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シャーロットの仮説  作者: ariya
白亜の王の血脈

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19.


 翌々日、新しい情報が届いた。

 シェトラン警部がアルトス市警から聞いた内容である。


 ルイスたちを襲った男たちは、予想外の事件に繋がっていた。

 何と、ペトロック辺境伯家の家宝である聖杯を盗んでいた団体だったという。


「しかも、彼らの中に君の縁ある男がいた」


 シェトラン警部はシャーロットに視線を移した。

 シャーロットは首を傾げた。アルトス市周辺で自分の縁ある人間などいないが。


「ルース孤児院を覚えているか? あそこの院長が奴らのメンバー内にいた」


 ルース孤児院、寄付金を横領し孤児たちを虐待していた院長がいた場所だ。

 シャーロットがキルデック公女を利用して潰した。


「逮捕後に行方不明となっていたが、こんなところで見つかるとはな……今はアシュラム市警、アルトス市警のどちらでこの男を対応するか議論中だ」


 新聞の方をみると聖杯については記載していないが、ペトロック辺境伯から警察に対して祭りの期間中は騒ぎにならないようにしてほしいという希望だったようだ。

 祭りが終わった後に、聖杯盗難事件が大々的に報道されることだろう。


「そしてこれに少しは懲りただろう」


 シェトラン警部はシャーロットに声をかけた。


「何が?」


 とぼけた返答であった。

 それにシェトラン警部ははぁとため息をついた。


「君は法医学ができるだけのただの令嬢だ。だからこそ、余計なことに首を突っ込まないように」


 これでもかとわかりやすく丁寧にシェトラン警部は叫んだ。


「もう、ジャンたら。いいじゃないの。盗難事件は解決してペトロック辺境伯家の家宝は戻されて……辺境伯がシャーロットお嬢さんに感謝してまたパーティーに来て欲しいって」


 最終日のパーティーの招待状をアルマは見せびらかした。

 前回の招待状はサラからのもの。今回はそれよりも上のペトロック辺境伯からの招待状であった。


「うーん、もう舞踏会は……着物きつかったし」


 シャーロットは乗り気ではなかった。前回は興味があった騎士の模擬戦があったからで、今回はそれはない。

 わかりやすいほど興味が下落していた。


「それなら私が用意したドレスとかどうかしら! シャーロットお嬢さんの為に発注かけたのよ」


 アルマは是非是非とシャーロットにドレスをきてパーティーに出ることをせがんだ。


「ルイスさんも、最終日はパレードをしてパーティー参加でしょう?」

「いえ、パレード終わったらそのまま帰る予定で」


 ルイスもパーティーを敬遠していた。


「勿体無い! 最終日のパーティーでは聖杯を使った催しがあるのよ。聖杯を手に入れたアーク=タラス王が満足して天へ登っていくの! とっても綺麗なんだから」


 それを聞いてシャーロットは起き上がった。


「ああ、そうか……」


 シャーロットは何かに思い至ったようで納得した。


「どうしました?」

「いや、まだ仮定の話……もしかしたらの話だ」


 ルイスの質問にシャーロットは首を横に振った。


「お嬢様」


 ヨイチがシャーロットに耳打ちをする。

 それにシャーロットは頷いて、「失礼」と部屋を出て行った。


「ルイス、君も来るかい?」


 シャーロットの誘いにルイスは何となく気になり、一緒に立ち上がった。


 それからしばらく時間が経過して、ルイスは目の前の光景に困惑した。


 アルバートがぼろぼろに泣きじゃくり、メリーがおろおろとしていた。メリーの側には別の女性が涙を流し続けて目を真っ赤に腫らしていた。


 見かねたシャーロットがハンカチを出してアルバートの側に寄り添う。


 さて、何でこんなことになったか。


 ◆◆◆


 客人はアルバートとメリー、そしてもう1人。


「キキです。ミカエル様のお付きのメイドでした」


 シャーロットが2人に頼み、探していたのは彼女だった。

 ミカエルの状態を間近で見ていたメイド。

 しかし、メリーが言うには解雇されていた。

 すぐに見つかるかどうか心配だったが、1日で連れてきたとはメリーは優秀だ。


「ちょうど騎士祭りだったので人手が必要なホテルがあり、働いていました」


 キキは不安そうにあたりを見渡した。


「解雇された理由は?」


 シャーロットは尋ねる。


「ミカエル様の薬をすり替えました。それが見つかり解雇、身ひとつで追い出されました」


 一見妥当にも思える。

 だが、ジョージ・ラビエラの妄執を考えれば別の見方ができる。


「何故そんなことを?」


 キキは悲し気に俯いた。


「あの薬が怪しいと思いました。どこから調達されるか、見てしまい私は恐ろしくなり……」

「どこで?」

「食料保管庫から……旦那様は保存薬を瓶に詰め込み、水で薄めていました。あんなものが治療薬など信じられません。坊っちゃまも、内服後に頭が痛いと言っていました」


 見ていられず、キキは似た瓶を大量に買い水を入れた。それを薬瓶とすり替えた。


「追い出された後、ミカエル様が亡くなりました」


 彼女は両手で顔を覆い嘆いた。


 その言葉にアルバートは複雑な表情を浮かべた。

 

「ちなみに、君が薬の中身が保存薬と知っていることを言ったか?」

「いいえ」


 キキは首を横に振った。


「ただ、ミカエル様が薬を嫌がり可哀想だったからとしか……」


 言ってませんとキキは続けた。


「それでいい。じゃないと君は死んでいたかもしれない」


 シャーロットは怖いことをさらっと言った。


「保存薬て、何ですか?」


 途中話についていけないルイスはシャーロットに質問した。


「亜硝酸ナトリウムだな。肉の着色を保つために使用する」

「それは、飲んで大丈夫なのですか?」

「飲み過ぎたら中毒を起こす」


 中毒という言葉にルイスはゾッとした。

 少なくとも子供に薬として飲ませるものではない。


「僕は、怖い」


 アルバートはぽつりとつぶやいた。


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