表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/73

ジュリアの買い物 41

 シャインさんに馬に乗せてもらうのは二回めだ。

 彼は私を前に乗せるんだよね。


 兄貴だと後ろに乗せて、掴まっとけよで終わるけど。

 彼は抱きかかえるようにして、私が落ちないようにしてくれる。


 ——逆に少し緊張しちゃう。


「寒くない?」

「はい」


 シャインさんは、華奢に見えるのに、腕が長いし、胸が広いし。

 相変わらず、柑橘系の良い匂いするし。


 でも、そういうのは見慣れない景色ですっ飛んでしまう。

 馬車の時にも驚いたけど、ミュートは本当に山が近い。

 というか、山を通って町に行く。


 見慣れない木々が鬱蒼と葉を広げてて、鳥の声も近い。

 流れる小川の音も大きい。


「馬車の時みたいに乗り出さないでくれよ」

「分かってます。大人しくしてます」


 すぐ近くで声がするから、少し恥ずかしいかな。

 シャインさんの胸が背中に当たってて、そこだけ体温で暖かかった。


 ☆


 ミュートの町はお店と言っても屋台が主流みたい。

 いろんな物を並べて、テントの下で売っている。


 馬を馬場に預けて、見て回ってると組み木の箱が目に入った。


「可愛いデザインですね」

「ああ、それね。開けるのが少し難しいんだよ」

「そうなんですか?」


 屋台の人に断って一つ試させてもらったけど、決まった色の板を順番に動かしていかないと開かない仕組みになってた。面白い、ルーランのお土産はこれにしようかな。


「ジュリアは欲しい物あるかい?」

「私ですか? ええと、小麦とバター、お砂糖と、香辛料を少しと——」

「いや、そうじゃなくて」

「はい?」

「君のお土産さ」


 私の?

 少し考えたけど。


「特にはないです」

「せっかくミュートに来たのに?」

「面白い物をたくさん見てますから」

「欲がないな。買ってあげるって言ってるのに」


 私は軽く首を竦めた。

 だって、本当に。


「こうしてシャインさんと出かけてるってだけで、十分に思い出になってます」

「……可愛いこと言うね」


 淡い髪を軽く掻き上げたシャインさんは、黒眼鏡のままで小さく笑った。

 

 でも、本当にそうだからね。

 貴婦人達の憧れの人を独り占めしてるんだから。


 普段は考えないようにしてるけど、彼は本当に綺麗な男性なんだし。

 たまに——格好いい感じの時もあるし。


 シャインさんのメイドってだけで、他の人が見られないような彼を見てると思う。


 これ以上は望みすぎよね。

 あんまり欲張ると、あとで痛い目を見そうな気がする。


「私のお土産は、本当にいいですよ。それより、シャインさんは自分の買い物をしなくていいんですか?」

「僕の買い物かぁ。甘い菓子でも買うかな」

「お菓子、いいですね」


 皆んなのお土産はお菓子にしようっと。

 私がパスカルさんやアンジュさん達に、何か珍しいお菓子がないかと探してると。


「ああ、ジュリア。少し離れていいかい?」

「はい」

「すぐ戻るよ。この辺りから動かないでいて」


 シャインさんが何か見つけたらしく、私を置いて歩いて行ってしまった。

 ——誰かにお土産かな?

 私と違ってお城に勤めてるんだしね。


 少しボンヤリしてたら、お店のオジさんが。

「味見してみるかい、お嬢さん」

 と、聞いてくれた。


「いいんですか?」

「いいとも。さあ、どうぞ」


 差し出してくれたのは、ナッツがいっぱい入ってて香辛料の効いたクッキーだった。ここまでスパイシーなのは、王都にはあまり売ってないし、日持ちするって聞いたのでコレを皆んなのお土産に買うことにする。


「クッキーにしたの?」


 シャインさんが戻って来て声をかけてくれる。


「はい。とってもスパイシーで美味しいので」

「お目が高いね。ミュートの定番お菓子だ」

「へぇ、そうなんですか」


 辺境警備隊の宿舎に戻って、買い込んだ物を整理してたら、シャインさんが木箱を持って来た。


「牛乳とか、買ってただろ?」

「はい。ミルクティーに使おうと思って」

「日持ちするようにしてあげるよ」


 彼は木箱に魔法のシジルを書くと、小さな呪文を唱えた。


「ほら、この中だけ気温が下がった」


 シャインさんが開けてくれた箱の中に手を入れたら、本当にヒンヤリしてる。

「すごい!」

 シャインさんが魔法を使うのは初めて見た。


「僕の魔法は兄貴より弱いから、あんまり保たないけどね。二、三日ならいけるんじゃないかな」

「十分ですよ。ありがとうございます」


 私は手袋をして、慎重に冷やしたい物を入れてく。

 直に触っちゃったら、せっかくの魔法が解けちゃうからね。


 シャインさんが嬉しそうに笑った。


「これで僕の好物も食べさせてもらえるね?」

「もちろんです。寄宿舎の方に卵も貰ったので、明日の朝はパンケーキですね」

「ああ。楽しみだ」


 ——そうだよね。


 ここの所、誰かが作ったお料理を手直ししてたけど。

 今晩からは私が作った料理が出せる。


 手始めに何を作ろうかな。

 手持ちの材料で作れるシャインさんの好きなもの。


「今夜は何が食べたいですか?」

「……ジュリア」

「え?」

「君の作る物なら何でも」

「いちばん困るヤツですね」


 パンは時間がかかるから、ミートの包み揚げとかがいいかな。

 デザートは何にしよう。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