第八章:寮対抗戦
翌日、怪異研究学園は寮対抗戦の準備で活気に満ちていた。
大正ロマンを思わせる学園の建物や園庭は、各寮の象徴の花々で華やかに彩られている。
朱雀殿の菊、鳳凰殿の薊、青龍殿の桃、麒麟殿の椿、白虎殿の梨、白澤殿の藤、玄武殿の梅、そして獬豸殿の牡丹。
色とりどりの花弁が朝の光を受けて艶やかに輝き、ところどころに吊るされた提灯の柔らかな橙色の光が、幻想的な雰囲気を醸し出していた。
「すごい、綺麗……」
珠紀は思わず呟く。珠紀の今日の格好は、普段の制服や運動着ではない。寮服を着ていた。周囲の生徒たちも皆、寮服を着ている。
朱雀殿は軍服のようなもの、
鳳凰殿はレザーのようなもの、
青龍殿はドレスのようなもの、
麒麟殿はスーツのようなもの、
白虎殿は白衣のようなもの、
白澤殿は和服のようなもの、
玄武殿は貴族服のようなもの。
獬豸殿は巫女服だ。
それぞれ個人でデザインや色が変わっており、個性的だ。
だが朱雀殿はほとんど同じようなデザインで、白澤殿は和服であるが型はバラバラだった。寮の方針によって、デザインの幅が違うようだ。
「寮服って、動きにくくないのかな?」
呟くが、事前の説明によると大丈夫らしい。それに、寮服だと個人の能力が発揮されやすくなるのだそうだ。
瓦屋根の校舎や格子窓の隙間からも穏やかな光がこぼれ落ち、学園全体がまるで絵巻物の中にいるかのような美しさだった。
「……気を引き締めなきゃ」
小さく息を吐き、気合を入れる。
珠紀は獬豸殿の単独寮長として黒牡丹の寮章を胸に付け、監査役の任務に臨んでいた。
対抗戦は「実技戦」と「座学戦」の二本柱で構成され、各寮の知識と実戦能力が試される。
彼女の役割はすべての競技において公平性を保ち、ルール違反や怪道具の不正使用がないかを厳しく監視することだ。
庭園の華やかさとは裏腹に、珠紀の心は緊張で張りつめていた。学園の微妙な均衡を守るという重責が、肩にのしかかっている。それでも珠紀は初めて経験する大イベントに、胸の奥で小さく興奮を覚えていた。
朝の集会に向かいながら、珠紀は周囲の賑わいを眺める。生徒たちが各寮の旗を掲げ、笑い声や掛け声が飛び交い、競技の準備に汗を流す姿。
普段は静かで神秘的な学園が、今日ばかりは祭りのような明るさに包まれている。
「(このまま、何事もなく終わればいいのに……)」
そんな淡い願いを胸に、珠紀は集会の広場へと足を進めた。日常の穏やかさと、わずかな予感を感じさせる朝だった。
珠紀は学園の校庭に向かっていた。
これから、寮対抗戦前の集会が始まる。注意喚起や今日のプログラムなど、連絡事項を桃華が全学園関係者に伝える会だ。
学園は特殊な結界に囲まれているらしく、雨天でも校庭で集会が行える。いつも使う講堂は今は試合会場になるらしく、使えない。校庭も試合会場になるが、広いため問題はないようだ。
学園を覆うこの結界は、話によると弱い怪異達が学園内に紛れ込まないように、あるいは学園内にある怪異達が外に逃げないようにするための役割も担っているそうだ。
