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シャーロットの仮説  作者: ariya
白亜の王の血脈

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16.


「シャーロットさん、着きましたよ」


 馬車が目的地に到着してシャーロットはルイスの手をとった。


 馬車を降りると、風に乗って乳の匂いがした。


 柵の向こうでは牛がのんびりと草を食んでいる。


 そこは騎士祭りのアルトス市から随分離れた村――ペンネ村だった。


 のどかな、谷村で放牧と乳製品がメインのようである。


 至る場所にチーズの直売所が見られた。

 観光地の側面を出すようになってからチーズ直売所が増えたと聞いた。



「ここが……アーク=タラス王の育った場所か」



 ルイスは辺りを見回した。

 

 ここはアーク=タラス王が幼少期に過ごした村。彼は誕生後に隠されて育つ必要があった。

 父王が死に、その地位は敵国に奪われて王の血を隠して養育される必要があった。

 そして成長して、伝承の剣を手に入れて多くの怪物退治を成功させて騎士となり、王として返り咲いた。


「本当にこんな場所にラナ・モリガンが隠れているのでしょうかね」


 思わず疑問を口にしてしまう。


「ああ……メイドの話では洞窟に住んでいるとか」


 シャーロットは少しだけ目を細めた。


「王の伝承の地に、青い血の噂があり、祈祷師が住み着く……偶然にしては出来すぎているな」

「何がです?」


 祈祷師が潜伏している以外、青い血が関与しているようには見えない。


「ここはアルバートの母の故郷だ」


 ルイスは息を呑んだ。


「母親の葬儀でも……似た話があったらしい」


 シャーロットの言葉からルイスは情報を整理する。

 件の青い血騒動は2年前にも起きていた。

 それがアルバートの母……サラの母で、ジョージの妻であったレーシー夫人であった。


「青い血、ですか」

「ああ。だが医者は否定した」


 2年前も騒がれていたが、誰も相手にしなかった。


 ペトロック辺境伯も、実際見ていない血を信じられなかった。

 一番の証人の医師でも否定的な意見だった。

 

「……それで祈祷師に?」


 確かに――青い血は王の血と騒ぐ材料が揃っている。


「じゃあ、早速洞窟へいきましょう」


 ルイスはポケットから地図を確認した。

 その袖にシャーロットは掴んだ。


「ああ、その前に……」


 彼女は照れた様子で軽食店を指差した。

 この村名物のチーズと、野菜を挟んだサンドウィッチを売りにしている店である。


 そういえば、ガイドブックでおすすめと書かれていたな。


「お昼もまだだったし、食べていかないか?」


 シャーロットの上目遣いの誘いにルイスは断れるはずもなかった。


 店に入ると、それなりに客はいる。

 チーズを土産で物色する貴族夫婦もいた。


 アルトス市の騎士祭りの期間で、人の多さに疲れた人が静かに過ごす場所としてはちょうど良いようだ。


 店員の案内でテーブルを確認する。


「申し訳ありません。ただいま満席で……少し時間をいただけますか?」


「テイクアウトでもいいぞ」


 のどかな牧草地帯を眺めながらチーズサンドウィッチをほおばるのも悪くないだろう。

 シャーロットが提案する中、一人の客が立ち上がった。彼は慌てて料金をテーブルに置いて、ささっと店を飛び出して行った。


 通りすがりであるが、帽子を深く被っていて顔は見えなかったがおそらくは席を譲ってくれたのだろう。

 ルイスは心の中で感謝した。


「では、準備いたします」


 ちょうど空いたテーブル席を店員は綺麗にしていき、ルイスたちを案内した。


 ガイドブックでおすすめに乗るだけあり、サンドウィッチは格べつな美味しさであった。

 ミルクを淹れた紅茶もよい塩梅で提供されている。


 サービスのチーズスナックを置かれてシャーロットはお礼をいう。

 

「ありがとう。ちなみに尋ねてもいいかな」

「アーク=タラス王が幼少期過ごした家であれば……」


 観光客からよく質問される内容を規定文のように店員は口にする。

 それにシャーロットは首を横に振った。


「ファルマ家に用事があるのだが、どこにあるかな。昔父が世話になったのだよ」


 それに店員は困った表情を浮かべた。


「残念ですが、ファルマ家はもうありませんよ。5年前にご主人が亡くなられて、お嬢さんが遺品整理をして家はもう売却済みです」


 ファルマ家だった家は、ある貴族の別荘地になっているという。

 行っても会えないだろう。


「お嬢さんも2年前に亡くなられて……」


 既にシャーロットがいう父の関係者はいないだろうと言う。


「そうか、それは残念だ。ありがとう」


 シャーロットはにこりと微笑み、店員は立ち去った。


「ということはファルマ家の血縁はサラ様とアルバートだけか」


 チーズスナックをもぐもぐ頬張りながらシャーロットは呟いた。


「なら伝説をいくらでも作りやすくなるな」


 他に血縁者がいないのであれば、ジョージ・ラビエラとしては管理しやすいだろう。


「でもわかりませんね。青い血は実際流れていたのですよね。説明ができないから、誰も否定はできません」

「もう既に否定されているぞ」


 シャーロットは何のこともないと呟いた。


「レーシーの青い血は既に医者が否定している」

「でも、ミカエルの件は」

「それは今アルバートたちに頼んでいる」


 別れ際のことを思い出す。――


 シャーロットはメリーにミカエル付きメイドを探して欲しいと頼んでいた。


 『青い血』の解明に必要な情報を持っているとシャーロットは睨んでいるようだ。


 


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