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1-45 悪巧み9

領主の館で至る所に包帯を巻いた、痛々しい姿の3人の私兵がアルトリウスに面会を求めていた。私兵の生き残りと顔に包帯を巻いて誤魔化しているアッシュである。普段通りに武器を老執事に預けた後、執務室に通され待たされているが2人は立っているのもやっとの様子だった。数分の後にアルトリウスは執務室に入ってきた。表情は私兵の姿を見るなり険しく変貌し今にも怒り狂いそうな雰囲気を纏ったまま椅子へと腰を下ろした。背もたれに深く腰掛け足を組みながら尊大な様子で話しかけてくる。


「その様子からして失敗の報告か。お前らは無能集団だな。商人とその家族を連れてくる事すら出来ないのなら他に何かできることがあるのか?」


アルトリウスの叱責に肩を震わせながら私兵の1人が口を開く。


「その事でお話があります。商人一家を連れてくるところまでは良かったのですが館の前でアッシュに待ち伏せされ部隊は壊滅させられました。今ここに居る3人だけは重症ながらも命を取り留めましたので急ぎ報告にやってきました。」


私兵からの報告はアルトリウスの怒りに更なる燃料を追加したかのように感情を爆発させた。椅子が倒れるほどの勢いで立ち上がると机の上の物に当たり散らす。


「また奴か!ふざけおって!!どこまで私の邪魔をすれば気が済むのだ!お前たちもお前たちだ。それだけの数を揃えながらアッシュに敵わないとは情けない。無能な奴らには其れ相応の処置が必要だろう。アッシュの残虐な犯罪の証拠として死体となって役に立つがよい!!」


アルトリウスが合図を出すと近くに控えていたメイドと老執事が手にナイフを持って近づいてくる。


「何で俺たちがこんな目に、俺たちは言われたとおりにやって来たじゃないですか。アルトリウス様あんまりです・・・・・。」


執務室の入り口から近づいてくるメイドとアルトリウスの背後に控える老執事に挟まれるような形でじわじわと追い詰められていく。


「まぁ其方同様にこちらも縁を切るタイミングだったってことですね。」


ぼそりと呟いた私兵の手には包帯で隠されていたナイフが握られていた。素早い動きで老執事の横をすり抜ける様にアルトリウスに迫っていった私兵の首元から血が吹き出す。すり抜けた筈の老執事のナイフが血に濡れていた。老人と思えないほどの素早さで私兵の首を切り裂いた老執事はすでに次の標的に視線を移していた。血を吹き出しながら私兵の体は崩れそうになるが後ろに控えていた顔に包帯を巻いたアッシュが支える。途端に首を切られて絶命するはずだった私兵が息を吹き返し、アルトリウスへとナイフを振りかざした。

ドンッという大きな音と共にアルトリウスとナイフを振りかざす私兵との間にいつの間にかメイドが割り入る。メイドは両手に持ったナイフの1つをアルトリウスに迫る私兵の胸に突き立てるともう1つのナイフを後ろにいた私兵の胸に投げつけた。


一瞬にして2人の私兵が崩れ落ちそうになるがアッシュは右手と左手に私兵をそれぞれ掴むと無理やり立たせる。胸に突き刺さったナイフが自然と抜け落ちて死ぬ筈だった2人が息を吹き返した。この異常事態にメイドは驚愕のあまり一瞬動きを止めた。その隙にアッシュは掴んだ私兵ごとメイドを殴りつける。人間同士がぶつかり嫌な音を立てながら血飛沫が舞う。壁へと吹き飛ばされたメイドは首をありえない方向へと曲げて動かなくなっていた。

アルトリウスはメイドの姿を見て腰を抜かし部屋の隅へと這って逃げていく。アッシュがアルトリウスへと視線を向けようとすると其処には老執事が目標をアッシュへと定め部屋に飾られていた剣を握りしめる姿があった。剣を握った老執事の姿は一人の剣客といった雰囲気を纏っておりアッシュでも認識できない踏み込み速度で距離を詰めて斬りかかる。咄嗟に私兵の盾で防ごうとするが私兵ごとアッシュの腕は両断され苦痛に顔を歪める。だが一瞬で腕の再生を終え盾の再生も同時に行う。目の前の光景にアルトリウスが叫び始めているが老執事は動揺を見せない。油断の出来ない相手にアッシュの余裕もなくなってゆくが此処迄辿り着いた以上引き返せない。

肉の盾と肉の剣も何度も臨死体験を味わいたくもなく必死で老執事を仕留めるべく、それぞれに攻撃を仕掛けるが致命傷を与えられない。アッシュ、そして盾と剣は何度傷つけられてもすべての傷を再生しているが老執事に与えられたダメージは蓄積していく。10分も経たないうちに均衡は崩れる事になった。


足元に溜まる自らの血だまりに足を取られバランスを崩したところをアッシュに体を掴まれ握りつぶされた。老執事が片腕を失ってからは勝負は一方的なものへと変わっていった。心が折れたのかダメージの通らない相手への攻撃を諦めたのか防戦一方となった。守る相手には馬鹿正直に攻撃に付き合う必要もなく距離を取って一気に火炎で焼き尽くした。

部屋の中には消し炭となった老執事、部屋の隅で気色の悪い方向に曲がった首をぶら下げたメイド、同じく部屋の隅で失禁した状態で気を失っているアルトリウスと、アッシュと私兵2人が残った。


「ここまで手伝えばお前達でも何とかなるだろ。さっさとアルトリウスの首でも落として領民に宣言すると良い。圧政者は死んだとな。後はお前たちの勝手だ。好きにしろ。」


そう言うとアッシュは興味が無いとばかりに結果を見届けることなく部屋を後にした。残された私兵2人は顔を見合わせ、覚悟を決めるのだった。


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