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精神からの脱出

『この壁は魔力の塊…吸収するんだ…そうだ…浴槽のお湯が排水溝に流れていくイメージ…勢い強すぎるかな…でもそのくらい強い勢いがないと魔力を引き寄せられないかも…』

イメージが大事なのは鉄アレイを浮かせる修行の時に学んだことだった。

『ここを出たら、また『いっちゃん』のラーメン食べに行こう。海斗もまた行きたいって言ってたな…ペリドットとの約束もまだ果たせてないな…さっきみんなで昼飯食べたのにお腹すいてきたな…』

勇太はふふっと笑った。こんな状況でもラーメンを食べたいと思う自分がおかしかった。

「決心はついたか?」

晴明が勇太に聞いた。

『まさか、俺の心を読んでたのか?!』

勇太は動揺したが、晴明はニヤニヤと笑っているだけだった。

『何にも…攻撃してこないか…』

晴明が攻撃してこなさそうなのを見て勇太は少し安心した。

「俺、ここでるから。」

勇太は晴明に言った。

「あぁ、分かっている。」

晴明はにやけたまま言った。

勇太は壁に押し当てていた手に力を入れた。

「いくぞ!」

勇太は残っていた魔力を手に込めた。

壁に渦が現れたかと思うと渦から勢いよく魔力が勇太の体に注がれた。

「うっ…」

あまりに勢いが強いので勇太も立っているのが精一杯だった。

「しっかり踏ん張らねば、吹っ飛んでしまうぞ。」

勇太の様子を見ながら晴明は他人事のように言った。

「分かっ…てるけど…」

勇太は晴明をちらっと見た。

『本当に何もしてこないな…でも…』

魔力が注がれて、勇太は体中に魔力が満ちているのを感じていた。


「大林!球体の上の方!渦みたいな…?」

球体の外で海斗も渦を確認していた。

「魔力が中に流れている…なんだろ?松下君の体を浮かせて渦の近くまで寄せてみるよ!」

海斗の体が浮いて、渦を上から見下ろした。

「勇太!どうした?大丈夫か?」

海斗は球体の中にいる勇太に向かって叫んだ。

「海斗、大丈夫だ!壁の魔力を吸収してるから!」

勇太も海斗に答えるために叫んだ。

「壁の魔力を吸収…そっか、中島君は晴明と魔力の性質が同じだ!他人の魔力を取り込むとその魔力に支配されてしまうことがあるらしいけど、中島君なら問題ないね。」

貴司が言った。

「魔力を吸収してるってことは壁が薄くなるってことだよな…勇太!同時に渦に向かって攻撃しよう!」

海斗が言った。

「分かった!」

勇太も頷いた。

「…かなり薄くなってきた。今ならいける!」

貴司が言った。

「勇太!いくぞ!」

海斗が構えた。勇太も魔力を注がれながらも構えた。

「1、2、3!」

海斗と勇太が同時に渦に向かって攻撃した。

勇太と海斗の魔力は渦に衝突して爆発した。

壁にひびが入り、バラバラと崩れ始めた。

勇太は術を解いた。

「海斗!」

勇太は腰に魔力のヒモ状のものを巻いた海斗の姿を確認できた。

「勇太、出るぞ!」

海斗は勇太がに向かって飛んできて、勇太の腕を掴んだ。

「中島君、無事で良かった!」

ヒモから貴司の声が聞こえた。

「大林君…」

ヒモは外に伸びていた。これが、貴司と海斗のつながりだった。

「引き上げるよ!」

勇太の体は海斗と共に球体の外に出た。

『これ、球状だったんだ…』

勇太は外から見て初めて、自分が球体の中にいたことを知った。球体の上半分の部分にいたので、ドーム状の中にいるとばかり思っていた。

勇太は球体の中の晴明と目があった。

崩れ行く球体の中で勇太を見上げて晴明はニヤリと笑っていた。

『もしかして、さっき見た月だと思ってたやつがあの球体なんだろうか…』



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