打開策
勇太が打開策を考えている時、
あきがまた晴明に攻撃を仕掛けた。
大きな氷の槍が晴明に向かって飛んだ。
晴明は炎の壁を作って飛んできた氷の槍を溶かしてしまった。
「ん?」
晴明の装束の袖が泡に包まれていた。
「あの泡…まさか…」
樹理奈は驚いた顔であきを見た。
「さっきのカバンサイトの術を参考にさせてもらったわ。」
あきが言った。
「1度見ただけで術を再現できるとは。しかも、特殊能力だぞ。やるな。」
サファイアが感心していた。
「感心している場合じゃないでしょ?本当に弟子には甘いわよね。」
エメラルドが言った。
「どうする、ルビー?本当に見てるだけで良いの?」
ルビーは少し考えていたが、
「晴明様の命令だし、もし私たちが手を出すとあちらも出てきかねないわ。」
とオパールたちを見て言った。
「面白い呪いを使うな。これはわしも想定外だった。」
精神の中で晴明が愉快そうに言った。
「えっ?!」
勇太は驚いて晴明の方へ振り返った。
「あの女、すべてはこの呪いを発動させるためだったのだ。あの女の攻撃には呪いの断片が施されていたのだ。何度も攻撃するが、わしには攻撃は効かん。それもあの女にしてみれば想定内、呪いの断片だけわしに気づかないようにつけていたのだ。」
勇太は晴明の言うことを瞬時には理解できなかった。
「呪いの断片たちはどんどんくっついてきっかけを待っていたと言うわけだ。」
「きっかけって?」
「わしを串刺しにした氷とさっきの攻撃だ。氷で水の魔力をまとわせ、さっきの攻撃でわしに魔力を使わせる。これが、術を発動させるきっかけだったわけだ。」
晴明は悔しいどころかとても楽しそうに勇太に説明した。
「難しいけど…野上さん、やっぱりすごいな。」
勇太は打開策を考えるのを忘れて感心してしまっていた。
「晴明様!術ごと炎で燃やしてしまって下さい!」
ジルコンが叫んだ。
「そうしてもまた次の呪いが発動するぞ。」
晴明が言った。
「この体の主の魔力だけでなくわしの魔力を根こそぎ奪おうとするとは。女よ、大したものだ。」
晴明は楽しそうに言った。
「野上さんの呪い、中島君の精神までまだ到達してないよ。どのくらいかかるんだろ。」
貴司が言った。
「こちらはまだ何にも音沙汰なしだ。勇太ー!聞こえるか?もうすぐ出れるぞ!」
海斗はが球体の中の勇太に向かって叫んだ。
「海斗…」
勇太は目をつぶった。
『みんな…俺のために必死になってくれているんだ。俺もここから出なきゃ…』
勇太はペリドットとの会話を思い出そうとしていた。
『基本は簡単な術式から。より複雑な術にしたければ、術式を重ねる。実際に術を発動させて、思ったより威力が弱いときもある、その場合は術式から見直す…』
勇太は壁を見つめた。
『俺の魔力は…あまり残っていないようだな。』
あきの呪いだけでなく、攻撃のせいで勇太の魔力はわずかしか残されていなかった。
『1発勝負だな。』
勇太は深呼吸した。