学園内にいる怪異達は基本的に大人しく、人に害は与えない。だから、学園外に出てしまうと長くは生きられないという。
それを思うと、なんだか儚い存在のように思えた。
さぁ、と冷たい風が珠紀の頬を撫でる。思わず上を見上げた。
「……いい天気だなぁ」
今日は晴天で、雲一つない綺麗な青空が見えていた。
珠紀も、獬豸殿の寮長として朝の集会に参加する。周囲は明るい雰囲気で、少し高揚感に沸いていた。
しかし、ふとした瞬間――。
「……?」
珠紀は、胸の奥に小さな違和感を覚えた。
寮対抗戦や監査の役割への緊張かと思っていたが、何か違う。どこか、嫌な予感を感じているのだ。
胸に手を充て、珠紀は内心で首を傾げる。どきどき、と少し脈が速い。
手足がじっとりとして、冷えている感覚があった。
遠くの森の木々が、風もないのに不自然にざわめいているように見える。
「(……なんだか、変な感じ)」
周囲の生徒たちはの誰も気づいていない様子で、集会に集まる皆は楽しげに談笑を続けていた。だが、教員たちはどこか気を張り詰めているように感じられる。
数名の生徒たち――例えば、寮長や副寮長たちも、なんだか周囲を警戒している様子で魂鳴具に手を充てていた。
「(……気のせい……じゃない?)」
軽い頭痛が、こめかみのあたりをちくりと刺した。次の瞬間、耳の奥で――
「…………なに?」
狐の鳴き声のような、甘くも不気味な幻聴が一瞬だけ響く。珠紀は思わず立ち止まり、こめかみを軽く押さえた。嫌な予感が、強くなる。
「寝不足かな……昨夜、寮の改修のことで少し考えすぎたせいだ」
自分に言い聞かせるように小さく呟き、珠紀は深呼吸をした。周囲の賑わいが、再び彼女の意識を包み込む。提灯の光も、花々の色も、変わらず美しく輝いている。でも、心のどこかで、小さな棘のような違和感が残っていた。
集会の開始を告げる鐘が、澄んだ音を響かせた。
学園の広い校庭に、全生徒が整然と集まった。
各寮の旗が風に翻り、寮を象徴する色鮮やかな花々が壇上を華やかに飾っている。生徒たちの表情は期待と興奮に満ち、朝の活気が最高潮に達しようとしていた。
珠紀は獬豸殿の代表として、前方の指定場所に立つ。周囲を見回せば、他寮の寮長たちも似たような位置に立っていた。学園長が登壇するだろう壇に背を向け、全校生徒たちを見守るような向きで立っている。
錚々たる寮長たちの中で、自分が浮いていないか珠紀は少し気がかりだった。彼らは堂々と立っており、恰好よく雰囲気がある。とにかく、珠紀は背筋を伸ばして立つ。
副寮長は、他の寮生たちが並ぶ場所の先頭に立っていた。
寮生たちは恐らく、学年順、番号順に並んでいるだろう。
珠紀の所属する獬豸殿は誰も居ないので、順番については体格や服装で推測するしかない。
教員たちは後方、あるいは生徒たちを囲むように立っている。補助員の者たちまで揃っており、彼らは教員たちより外側――どこか所在なさげに立っていた。
学園運営を手伝う怪異たちは人間たちの集合など気にせず、せっせと会場設営の準備や清掃などを行っているようだ。
監査役としての役割を意識し、珠紀は周囲を静かに見回す。何人かの寮生たちが珠紀をちら、と見ていた。きっと珍しいものでも見たような感じなのだろう。
