攫われてしまいました。―4
「そうですか。あなたなんかが生きる意味がないですね。」
このまま、苦しませながら殺してしまいたいと思っています。平民は下賤な者なんかじゃありません。私達は平民がいるからこそ成り立っているのです。それに、私達をジーメス・ハンスタンで侍女にしようとするのにも怒っています。
あぁ、私はこんなにも輩を殺したいほど怒っていたのですか。どこか一歩後ろから物事を見ている自分がいます。
「な、何を。やめろ、やめるんだ。僕は公爵子息だぞ。」
あぁ。どんどん氷漬けにされていくのはさすがに怖いですか。眼には私に対する恐怖心が浮かんでいます。ですがやめません。やめるわけがありません。
「直ぐにやめるんだ。そうでなければ彼女を殺そうじゃないか。」
私がやめないと分かったのか公爵はあろうことかシアを人質にしました。そう、シアをです。逆効果ですね。別に誰を人質にしても怒ったでしょうがよりにもよってシアを人質にするなんて私を怒らせるのが上手な輩です。
「そうですか。では公爵の方も生きている意味がないですね。彼女にその穢い手で触れて殺そうとしたのですから。」
そうして公爵もどんどん氷漬けにしていきます。公爵の眼に浮かぶのは恐怖と怒り。この状況で怒るだなんてよほどプライドが高いのでしょうね。
「勝手に攫って挙句の果てに侍女になれと?ふざけないで下さい。」
あぁ。私はどのような顔をしているのでしょうね?ただ、ただ、私達を攫い、シアに変な事をしようとした奴輩に怒りしか感情がないかのように怒っているのです。
「私達はあなた方のお人形じゃないんですよ。イエスマンでもありません。言いなりでもありません。」
《ルルー。どうする?こいつら殺る?》
《いいね。賛成ー。》
《殺っちゃえ、殺っちゃえ。》
《大丈夫ですよ。精霊さんがこのような方に関わる必要がないですから。》
精霊さんも私に同調するように殺すという選択を下さいました。ですが私の可愛い大切な精霊さんがあんな最低な奴輩に関わるだけで私は嫌なのです。気持ちだけ頂いときます。
どんっ。
精霊さんと話してから少し経った今、突然大きな音がしました。音のした方を見てみると部屋の扉が壊されて黒いナイトの服を着たお父様といつもと同じを着たフィル伯父様がいました。二人とも見たこともないくらい怒った顔をしています。
そして後ろから慌ててお父様の側近、リシャールさんが走ってこられます。お父様が周りに迷惑をかけるだなんて珍しいです。それだけ心配してくれたのでしょうか?その事が少しうれしく思いました。
「お、お父様ぁ~。」
「アレナ。無事で良かった。」
アレナは私の事を怖いと思ったのですかね?あぁ、その事が少し怖いです。
「ルル?大丈夫かい?あんな奴ら、もう見なくていいからね。」
「はい。ありがとうございます。」
お父様に抱きしめられたら安心して声を押し殺しながらも泣いてしまいました。怒っていたのも事実なのですが、本当は不安だったのです。でも、私まで不安がっていたらシアがもっと不安になってしまいます。私はシアの将来の側近ですから。シアが不安にならないように自分もごまかしたのです。
あぁ。助かって良かったです。




