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シャーロットの仮説  作者: ariya
白亜の王の血脈

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25.


 ジョージ・ラビエラ逮捕後にルイスたちは一緒に事情聴取で警察署へ行く予定であった。


「……骨、動揺している」


 サラの肩に触れて、シャーロットは呟いた。

 急遽サラを病院へ連れて行くと骨折しており、そのまま入院となった。


「何から何までお世話になってしまいました。このお礼は必ず……」

「大丈夫だ。既に騎士祭りで十分世話になった」


 一番の目玉である騎士パレードを特等席で見れたためシャーロットは満足げであった。


「それよりも煙草はやめた方がいいな。このままだと母親と同じ病気になってしまう」

「そうですね……」


 サラは俯いた。その様子に言いすぎてしまったとシャーロットは咳払いした。


「しかし、煙草を断つのは至難のわざ……サラ様のペースで過ごされてください」


 慰めにもならないがこれ以上言えることはなかった。


「そうですね。主人にも相談してみます」


 大きな音が廊下から響いてくる。複数の足音と、女性看護師の怒りの声が重なり合い何事かとシャーロットは扉の方をみた。


 ドン!


 扉が盛大に開かれて、そこから現れたのは血相を変えたカリス・ペトロックであった。


「サラ! 襲われたって……骨折したって……大丈夫なのかっ!」


 パーティーで落ち着いた紳士の姿をしていたと思うが、今は見る影もない。

 今にも泣きそうな声でサラの方へ詰め寄った。


「ご安心ください。固定して安静にしていれば問題ありません」


 サラは落ち着かせるように説明した。


「紳士様! 病院では走るのは厳禁です。ルールを守れないのであれば出禁ですよ!」


 追いかけてきた看護師が怒りで叫ぶ。


「あわわ、すまない。出禁は勘弁してくれ」


 カリスは情けない声で謝罪した。

 しばらくしてカリスはサラの手を握った。


「君が朝からいなくなって、心配だった。ジョージおじさんのことを聞いて、君が怪我をしたと聞いて……私はどうしようと気がきでなく」


 うるっとカリスは涙を流す。


「どうやらあれが本性のようだな」

「辺境伯とはちがいますね」


 シャーロットの呟きにルイスは思わず自身の感想を添えた。


「ごほん、妻のこと、義弟のことで世話になった。ここは私に任せてくれたまえ」


 カリスは咳払いしてシャーロットたちに頭を下げた。

 確かにあとは家族で過ごす方がいいだろう。


 シャーロットはカーテシーを披露して病室をあとにした。ルイスもならい礼をとる。


「シャーロット様!」


 外にいたアルバートはこちらの方へかけてきた。


 サラの診察途中にアルバートは軽い発作を起こしていた。内科で受診をして今終わったようだ。後ろにはメリーが控えていた。


「アルバート、体調はどうだい?」

「大丈夫、入院の必要はないって」


 それは何よりだ。


「今はカリス・ペトロック様がいらしており、大事な話をしている最中だ」

「そっか……」


 アルバートはしゅんと落ち込んだ。

 まだ幼いが姉夫婦の邪魔をしていけないという配慮ができているようだ。

 とはいえ、まだ子供……少し寂しげである。


「ヨイチが持ってきたぶどうジュースがまだあったな」


 シャーロットは思いついたように呟いた。


「向こうの休憩スペースで一緒に飲もうか?」

「うん!」


 シャーロットはアルバートの手を繋ぎ、休憩スペースへと向かった。


「何をしている。ルイスもメリーもこちらへ来い」


 シャーロットは振り返った。


 ◆◆◆


 場面はサラの病室へと移る。


「あなた、離縁しましょう」


 サラは慎重な面持ちで提案した。

 その言葉にカリスの表情は固まった。


「え、私が……不甲斐なくてついに捨てられるのか?」


 涙目であった。

 これが素の姿など、アルトス市民が知ればびっくりするだろう。

 思わずサラは微笑んだ。


「いいえ。私はこの通り、不妊です。……それに、父が起こした『青い血』事件。あなたにもお義父様にも多大な迷惑をおかけしました」


 前々から言わなければならないと覚悟していたが、いざいうとなると心が苦しくなる。

 サラは思わず煙草を求めた。

 何度もやめなければと思ってもやめられない。


 自分は将来の辺境伯夫人に相応しくない。


「サラが私を嫌って、私の顔も見たくないからではないのかい?」

「そんなことはありません。あなたのことは好きです」


 サラは首を横に振った。


「そうか。なら私は離縁したくない」


 カリスははっきりと言った。


「ですが、私は」

「君は真面目すぎる。何もかも背負って……私はこの通り足りない男だから言われないとわからない。だが、少しでも君の助けになりたい」


 カリスはじっとサラを見つめた。


「私はサラが好きだ。サラがいない日々など考えたくない。辺境伯夫人が重荷というのなら、私は弟に譲ることだって考えている」

「それはいけません。私の為にそのような」


 サラはカリスを止めようとした。

 自分の為に全てを捨てるなどあってはいけない。


「では、一緒に考えよう。これからどうすればいいか」


 カリスはそういいながらサラの頬を撫でた。


 お互い不器用で、未熟な面は目立つ。

 それでもカリスはサラと一緒にいたい。

 サラも同じであった。


 サラは涙を流してカリスの胸に顔を埋めた。それをカリスは撫でていく。


「本当に私は臆病だ。サラがここまで言わないとサラの悩みを聞くこともできず……ぐずぐずして、悩んで。もっとうまくできればよかった……サラ」


 優しく名前を呼ぶ。

 2人は政略結婚で結ばれたようなものだ。

 だが、それでもお互いを想い合い一緒になろうと選んだ。


 

 

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