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1-27 オーガ3

「アッシュ、待ってくれ。我らが森を出ては災いがやって来る。」


未だに渋るドゥームの文句も聞く耳を持たず早く歩けとばかりにアッシュはあっさりと切り捨てる。


「どうせ災いってのも人族の事なんだろ。こんな辺境でお前たちが暴れたとしても貴族が兵を率いて討伐なんかに来やしないしギルドにだって依頼を出さなきゃ誰も来ないんだよ。わかるか?人族だって何の得もないのに命かけてまでオーガ退治するほど暇じゃない。」


「だがアッシュの村の住民がギルドに連絡したら我らを討伐しにやって来るんじゃないのか?」


「お前らの集落の者はアゴル村の住民を傷つけないって俺に約束したろ。だから同じように村人がお前たちに害をなそうとしたら俺がそいつを敵として排除してやるよ。でも初対面の奴は多少無礼でも許してやれよ。お前たちって見た目が怖いんだから。」


アッシュとドゥームが森の入口までやって来ると急に足を止めた。この先に1号たちが休憩しながらアッシュの帰りを待っているはずだ。アッシュは少々悪趣味ではあるが1号たちにドゥームの特別な紹介をしようと打ち合わせを始めた。


「我は反対だ。何の益もなく仲間に非道な仕打ちをするなど。」


「まぁ俺には必要な事なんだ。黙って協力してくれよ。」


心底嫌そうな顔をするドゥームと陰湿な笑みを浮かべたアッシュの姿があった。




アッシュの帰りを待つ1号たちは不安に襲われていた。暢気に構えていた者たちも時間が進むにつれ余裕がなくなって行き落ち着きを無くしている。アッシュならば如何にオーガであろうとも簡単にやっつけて戻って来るだろうと考えていたが単純に戦闘が長引いたとしても遅すぎる。酷い怪我でもして戻るに戻れない状況になっているのか、もしくは考えたくもないが返り討ちに遭ってしまったのか。考えていても状況は悪くなるばかりで何人かを森の中に送り込もうと話をしていた時にそれは現れた。

体長は3m近く緑色をした体は魔物の毛皮を纏い頭部には2本の角を生やしていた。口元には大きな牙が覗き肉食獣を連想させる。今すぐにも逃げ出したい衝動に襲われるが肩に担がれているぐったりとしたアッシュに目を奪われ足が止まる。まさかとの思いで男たちは言葉さえ発することが出来ない。男たちの注目の中オーガはアッシュを掴み1号たちの方に無造作に投げ捨てた。アッシュの体は1号たちの頭上を越えてどさりと音を立てて地面に落ちた。投げ捨てられたアッシュを見て1号が吼える。


「てめぇ!ぶっ殺すぞ!!」


1号の叫びで男たちは斧や鋸を手に臨戦態勢に突入するが場の空気にそぐわないのんびりした声によって我に返る。


「いやいやいや、戦ってもお前等じゃやられちゃうよ。」


振り返った男たちの前に何事もなかったように立ち上がり服に着いた土埃を払うアッシュの姿があった。言葉を失って立ち尽くす1号たちの間をすり抜けオーガの隣に立ったアッシュは何食わぬ顔で横に立っているオーガの紹介を始める。


「こちらオーガのドゥームさん。これからオーガたちとの取引の顔役になってくれる人だ。失礼のないようにな。それと1号、お前の事ちょっと見直したけど勝てない喧嘩はするもんじゃないぞ。」


余りの事にアッシュの言葉が男たちの耳を素通りしてしまっているようだが悪趣味な悪企みの犯人はアッシュだという事は理解できた。射殺さんばかりにアッシュに視線が集中するが文句を言ってしまうと反撃に遭うので誰も言葉には出さない。隣で居心地の悪そうにしているオーガも被害者なのだろう。妙な被害者意識でつながった1号たちとオーガは意外なほどすんなりと互いを受け入れ合っていた。

ドゥームを村に案内する為に村に帰ることになった一行だがアッシュ一人居心地悪さを感じ先に村に帰って事情説明することにした。


アゴル村に着いたアッシュは一番にサーシャとフォウに事情説明をしたのだが事情を聴いたサーシャは驚愕の表情を浮かべていた。


「どうしたら緑色の鬼と友達になれんのよ。あんたやっぱり常識ないわね。」


「そんなこと言ってもちゃんと言葉も通じる亜人だぜ。ドベルの街で2軒隣に住んでた奴だって見た目は緑色した蜥蜴だったじゃないか。」


「あんたねぇ・・・・。もういいわ、私も説得に付き合うから。」


「マスター。2軒隣に住んでたゴンゾさん、アゴルに一緒に移住してきましたよ!忘れたらだめです。」


急遽、住民が集められ緊急集会が行われアッシュによる事情説明が行われた。アッシュによって村民には絶対に危害は加えないと確約していると告げると意外なほどにあっさりと受け入れられる事となった。今までアゴルには人族しかいなかったのだが先日のドベルからの移住者によって様々な見た目の亜人が増えていた事によりオーガも亜人だったという事がすんなりと受け入れられたのだろう。アッシュの説明の際に色が同じという理由でゴンゾが使われイメージ的にもゴンゾが大きくなって角つけたようなものだから大差ないと言い切られていた時にゴンゾが少し涙目になっていたのが哀れだったが住民には好意的に受け入れられた。


皆が歓迎の準備に取り掛かっている頃に1号たちと談笑しながら和気藹々と一緒に帰って来たドゥームを見た者が一瞬姿に驚くが和やかな雰囲気にすぐに警戒心もなくなっていた。

当のドゥームも森を出ることに警戒心を抱いていたのだろうが1号たちと話をしながらのんびりとアゴルに向かった事が良かったのか表情が明るいものに変わっていた。もちろんこの後、歓迎の宴が繰り広げられ肝心の交渉など行われなかったのだが交友を深めた事の方がアッシュにとってもドゥームにとっても得難い重要な事となった。


宴会の最中、酒の肴にアッシュへの不満を1号たちがドゥームともに溢していたのをサーシャが聞きつけた。


「馬鹿ね、あんた達がそんな体たらくだからアッシュに頭が上がんないのよ。1号、あんたは今朝までオーガが怖かったんじゃなかったっけ?あんた達とドゥームさんがアッシュに遊ばれて被害者意識で繋がったから打ち解けるのに時間が掛からなかったんでしょ。帰って来た時にあんた達がぎこちなかったら村の連中もドゥームさんを受け入れるのにもっと時間が掛かってたわよ。しっかりしなさい。」


サーシャはやれやれといった様子で空になった飲み物を補充しに去っていくが残された1号たちとドゥームはやられたといった顔で見合わせ1号たちは笑い転げドゥームはアッシュの意外な優しさに触れ人族への嫌悪の感情が徐々に薄れていくのを感じていた。




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