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最後のエルフ、余生はネオン街でスローライフ  作者: 為世 斐文


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第8話「守るもの」

 夕方になるとセツカが手伝いにやってきた。

「ミラちゃん、昨日ぶり~」

「うむ」

 学校と言うものでこの時間になるのか……?

「セツカ、学校は楽しいか?」

「え? うん。どうしたの?」

「いや、気になってな」

「ミラちゃんの学校は楽しい?」

 合わせておけばいいか?

「ああ、楽しいぞ」

「どこに通ってるの?」

 通う……学校と言うのは行くものなのか。何か、ギルドのようなものでいいのか? でも名前なんて知らないぞ……

「名前を……憶えていなくてな」

「え、そんなことある?」

「すまない」

「えー、どこらへん? 私はね綿未高校なんだけど」

 ワタミ、コウコウ?

「あー……」

 なんだ? コウコウってものを付ければいいのか?

「思い出したローズ高校だ」

「へー……聞いたことないや」

 そりゃ、旧友の名前だからな……

 何とかセツカを騙しながらも、私の頭にはセツカにエルフであることを隠す理由はあるのかと疑問が生まれてきた。

「セツカは魔族とエルフの話、どれくらい知っているんだ」

「え、ちょうど授業でやってるんだ。百年くらい前かな? なんか大戦争があったらしいね」

「そうだな」

「え、ミラちゃんも同じとこやってる?」

 んー……

「ああ」

「やっぱり、どこの学校でも大体は同じところやるんだね」

「まあー……そう、だな」

 セツカは納得がいったように仕事をしに下がっていった。

 その様子にほっと胸を撫でおろして、仕事に戻った。

「見てびっくりー」

 一難去ったと思って次にくるセツカとのゲームに向けて張り切っていると、横から肩を叩かれた。

「ミラちゃん。ローズ高校ってどこにあるの?」

 セツカの手にはスマホが握られていた。

 現代の人間はどうやら誰かの出生まで分かってしまうらしい。と言うことは、何かセツカも私の矛盾点を手に入れたのではないだろうか。

 まあでもそもそも、私がエルフだということを隠す必要性はないはずだ。

「あー、嘘だ」

「え?」

「私はエルフだからな」

 そういうとセツカは首を傾げた。

「えっと……コスプレでしょ?」

「いや?」

「え……?」

「耳も動くし、体温も人間より低いらしいし、魔法だって使える」

「や……だって……え?」

 セツカは恐る恐る私に手を伸ばしてきた。

 んー……水を出すくらいならいいか

「セツカ、冷たいけど我慢しろ」

 少量の水をセツカの横に向けて飛ばした。

 私の出した水はセツカの耳横を通り、綺麗に並んだ果物に当たって穴を開けた。

 やべ……

「どうだ」

 口頭では真顔を浮かべながら、後ろの果物を浮かして店の上にある柱にそっと置いておいた。

「水鉄砲じゃないんだもんね……」

「水デッポウ?」

 新種の生き物か?

「あー……えっと、それは素なんだよね」

「そうだな」

「ってことは、高校とかも知らないから適当に答えたってこと?」

「まあ、そうなる」

「ゲーム知らなかったのも、エルフだから?」

「ああ」

 セツカは頷きながらスマホをポケットにしまった。

「つまり、本当のエルフってこと?」

「うむ」

「え、すごい! やっぱり長寿だから生き残ってるってことなんでしょ?」

「まあな」

 目をキラキラ輝かせて、私の手に触れてきた。

「ここから水が出て……穴とかも開いてるわけじゃないし」

「ふふんっ」

 どや顔でもう一ど水を出すと、少し力が強かったのか地面が抉れてしまった。

「すごい!!」

 その光景にセツカは驚きと羨望の顔を向けてきた。

「じゃあマジックも本当は魔法だってことだよね」

「その通りだ」

「確かに、言われてみるとミラちゃんのお肌すごい綺麗だし、自然の匂い感じるもん」

 そんなの感じるのか……

「エルフかー……いいなぁ」

 セツカは私の耳に手を添えてきた。

「ひっ……」

 どうやらエルフは耳を触られると変な気分になるみたいだ。

 もう九百年を生きている私だが、今更やっとそれに気が付いた。

「え、でもそうなったらさ。魔族との戦争を生き残ったのは英雄のアポストロだけじゃなかったの?」

「いや、生き残りは私一人だ。一応は推測に過ぎないけどな」

「え……じゃあ、英雄のアポストロがミラちゃんってこと?」

「まあそうだな。ちなみに、アポストロと言う名前は持っていないし、そもそもそいつは単独で私に勝負を仕掛けておきながらすぐに死んだ魔族の名前だ。実に不快な名前を付けられたもんだよ」

「え……そうなんだ」

 リエとタクマにも話しておくか。でも、変人に知られでもしたら面倒だな……

「エルフってさ……どんな家に住んでるの?」

「家か?」

「うん」

「そうだなー……森の奥に木で建てた家を持っている」

「へー……一回行ってみたい!」

 セツカが家にか……

「それはやめておいた方がいい」

「え、なんでー」

「魔物が近くにいるし、結界を貼っているからな。本来人間は入れない」

「結界……!」

 セツカはまた目を輝かせた。

「アニメで聞いたことあるよ! でも本当にあったんだ結界って」

「すまん、アニメってなんだ」

「あー……アニメってどう説明すればいいんだろ……?」

 説明の難しい物か

「ならよい。また教えてくれ」

「うん! じゃあ今度アニメ一緒に見よ」

「見るものか」

「そうそう。私ね、イラストレーター目指しててね」

 イラストレーター?

「あ、そっか。えーと……絵を描くって分かる?」

「ああ」

「それを仕事にしてる人のことをイラストレーターって言ってね」

「ほー……絵師か」

「あ、そうそう!」

 昔に私の肖像画を描かせてくれなんて人間がいたな……

「また今度見せて上げるよ」

「ああ」

 セツカはにこやかな表情を浮かべてまた仕事に戻っていった。

 変人が変に探ってこないといいけど……


 少しすると今日も仕事が終わった。

「ミラちゃんゲームする?」

「しよう」

 食い気味に答えた私にセツカは笑いながら頷いた。

 これを求めている自分は怖いものだ。

 人間などどうでもいいと、短命な生命と関わるだけ無駄だと、積極的に関わろうとするエルフを馬鹿にしてきた自分だが、今まさに馬鹿にしていたものになろうとしている。

 こういう気持ちだったか、みんなは……

 意味が分かると、謝りの一言でも言ってやりたくなる。

 また墓参りでもしに行くか……

 笑顔のセツカを守りたいと、思った。

※この作品は他サイトでも掲載しています。

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