学園長の桃華が壇上に上がり、小柄な体を精一杯伸ばしてマイクを握った。
「では、怪異研究学園第何回目かの寮対抗戦を――」
その瞬間だった。
空が、不自然に暗くなった。
今まで晴れ渡っていた青空が、まるで墨を流したように急速に陰る。灰色の雲が一瞬で広がっていった。
強い風が突然吹き荒れ、校庭の木々が激しくざわめく。提灯の灯りが激しく揺れ、花弁が風に散らされて宙を舞う。
「え……?」
「天気予報では今日は晴れだったのに……」
生徒たちの間に、ざわめきが一気に広がった。
誰かが不安げに空を見上げ、隣の生徒と顔を見合わせる。珠紀も思わず眉を寄せた。先ほど感じた頭痛と狐の幻聴が、過った。
風はさらに強さを増して校舎の瓦屋根を鳴らし、古い校庭の木々が不気味にうねるように枝を揺らした。空気の温度が急に下がった気がして、珠紀は無意識に自分の腕を抱く。
他生徒たちが戸惑う中、上級生や異能持ちの者たちは警戒している様子で周囲を見回していた。
桃華の手が、マイクの上で止まる。
その静寂の直前――
闇の奥から、何かが蠢く気配が、確かにあった。
刹那。
校庭の周囲を包む闇が、まるで生き物のように裂けた。
「――ッ!?」
大量の怪異が、雪崩のように溢れ出した。
妖怪、幽霊、化け物。様々な姿をした異形の群れが、地面を這い、宙を舞い、校庭に雪崩れ込む。狐火を纏った狐の群れ、長い舌を垂らした亡者、巨大な一つ目の鬼、影のように形を変える黒い霧。
「百鬼夜行だ!」
誰かが叫んだ。
百鬼夜行――魑魅魍魎、怪異たちの集団。空想の伝説が、現実となって襲いかかってきた。
「きゃああああっ!?」
「何だこれ!? 怪異の大量発生!?」
「逃げろ!」
生徒たちの悲鳴が、一気に爆発した。校庭は瞬時にパニックの渦に飲み込まれる。
戦闘準備をする者たちが、魂鳴具や怪道具を構えた。しかし、怪異の数は圧倒的だ。
逃げ惑う生徒たちが互いにぶつかり合い、転倒する。寮長や副寮長、教員たちの声が飛ぶが、すでに秩序は崩れ始めている。
「落ち着け! 騒げば怪異たちを刺激する!」
「動ける上級生は後方支援! 張れる者は結界を張れ!」
「無理だ、数が多すぎる!」
魔法のような光が飛び交い、怪異の咆哮と生徒たちの絶叫が周囲に響く。大正ロマンを思わせる美しい風景は、一瞬にして戦場と化した。花弁が怪異の足に踏み散らされ、提灯が倒れて炎を上げ、瓦屋根の上を影のような怪物が駆け回る。
寮長や副寮長たちの指示は、下級生たちになかなか届かない。だが教員たちが下級生たちを集め、怪異たちから守っている姿が見えた。
補助員たちも同様に、生徒たちを守ろうと動いているようだ。
「一体……どういうこと?」
珠紀は立ちすくんだまま、動けないでいた。
心臓が激しく鼓動する。さっきの頭痛と狐の幻聴が、再び頭の中で大きく響いた。
まさか、それはこの前兆だったというのか?
それなら、誰かに言っておくべきだったのか。
思い返せば、教員や寮長、副寮長たちは気を張り詰めていた――それなら、予想できたのではないか?
だというのに集会は始まったし、目に映る皆がこの光景に驚き戸惑っている。戦える者の皆が怪異と戦っている。
学園長はどうなのだろう、と珠紀は振り向こうとした。
だが、できなかった。
怪異の群れが、まるで目的を持ってこちらに向かってきているような――そんな異様な感覚が、珠紀の背筋を凍らせたからだ。
「なんで……私の方に……!?」
周囲は大混乱に陥っている。
戦う者、逃げる者、助けを求める者――全てが入り乱れ、学園の集会の場は一瞬にして地獄絵図と化した。
「危ない!」
声がして、強く腕を引かれる。直後、珠紀が居た場所に怪異が飛び込んできた。
「大丈夫、監査役さん!?」
たしか、白虎殿の2年生の鴨脚都呼だ。
「なんで、急にこんなことに……」
都呼は珠紀の腕を引き、移動を始めた。珠紀もどうにか、足を動かして走り出す。
「とにかく、安全な場所に逃げないと。上級生の手伝いもしたいけど、まだ二年は足手まといだもの」
しかし、珠紀はすぐに異変に気づいた。
怪異たちの多くが、他の生徒たちには目もくれず、明らかに自分に向かって殺到してきている。
「うわっ!?」
「こっちに来るな!」
近くで戦っていた朱雀殿の生徒が炎の壁を作って防ごうとするが、珠紀の周囲に集まる怪異の密度は異常だった。
狐火を纏った複数の狐妖が一直線に飛びかかり、影のような亡者が地面を這って包囲を狭めてくる。
他の生徒への攻撃は比較的散発的なのに対し、珠紀の半径十数メートルだけが、まるで磁石に引き寄せられるように怪異で埋め尽くされていく。
「なんで……私だけ!?」
一つ目の巨鬼が吠えながら腕を振り上げ、襲い掛かる。
珠紀は悲鳴を上げながら後退した。拍子に手が離れ、都呼と逸れてしまった。「大丈夫!?」都呼の声が聞こえ、「大丈夫です! 先に行ってください!」届くように祈りながら、珠紀は叫ぶ。
周囲の人混みや怪異達が酷くて、合流は難しいと感じたからだ。
足がもつれそうになりながらも必死に校庭を横切り、古い石灯籠の陰に身を隠そうとする。背後から鋭い風切り音が迫り、彼女は咄嗟に身を低くしてかわした。肩のすぐ横を、鋭い爪が掠めていく。
心臓が喉から飛び出しそうだった。
頭の中では先ほどの狐の幻聴が繰り返し響き、軽い頭痛が激痛に変わり始めている。
「(どうして……? 私は何かした覚えなんてないのに! 監査役だから? それとも……)」
周囲では他の生徒たちが何とか怪異を撃退したり、味方同士で連携して逃げ延びたりしているのが見えた。しかし珠紀の周りだけは、まるで百鬼夜行の標的が自分一人に集中しているかのようだった。
怪異たちの怪しく光る目が、執拗に彼女だけを捉えている。
恐怖が全身を支配した。はっはっ、と息が浅くなり、上手く呼吸できない。足が震え、視界が狭くなる。
「助けて……誰か!」
叫んだつもりだった。だが、かひゅっ、と空気の鳴る音だけしか出なかったらしい。
珠紀は、さらに逃げる。
美しかった学園の風景は、今や血と火と悲鳴に染まっていた。
怪異たちの声が変わった。
「九尾様の花嫁……!」
「ようやく見つけた……!」
低く、甘く、ねっとりとした声が、次々と珠紀に向かって投げかけられる。
「花嫁よ、こちらへ……」
「我らの元へおいで……九尾様がお待ちだ」
最初は一匹の狐妖だった。次に二匹、三匹……そして人間に近い姿をした怪異たちが、群れの中からゆっくりと浮かび上がるように近づいてくる。
明らかに人間の範疇を超えたような妖艶な美形の男女が、珠紀だけを熱い視線で捉えていた。他、人間の姿をしていない怪異たちも、じ、と珠紀を見つめている。
その姿を見た時、ふと青龍殿寮長の玉藻來未穂を思い出した。彼女を初めて見た時のような違和感を、人型を模した怪異達は纏っていたのだ。
なぜ、と思う間もなく、怪異たちは珠紀に近付いて行く。
「花嫁……怖がらないで。優しく迎えてあげる」
女の姿に見える怪異が、甘く溶けるような声で囁いた。唇の端に浮かぶ微笑みは、まるで恋人を誘うかのようだった。男の姿に見える怪異は、低く笑いながら手を差し伸べる。
「その匂い……九尾様の花嫁の匂いだ。早く、こちらへ来るんだ」
その言葉を聞いた途端、珠紀の全身に鳥肌が立った。
「(……花嫁? 何を言ってるの……!?)」
頭の中で先ほどの幻聴と今の言葉が重なり、激しい動揺が胸を締めつける。拒絶の感情が一気に沸き上がり、吐き気のような嫌悪感がこみ上げてきた。
「やめて……! 近寄らないで!!」
珠紀は声を振り絞って叫びながら、必死に後ずさった。足がもつれ、地面に転びそうになる。心臓の鼓動が耳の中で爆音のように鳴り、視界がぐらぐらと揺れた。
なぜ自分だけ?
