表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヤマトのヒメミコ  作者: 勅使河原 俊盛
第三章奪還
PR
23/36

第五節 凱旋

「ヒメミコ様……」

「まこと、ヒメミコ様じゃ!」

「お美しくなられた……」

「ヒメミコ様ぁ~お待ち申し上げておりましたぁ~」

「ヒメミコ様万歳!」

「違うぞ! 今やヤマト女王であらせられるぞ!」

「ヤマト女王万歳!」

「ヒメミコ女王万歳!」


「女王、アサの者どもが女王を万歳と申して迎えております」

「ヒタ殿……まこと、アサの者どもは妾のことを……」

「サガ殿を城から追うにも、きっとアサの兵が力を尽くしてくれたことにありましょう」

「うむ、みなに礼を申さねばのぅ」

「さらば、女王の城に帰りましょうぞ」

「アサの城は三年振りであるか……あの日、ヒタ殿が初めてヒタ国へお連れしてくれた、あの日より……妾は少しは大人になったであろうか?」

「女王は今や誉れ高い女王になられた。お側で見ている臣が申すのであるゆえ、まことにあります」

「三年の間にそなたは妾を揶うのが下手になったようであるのぅ」

「恐れ入ります……」

「ヒタ殿、此度こうして取り戻したアサの城、ただ今より妾は王の座につくが、そなたが妾を導くがよい」

「仰せのままに」


******************************


「ヒタ殿、まことよぅ……」

「ワナ殿、此度は女王の戦に兵を連れて駆けつけてくださり、この通り、礼を申し上げる」

「何の、さすがはヒタ殿、その城を落とす早さよ。儂はすっかり間に合わなかったわい」

「ヒタ殿、こなたは?」

「ワナ国の王、ワナ殿にございます。此度の女王の戦にお力添え頂いた」

「女王、此度の勝ち戦、おめでとうございます」

「ワナ殿、そなたにも礼を」

「恐れながら、ワナ兵は戦には間に合い申しませず……」

「女王、ワナ殿が兵を出したゆえこそ、イト殿は兵を出せず。そうであろう? ワナ殿」

「此度もイト殿はサガ殿に力添えしようとお考えであった由……されど此度はこちらの動きが早く、先に国境に兵を張り付け申したゆえ、イト殿も動けなかったようにあり申す」

「戦に遅れたなどと申すは小さきこと。まこと、ワナ殿は頼りになる王であらせられる」

「ワナ殿、改めてそなたに礼を申す。ところで、妾はかつてそなたに会うたことはあったであろうか」

「さらば、女王がまだ幼きみぎりに、一度ひとたびだけ。されど、お噂に違わず、まことお美しい女王になられ申した」

「どうやらワナ殿も妾を揶うに長けておるようじゃのぅ……」

「いぇ、まことのことにございますれば……」

「女王、こうしてワナ殿も女王の元に駆けつけ申した。改めて女王からお声をおかけ頂きとうございますれば……」

「ワナ殿、此度の力添え、まこと礼を申す。して妾よりそなたに頼みがある。これより後、倭人のため、倭国のため、共に立ちヤマトを支えてくれぬであろうか?」

「臣は先のヤマト王にもお声をお掛け頂きましたが、三年前の戦、王をお佐けすることが叶いませんでした。そのような臣に、女王は改めてお声をお掛け下さり、臣には畏れ多い限りに存じます。されば、これより後は女王の臣として、きっとヤマトをお支え申し上げますゆえ、女王にはどうぞ安んじられよ。ヤマト女王、万歳!」

「ワナ殿、礼を申す。これより後、よろしく頼むぞ」

「はっ、仰せのままに」


「ヒタ様、女王様」

「おぅ、シタハル。何ごとじゃ?」

「戦場にてサガ殿を捕らえましたゆえ、お連れ申した。されど、戦場のことなれば、サガ殿は矢傷を負い、恐れながら既に亡くなられました。されば、まことサガ殿であるか、ヒタ様にお確かめ頂きたく」

「女王?」

「うむ、構わぬ。ここに通すが良い。妾も、まことサガ殿であるか確かめたい」

「さらば、仰せのままに」


「うぅむ……」

「……」

「ワナ殿もお気づきか……」

「……」

「シタハル、この者はサガ殿ではない……」

「何とっ、これは、その……申し訳ございませぬ」

「いや……この者が着けておる甲はまことサガ殿のものである。されど……」

「恐らくこの者は、サガ殿を落とし参らせるため、サガ殿の甲を纏いて身代わりとなり、その隙にサガ殿を逃がしたのであろう。されば、まことのサガ殿はただの兵の成りをして、ただ今はどこぞをさ迷っていることであろう」

「妾はサガ殿を……」

「申し訳ございません。某は……」

「よい、そなたらはサガ殿に会うたことはあるまい? さればそういうことじゃ……」

「ヒタ殿、サガ殿のこと、どのようにいたすであろうか?」

「されば、サガ殿が己が国に戻るのであらば、今頃はタケがこれを堕としていることでありましょう。また、マツラ国やクナ国に隠れるのであらば、いずれにせよこれらの国とはこれから話し合いを行うゆえ、その中で話をつけましょう。恐れながら女王には、サガ殿の命までをもお望みか?」

