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ヤマトのヒメミコ  作者: 勅使河原 俊盛
第三章奪還
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第二節 初陣

「女王、そろそろ参りますが?」

「うむ、妾は構わぬ。みな、よろしく頼むぞ」

「それでは、女王から兵どもにお声を」

「うむ」

「みなのもの! 妾がヤマトの女王である。みな此度の戦、妾に力を貸してくれること、礼を申す」

「三年前、先の王はみなに力を借りて戦を興したが、哀れサガ殿の卑しい謀の前に斃れた。みなの中にも親や子、友を戦場に亡くした者が多かろう……」

「されど此度は違う。この三年、みなが力を尽くしてくれた。大いに兵を鍛え、黒金を産し、馬を養ってくれた。みなの三年の想いを、その証を、此度こそ必ずサガ殿を打つことにて示そうぞ」

「おぅ」

「みなのもの、此度は妾の初めての戦じゃ。よろしく、頼むぞ」

「おぉ……女王の上を白い鳩が舞っておる。これはよい兆しぞ。みな、心してかかれ!そして、必ずサガ殿を討て。ヤマト女王、万歳!」

「ヤマト女王万歳!」

「ヤマト万歳」

「それでは行くぞ、みなのもの。妾に続けぇぃっ!」


******************************


「ウワハル、よいな?」

「既にミヤとは話しております。ミヤの兵どもは、敢えて汚い成りをし、算を乱してアサへ駆け戻ります。その後から我ら第一隊が、追い討ちをかけるを扮い続きますれば……」

「うむ、それでよい。ミヤの兵と離れすぎてもよくないが、追いつきすぎてもよろしくない。よい頃合を見計らうが要ぞ」

「されば、アサの城におるサガ兵どもは、我らの攻めを受けて逃げおるミヤを援けるべく、城から出て参ることでしょう」

「さよう、城の外に出てきたサガ兵と争うことになろうが、うまくすれば、城のうちにおるアサ兵とこれを挟み撃ちにできるやもしれぬのぅ」

「仰せの通り。三年前のあの挟み撃ち、此度は我らが仕掛けてやりましょうぞ」

「うむ。恐らく敵は、アサを捨ててサガの地に戻るであろうが……」

「その時には、我が第三隊が追い討ちをかけましょう。うまくすれば、敵の縦に伸びた列の横から攻め入る形となりましょうぞ」

「サガ国へ攻め込む際は第一隊と第三隊で行うべし。おそらく敵の数は少のうなっているであろうゆえこれを討つは易かろうが、隙は見せるなよ」

「はっ」

「サガ国での戦はタケが率いるよう。ウワハルもタケに従うて戦うようにの」

「仰せのままに」

「此度の戦は、戦の進むに応じ戦場が次々と変わることであろう。されば戦場を知るが要。そのためにも、みなよく馬兵を用いるべし」

「はっ、必ず」

「では、戦場にて会おうぞ!オモカネ、後を頼む」

「心得ました」


******************************


「それにしても……女王は何とりりしくお美しい。古の戦の女神とは、まことこのようなお姿であったろうのう」

「ヒタ殿は妾が女王になっても妾を揶うおつもりか?」

「いえ、そのような……まことお美しいのは紛うことないのですが……」

「では何じゃ?」

「女王には戦場は始めてのことゆえ、兵の気持ちがお分かりにならないでしょうが……」

「うむ、その通りじゃ」

「戦場とは、いつ己が命が尽きるとも分からぬところ。ゆえに、怯えもしますし、逆に高ぶりも致します」

「そうであろう……」

「されば、よく兵を率いる者は、よく兵の心を支えます」

「心を支える……?」

「何でもよろしいのです。我らは必ず勝つ、そう兵が信ずることのできるものであらば、それが占いであっても、女神であっても……」

「占い……? そう言えば、妾がみなに声を掛けた時に白鳩が舞っておったが……」

「さよう……あれでみなが勝てると思えば、兵も力を出しましょう」

「すると、女神というのも……」

「兵どもが、女王は古の戦の女神の生まれ変わりと信じれば、負けるはずはないと思うでしょう……」

「なるほど、よぅ分かった。謀というのは敵を欺くためのものとばかり思うておったが、見方を欺くこともあるのということか」

「さよう、欺くとは気が引け申すが……この戦に勝たば欺いたことにもなりますまい」

「そうじゃのぅ。兵の心の支え、よろしく頼むぞ」

「はっ」

「みな、よく聞けぇぃ~」

「ヒメミコ様は、ヤマト女王は古の戦の女神の生まれ変わり、天駆ける陽の女神の生まれ変わりよ!」

「それが証に、女王の上には鳩が舞った……」

「おおぉ~」

「先のヤマト王が無くなり、倭国は陽が沈んだように暗くなった。じゃが、三年の喪が明け、陽はまた昇った。新しい女王は、陽の女神の生まれ変わりとして、再び倭国を明るく照らすことであろう」

「おぉおっ!」

「そしてまた、古の戦の女神となり、この戦、必ず我らを勝たせ給うことぞ!」

「おぉっ~」

「みな、怯むなぁ、怯えるなぁ、怯えることなどひとつもない。戦の女神、ヤマト女王は、常に我らとともにある。ともに進もうぞっ!」

「おおぉぅっ!」

「ヤマト女王万歳!」

「女神様万歳!!」

「此度は女神が生まれ変わって初めての戦、ともに女神様をお援けしようぞ!」

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