なぜ「花嫁」などと呼ばれる?
九尾様とは何なのか――
「来ないで……!」
周囲に近付く怪異達は、どこか興奮した様子で珠紀を見ている。そのことに生理的嫌悪と恐怖が湧きあがってしまう。
無意識に助けを求めてあたりを見回すが、校庭から離れてしまっているからか生徒や教員達の姿は見えない。
みんなは無事だろうか、と一瞬過るがそんな事より自身の身の方が危ない。分かり切っていたが、思考の逃避をしたかった。
怪異に囲まれている現状から、どうやって抜け出せば良いのか全く分からなかったのだ。
理解できない恐怖が、珠紀の理性の糸を容赦なく引きちぎろうとしていた。怪異たちの声はますます甘く、執拗に彼女の名を呼び続け、学園の混乱の中でただ一人、珠紀だけが特別な標的として追い詰められていく。
珠紀は息を切らしながら逃げ惑っていた。足はすでに限界を超え、視界は涙と恐怖でぼやけている。背後から迫る足音と、甘く呼びかける声。必死に振り返らず、ただ前へ前へと走り続けた。
そのとき。
「こっちだよ!」
声がかかった。弾けるように顔を向けると、そこには興津恵水、梅鶯解黎、音雅星露、西宮楓の四人がいた。
「で、でも……怪異達は、私のことを狙って……!」
「大丈夫! こっちには四人もいるんだし!」
戸惑う珠紀に構わず四人は素早く珠紀を物陰へ引き込み、身を低くして周囲を警戒した。
「なんで狙われてるのか分かる?」
「分からない、でも私の事を『九尾様の花嫁』って……」
問う恵水に、珠紀は首を振る。「花嫁かぁ」と恵水は考え込む。
少しして、周囲の怪異の気配が少ないことに珠紀は気付いた。ただ、全く居ないわけではない。
「どうして、怪異たちはこっちに来ないんですかね?」
「ボクが雪女の怪異化の奇病煩いだから、怪異達はボク達に気付きにくいんだよ」
珠紀の疑問に、「多分だけど」と置きつつ解黎は答える。確かには彼はひんやりしている。
だが、周囲では相変わらず怪異たちがうろついていた。人でない影が徘徊し、甘い声で「花嫁……どこだ?」と呼びながら、草むらや建物の隙間を執拗に探している。
時折、気配を察したように足を止めて頭を傾げてこちらを窺う姿もあった。まるで獲物の匂いを追うように、確実に珠紀の痕跡を辿っている。
「……どうして、こんなことに」
「怪異は、人間とは違う理で動いているそうです」
珠樹が思わず呟くと、星露が返した。
「だから。怪異達の興味が偶然、監査役さんに向いただけなんですよ」
「……そう、なんですかね?」
そう言ってもらえると、安心する。
「仮にそうじゃなくても、監査役は困ってるだろ」
周囲を警戒しながら、楓は告げた。銃を構え、いつでも撃てるようにしている。
「つまり、お前が意図的に起こしたわけじゃないってことだ」
「大丈夫だよ、なんとかなるって」
恵水には珠紀の背を優しく撫でながら、周囲を見回した。
「……うん」
珠紀は涙をこぼす。ようやく、感情が追いついてきたようだった。
「よしよし」
背中を優しく撫でられる。珠紀はようやく、息をつくことができた。だが、すぐ近くで怪異の甘い呼び声がまた響く。四人は息を殺し、さらに深く物陰に身を寄せた。
「近くに、先生か三年生がいれば……」
そう星露が呟く。二年生と一年生では頼りない。