「いや、妾はサガ殿の命までも望んでおるのではない。ヤマトに障らぬのであらば、妾はサガ殿をも許すであろう」

「よきお考えにあります。されば、仮にサガ殿が隠れておっても怯むことはありますまい。女王がまことヤマトを成せば、道は自ずと固まりましょう」

「ヒタ殿、我らもワナの国境に物見を配し、よぅこれを固めてサガ殿を探すであろう」

「ヒタ殿、ワナ殿、礼を申す。これからもよろしぅ頼む」

「仰せのままに」


******************************


「して、この後はどのようにすればよいであろう?」

「さよう、まずはワナ国の隣のフミ国をヤマトにお迎え申す。フミ殿とは臣も会うたことがありますが、何よりワナ殿とは通じておる由。ワナ殿に遣いを頼めば、フミ殿もヤマトに入りましょう。まずは、ヤマトを容れる王を殖やしましょうぞ」

「うむ……されど、イト殿やマツラ殿は、父上が申しても容れてはくれなんだ。妾が申しても聞いてはくれぬであろう?」

「恐れながら……さればアヤ国と通じることと致しましょう」

「アヤ国……確か、カラ国のさらに向こうにある、とか……?」

「さよう。アヤ国はただ今のところ三つの国に分かれ、相争うております」

「アヤ国も……?」

「さればその内のギと申す国はまさにカラ国の奥にあり、カラ国を攻めつつ、ゴ国、ショク国と争っております」

「されば、妾がカラを攻めるとならば……」

「さよう、ギ国とヤマトでカラ国を挟まば、ギ国は後のカラ国を憂うことなく、前のゴ国、ショク国と争うことが易くなりましょう。ゆえに、ヤマトと結ぶはギ国の利なり、と」

「ヤマトがギ国と結ばば、カラ人と結んでおるマツラ殿も……」

「ヤマトと争うは、ギ国を敵に回すこと。カラ国とギ国……どちらと手を結ぶかは……」

「さすがはヒタ殿、それもこの三年の間に……?」

「されば、ギ国に遣いを送ることと致しましょう。ギ国にはチョウセイと申すものがおり、カラの地にあるギ国の(むら)にあると申す。ナシメと申す者はギ国の言葉が分かりますゆえ、これをチョウセイ殿に遣わすのがよろしかろうと存じます。ナシメには、まことヤマトがギ国と結んでおるという証を持ち帰らせましょう。その証を見せれば、イト国やマツラ国もヤマトを容れざるを得ぬこととなりましょう」

「……」

「また、かの国には古の兵法というものがあると聞き及び申す」

「兵法……?」

「よく兵を率いる道のことにあります。ヤマトもこれを学ばば、戦においても勝ち易かろうか、と。さればナシメにはこれも持ち帰らせましょう」

「うむ、よぅ分かった。さすがはヒタ殿である。三年もの間妾の側を離れておられたゆえ、妾は寂しい想いをしておったが、まことこのような謀をしておったとは……妾はヒタ殿を恨めなくなってしもうた……されど、もし、じゃ……もし妾が妻の道を選んでいたら、そなたの謀はどのようになっていたのであろうのぅ?」

「まことそなたは女王になってからというもの、儂を揶うのがうまくなったものよ……」

「たまにはお前様に仕返しせねば……と、それはよいが、ギ国に使いを送り、戻るのにはどれくらいの月日がかかるのであろうか?」

「ギ国は海のかなたのそのまた先。往くのに二年、向こうで一年、帰りに二年、少のう見積もっても五年はかかるであろう」

「されば、その間は……」

「まずはヤマトの城を築きましょう。アサの地はヤマトのまなかとは言え、守るに難い。それは女王も此度よぅ学ばれたことであろう。されば、も少し山寄りに城を築きましょうぞ」

「うむ。されど妾は争うつもりはないのじゃが……」

「されど、他の国が戦を仕掛けてくることは常に考えておかねばなりますまい。また、まことカラ人と戦するのであらば、逆にカラ国からヤマトに攻め参ることも考えられます。守りは堅いにこしたことはありませぬ」

「そなたの申す通りじゃ」

「それと、イト殿とは常に遣いを交わしておくがよろしいかと。ワナ殿がヤマトに入れば、イト殿はワナ殿とアサの二つをひとときに敵に回すことになりましょう。もちろん、ただ今はイト殿はマツラ殿と通じておるが、マツラ殿が商の利を独り占めせば、イト殿とて面白くはあるまい。ましてやサガ殿が倒れた今、イト殿にとってヤマトと誼を通じておくことは、そう悪いことでもありませぬ」

「なるほど、常に遣いを交わしておけばいきなり戦になる危うさは避けられようし、いざギ国と通じた際には、イト殿もヤマトを容れやすかろう」

「仰せの通り……」

「それからサガ国のこと……」

「何であろう?」

「とりあえずはミヤ殿にこれを治めさせようと考えますが、いかに?」

「構わぬが、なにゆえじゃ」

「アサの城が陥ちた時、アサの城にはサガ殿が入られ申した。しかるにアサの者どもは従わず。されど、ミヤ殿は元はサガ人。サガ人ならばサガ国も治まりましょう」

「うむ、そうであろうな……サガ国のことはそなたの考えに任せる」

「はっ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