってんだろ。


 私はムッとしながら髪を解いた。

 触られるのは嫌だからね。


「いいでしょう? 帽子返して」

「ああ。その方がずっと綺麗だ」


 そう言って、彼は不思議な笑みを浮かべると私の頭に帽子を被せた。





読んでくれる人がいるだけで嬉しいのに、評価もつけてもらうと舞い上がります。ありがとう! 思わず投稿数が増えるという現象に見舞われてしまってます。大丈夫か、私。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