1-44 悪巧み8
アッシュは生き残った私兵を縄で縛り上げ地面に並べて座らせ、檻の近くで家族で抱き合っている商人一家の子供に声を掛けた。
「おい少年。お前を殴った奴はこの中にいるのか?」
「いないです。」
「そうか、残念だが本人に仕返しするのは無理だが奴らも同罪ってことで好きにしていいぞ。やられた様に剣で頭を割ってやれ。」
アッシュに少年と呼ばれた子供は青い顔をして首を振っている。
「じゃあ父親の手本を先に見るか?」
アッシュの言葉に慌てて店主も首を振る。先を見越したかのように母親も無理ですと言って顔を手で隠してしまっている。
「お前たち本当に良いのか?お前たちを酷い目に遭わせた奴等だぞ・・・・・・・・。まぁ無理強いする気も無いから俺が有効に使わせてもらうことにしよう。」
店主一家を睨みつけている私兵に蹴りを入れて無理やり笑顔にさせてから会話を続けた。
「こちらの一家のおかげでお前たちはこの場で即死することは無くなった。感謝しろよ。だがこのまま逃がしてもらえるとは思ってないよな。どうしたら許してもらえると思うか考えて喋ってみろよ。気に入れば殺されないかもしれないぞ。ちなみに俺の手間を省いてくれると喜ぶかもな。」
「手間って何なんでしょうか?教えて頂ければ・・・。」
アッシュの蹴りが、喋り始めた私兵の顎を砕いた。口から溢れ出す血に混じって白い塊がぼとぼとと地面に落ちる。
「アルトリウスの馬鹿がお前らみたいのを使って領民を痛めつけようとするから俺がこうして見張りして守ってるんだろうが。諸悪の根源が自分の悪事にも気が付かないとは救いが無いな。やっぱりこの場で死ぬか?」
ぐったりと隣で動かなくなった私兵に残った二人は顔を青くしながら必死で首を振っていた。やがて決心したかのように顔を見合わせて二人は口を開いた。
「あ、アルトリウス様の首をとれば俺たちは助かりますか?」
「問題児がいなくなればお前らに構う理由は無くなるな。だが放っておいても奴に未来は無い。持って数か月だが、その間見張り続けるのは面倒なのも事実だ。お前たちが自分の命惜しさに奴を殺すのは勝手だが、その程度で妥協してやるよ。その後に悪さしたら今度こそ迷いなく殺すから肝に命じておけ。」
アッシュと私兵の二人はアルトリウス暗殺の計画を練り始めた。実はここまですべてアルムスの計画通りに事を進めていたのだが、アッシュとしては私兵を殺し過ぎた事を少し後悔していた。計画を練りながら死にたくない一心で行動する二人を見たアッシュは一抹の不安を覚えていた。




