第一節 愛
「ヒタ殿……この後の……ヤマトの行く、道を……妾に……」
「さらば、まずは兵を養いましょう」
「……」
「そのためには内海を渡り、多くの国の王と交わり、これをヤマトに迎えることとなりましょう」
「そのために……そなたは……」
「仰せの通り。既に、キビ国、アワ国の王とは交わりを強めております」
「……」
「次に、黒金を産し、矢剣を拵えましょう」
「イヅモ……じゃな……」
「イヅモはヒタより多くの砂と炭を産します。必ずイヅモをヤマトに迎え、きっと多くの黒金を産することと致しましょう」
「うむ、楽しみじゃ……」
「次は、馬を殖やしましょう」
「馬は……広い牧が……要るのであろう?」
「仰せの通り。されば、馬を殖やすに能う地を探して放ちます。アズマには、鹿の住む地が多いとか。さらば、馬を育てる能う地も多いと存じます」
「うむ……」
「次に、船を作りましょう」
「船……?」
「韓国に攻め入るには、十万の兵が要りましょう。十万の兵には十万の米が要ります。更には、二十万の矢と一万の馬も要るところ。これらを運ぶには三千の船が要りましょう」
「さようか……船が三千とは……まこと、そなたの申す通り……妾は、船のことなど……例え兵を揃えても、船なくば……」
「されば、トモ国やツヌガ国は能く船を作りますゆえ、これと交わります」
「そなたが……ヤマトを離れて……おったは、これらの国と、交わるため……」
「臣が、もう少し早く整えること叶わば、女王にもこれらをお見せできましたが……」
「よい……こうして瞼を閉じると……見えるであろう……トヨが……右手に、黒金の剣を掲げ、馬上からこなたを振り返り……兵を……」
「……」
「何と凛々しい……古の戦の……陽の女神……トヨが……ヒタ殿と……」
「ヒメミコ……」
「トヨが……妾の……父上の……」
******************************
「薬師殿……女王は……」
「ヒタ様、申し訳ありませぬ。某には、もう……薬は差し上げておりますが……」
「ヒタ様、先の韓国での敗戦、少なからず女王にも……」
「そうであろうな、オモカネ……女王はまことお優しき方ゆえ、韓国にて多くの兵を失うたことが……」
「薬師殿、女王はあとどのくらい……」
「申し訳ありませぬ……それも……」
「そうか……ヤマト王が亡くなった時、儂には陽が沈んだように見えた……されどヒメミコが立ち、ヤマトを再び興した……陽はまた昇ったのだ……されど……」
「ヒタ様……陽はまた必ず昇ります……」
「トヨ……ヒメミコ……」
******************************
「お前様……妾は、もぅ、長くはあるまい……」
「ヒメミコ……」
「妾はそなたに、礼を申さねばならぬ……」
「……」
「そなたは、妾に、こぅ、仰せで……あった……」
「うむ……」
「妾の幸せ……妾が道を……妾が選んだ道を……」
「うむ、必ず側におり、お佐けする、と……」
「うん……女王の道……妻の道……そなたは、二つは……選べぬ、と……」
「されど……妾は、まこと、そなたの……幸せで……」
「ヒメミコ……」
「お前……様……トヨの……ヤマトの……」
「うむ……」
「トヨに……侘びねば……父上も、妾に……妾は……父上に……」
「トヨはきっと幸せになるであろう……」
「うん、礼を……申す……」
「トヨ……妾は……母は……そなたを……」
「……」
「お前様……妾、亡き、後……ヤマトを……」
「うむ」
「妾が……女王と……時……おまぇさま……剣を……」
「うむ、覚えておる。ヒタで鍛えし黒金の剣を……」
「王の……証……そなたに……かえす……」
「そなたが、ヤマとの……おぅに……」
「ヒメミコ」
「お前様、おまえさまの……腕に、だかれて……妾……しぁ……」




