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1-30 協力者

夜も更け併設された酒場が賑わいを見せる時間帯、ギルド支部執務室ではルーカスが事務仕事に追われていた。昼間は警備詰所に報告に出かけたり衛士から取り調べの為に拘束されたりとアッシュの一件以来仕事が進まずルーカスは頭を悩ませていた。そんなルーカスの元へいつも笑顔の受付嬢が笑顔のまま額に冷や汗を浮かべ青ざめるという器用な芸当をこなしながらノックするのも忘れ執務室の扉を開けた。


「支部長お客様です。支給応接室にお越しください。」


「見てわからんのか儂は忙しい。明日にでも出直してもらえ。」


苛つきながら受付嬢の顔を見ることもせずに断りを入れてくるルーカスに怯むことなく受付嬢も一歩も引かない。


「忙しくてもお願いします。出来れば早めにお帰り頂きたいお客様ですので。支部長が早く対処して頂かないと明日からもっと忙しくなりますよ。」


普段であれば言うはずのない苦言迄飛び出してくる。嫌な予感が絶対に的中しそうな雰囲気に眩暈を覚えながらもルーカスは席を立ち応接室へと向かった。応接室のソファーでくつろぎながらお茶を楽しんでいるアッシュを見た瞬間にルーカスは眩暈どころか目の前が真っ暗になった。


「お前さんは追われている自覚があるのか?こんなに堂々とギルドに来られたんじゃ庇いようもないぞ。せめて変装ぐらいはしてくれても良かったんじゃないか。」


ふらつく体を片手で何とか支えルーカスはソファーに腰を下ろした。


「俺の顔なんて追ってる奴も分からないんじゃないのか。どうせ人相書き程度だろ。」


「お前さんは衛士を馬鹿にし過ぎだな。昨日も今日もギルドにまで衛士は調べに来ておる。護衛に雇った冒険者からも聞き取りを行ってるみたいだしな。衛士も必死なんだろうよ。ところでこんな夜更けに訪問してくるとは一体どんな用件だ。」


「今日は提案に来た。ルーカスは腕を取り戻したくないか?片腕じゃあ不便だろうと思ってさ。」


「取り戻せるなら取り戻したいがお前さんに付き合っとると命の方が先に無くなりそうな気がするんだがな」


頭を抱えたまま俯くルーカスを無視してアッシュの会話は続いていく。


「俺のこと追ってるのってアルムスか?」


「いいや違う。領主が冒険者の癖に貴族を殺害したお前さんを腹に据えかねて必死に探しとる。儂は片腕で手打ちにしてきたのかと思ってたらアルムス以外皆殺しってお前さんやり過ぎじゃないか。領主の身内だぞ。」


「じゃあさ、ルーカスの所から使いを出してアルムスにも協力するように伝えてよ。成功報酬は腕ってことで。」


ルーカスの話を聞いているようで聞いていないアッシュに業を煮やしてルーカスがテーブルを叩いて立ち上がるが何処吹く風と無視をするアッシュに諦めのため息をつき、待機している小間使いにアルムスへの伝言を届けさせる。


「お前さんに協力してることが領主にばれたらギルド支部の存在すら危うくなるわい。何か聞かれたらお前さんに脅されて仕方なく動いたって事にするからな。いいな。」


ルーカスが渋々ながらも納得したとみてアッシュは満足そうに頷きコップに残ったお茶を飲み干した。




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