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1-42 悪巧み6

アルトリウスの私兵たちによって商店から店主が引きずり出される。すでに抵抗を試みたのか店主の顔は腫れあがり口元から血を流している。泣き叫びながら店主を引きずる私兵に縋りつき懇願する女性は、他の私兵たちによって殴られ地面に突っ伏した。騒ぎを聞きつけたのか奥から10歳くらいの子供が姿を現し私兵に商品だろう瓶を投げつけている。子供は鞘を付けたままの長剣で私兵に打たれ頭から血を流しながら通りを行く人々に助けを求めている。


「助けて下さい。誰か助けて下さい。誰か・・・・。」


子供は泣きながら助けを連呼するが通りを歩く人々は関わり合いになるのを避けるように逆に距離を取る。中には街の衛士に知らせようとする者もいたが私兵に捕まり痛めつけられた。痛ましい光景に野次馬も悲痛な声を上げるが、領主の私兵と知って声を掛けられる者はいなかった。店主と女性が馬に引かれた檻に押し込まれ子供も私兵に髪を掴まれ引きずられて行く。子供は気力を振り絞り声を上げるが足を止める者はいなかった。ついには檻に入れられ私兵に殴りつけられて無理やり黙らされた。


「やっと黙りやがった。ガキの喚き声程耳につくものはねぇな。」


ニヤニヤと下卑た笑みを浮かべた私兵たちは仕事を片付けたかのように何事もなくその場を後にした。



領主の館は城と言うほどの大きさは無いが有事の際には防衛の最終拠点と成り得る様に計算され建てられている為、入り口へと通じる道は限られている。部隊が展開できぬように館の外壁の外には堀が用意されており内部に侵入するには最終的には1本道となる。そこに一人の男が道を塞ぐように座り込んでいた。私兵たちの話し声に気が付いたのか立ち上がり此方へと近付いてくる。


「こんなところで何してやがる。小汚いお前のような輩が領主様の館に近づくな。どっかに失せろ。」


私兵たちは男を罵りながら武器を見せ威圧してくる。


「お前らのような奴は考えることが単純で虫唾が走るな。誰か一人でも死人が出たなら全員の命で償わすぞ。」


アッシュは私兵に告げると馬に引かれている檻迄一気に距離を詰めた。アッシュの速度に脇を抜かれた私兵たちは誰一人反応することが出来なかった。檻の中でぐったりとしている3人を見たアッシュは悲痛な表情を浮かべた。男も女も子供まで血を流している。男はこっぴどくやられたのか顔の原型が分からないほど腫れあがっているが腕に子供を抱いて近づくアッシュから守ろうとしているようにも見える。


「大丈夫じゃなさそうだな。すぐに治してやるからな。待ってろ。」


馬が引く檻の留め具を外し、檻をこじ開けるとアッシュは子供の治療を始めた。やっと我に返ったアルトリウスの私兵たちはアッシュを取り囲み抜刀した。


「てめぇ、何勝手なことしてやがる。誰に逆らってるのか分かってるのか?」


アッシュは振り向きもせず答える。


「知らんな。少し黙っておけ。今俺の邪魔をすれば後悔するぞ。」


帰って来た答えに苛立ちを抑えきれないかのようにアッシュへと斬りかかった者が紙屑の様に宙を舞った。アッシュは子供の頭を優しく撫でて微笑みながら少しの間、目を閉じ耳を塞いでおくようにと言い聞かせた。




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