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最後のエルフ、余生はネオン街でスローライフ  作者: 為世 斐文


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第11話「お出かけ2」

第十一話「」



 変人を見ていると、うっすら過去の思い出が蘇ってきた。

 忘れたくなかった存在のような、失いたくなかった存在のような。

 だめだ……思い出せない

「ミラちゃんは白色が一番似合うと思うなー」

「いーや、全て似合う。なんでも似合う」

「そういう話じゃないでしょ」

 私が求めていた存在だったような。

「ワンピース、カジュアルなズボン、凛々しいスーツ、お色気満載なダル着。すべていい……。いや、すべて見たい!!」

「全部、凪さんの欲望じゃん」

 欲望……な

 一度考え始めたら、どんどん気になってきてしまう。

 少しだけ顔の輪郭のような、空気感のような、何かが見えている気がする。

「ミラちゃん着てみたい服ってある?」

「全て任せるぞ」

 いいや、今はどうにかして変人に人間だと分かってもらわないとな

「雰囲気とか、系統もなんでもいいのかい?」

「ああ。全て任せる」

 知らないからな

「へー、それだけミラさんは雪華くんに心を許していると……? 俺には冷たいのに」

 変人の言葉を耳に入れずにセツカの方に顔を向けた。

「強いていうなら、長い丈のスカートを頼む」

「ミラちゃんって、本当に凪さん嫌いだね」

 変人を無視した私に苦笑いを浮かべるセツカに少しの焦燥感を抱いたのはなんでだろう。

「まあ……私を人間だと認めてさえくれれば、あとはなんでもいい。そうじゃないから嫌いなだけだ」

「そんなの仕方ないじゃないか!! 俺には選べないよ。エルフの研究と、可愛いミラさんと仲良しになることなんて!」

 よくもまあそんな堂々と言えるもんだ。

 この発言には流石にセツカも苦笑いを浮かべていた。

「セツカ、後どのくらいで着くんだ」

「んー、あそこの角曲がって、大通りに出たら道路渡ってー……多分、七分くらいかな」

「そうか」

「疲れたなら、俺が肩車してあげよう」

「黙って歩け」

「ひどい……」

 視界に変人を移さないまま、私はセツカの案内によって服屋にやってきた。

「おお……」

 昔とはまるで違う。

 鮮明ではっきりとした色味が並ぶだけに飽き足らず、どこか淡くて薄くて、繊細な服ばかりが並んでいる。

「沢山あるんだな」

「そうそう。ここはレディース専門でね。ちょっとお金かかるんだけど、品質がとにかくいいし、可愛いのとか綺麗な服とか沢山おいてるんだ。私のお気に入りのお店なんだー」

 つまりは、品質がいいと

「では、私を人形のように使えばいい」

 目を輝かせた変人にはそこら辺に落ちていた石ころを頭にぶつけておいた。

「まずは上の服を選ぼっか」

「うむ」

 頭に当たったものの正体を探り始めた変人を放って、セツカはそこら辺に置いてあったかごを取って、色んな服を手あたり次第に入れていく。

「お、おい……そんなに買うのか」

「あ、これお試しに着れるんだ」

「ほー……」

 昔なら、手が触れた瞬間に汚れただなんだと言って、買わされるのが当たり前だったのだがな……

「ほら、これ一回着てみてよ。あそこで試着できるから」

「ああ、分かった」

 セツカに指さされた場所に服を持っていった。

「試着ですかー?」

「あー……ああ」

「はーい。ごゆっくりー」

 ふむ、シチャクと言うんだな。これをあいつの前で言えば少しは見直すだろう

 そんな言葉を考えながら個室のような場所に入ると、どでかい鏡が置いてあった。

「うぉ……」

 初めて見る自分の全身にびっくりした。

 こんな姿だったんだな……というか、ズボンとかスカートがないとこれじゃあ戻れないぞ

 今着ている服は上と下が繋がった服装だ。

「セツカ」

 個室から首だけ覗かせると、にんまりとした変人が立っていた。

「呼んだかい? 何か手伝うよ。あ、脱ぐの手伝って――」

「お前は黙っていろ」

「ちぇ……。なんだよ、雪華くんを呼べばいいんだろ? はぁ……」

 またぐちぐちと言いながら変人はセツカを呼びに行った。

 溜息を吐きたいのはこっちだ全く……

 しばらく首だけ覗かせていると、さっき話しかけて来た人間がまたこちらに向かってきていた。

 あ、これ買わされるパターン……

「あの、もしかしてなんですけど……駅前の八百屋さんでマジック披露してるコスプレイヤーさんですか?」

 ん、

「多分そうだが」

「えぇ! 実物、めっちゃ可愛いですね!」

「ああ……そうか」

「今日はコスプレの服を買いに来たんですか?」

「いや、ただの――」

 流石に失礼だし変に思われるか……

「――友達二人と、普段着を買いに来ただけだ」

「え」

 人間と話していると、横からひょっこり変人が顔を覗かせた。

 あ……

「ミラさん! とうとう、俺を友達だって認めてくれたんだね!」

「いや……」

「あーもう、いいんだよ。ツンデレなエルフの女の子なんて、なんて可愛いんだ……! 仕方ないな……いいさ。俺の籍は君の物だよ。ミラさん」

「本当に殺してやろうか……?」

「あ、はい……」

 ごみを見るような視線を送ると、変人は黙り込んだ。

「私服でしたら、何か私もお手伝いいたしましょうか」

「いや、セツカがいるから大丈夫だ」

「あ、雪華さんのご友人だったんですね!」

 セツカの知り合いだったのか

「ああ」

「それでしたら大丈夫ですね。でも、後で一枚だけ写真いいですか?」

「まあ構わん。好きにしろ」

「ありがとうございます! また今度、お店にも行きますね」

「ああ」

 人間は満足気に奥の方へ戻っていった。

 今頃の人間も、人脈は広いんだな……

「ミラさん、友達では」

「ない」

「が……」

 少しすると、かごに大量の服を入れたセツカがやってきた。

「どうしたのー」

「ああ、ズボンでもスカートでもないと、下に着る服がなくてな」

「あ、そっか。じゃあこれ着てみてよ」

「ああ、分かった」

 セツカから渡された服を試しに着てみることにした。

 ん……何だこのギザギザした細い金属は……隙間ができるがまあ、放っておくか

「どうだ」

 個室から出ると、セツカは顎下で手を合わせて笑顔を浮かべた。

「いいじゃん! それ一着買うの私はありだと思う」

「なら買っておこう」

「ん、ミラさん。ここチャックつけ忘れてる」

 変人は何も騒ぎ立てることなく、分からず放置していたギザギザの金属を使って、開いていた隙間を埋めた。

 こいつ……

「お前、本当に変人か……?」

「どこの要素で?」


 なんだかんだで服選びも終わり、どでかい紙製の袋パンパンに入った服たちを持って帰ることになった。

 「総額でも十五マンなら、俺は問題なし」などと変人は言っていたが、私の仕事でも一日に貰える駄賃は紙切れ一枚だった。

 あいつ、結構無理してるんじゃないか……? また、お礼でも言っておくか

 紙袋の服たちを棚にしまって、今日はもう眠りについた。

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