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シャーロットの仮説  作者: ariya
白亜の王の血脈

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12.


「シャーロットさん、大丈夫ですか?」


 模擬戦が終わった後、すぐに舞踏会へと会場が変わる。

 ルイスはシャーロットの手をとり会場へと入った。

 シャーロットの顔色はいつものように戻り、今は静かに水を飲んでいる。


「ああ、心配をかけた」


 シャーロットはふぅっとため息をついた。


「そろそろ帯が限界かもしれない」


 シャーロットは帯の締め付けが気になっていた。そういえば、胸も腹も締め付けるからきついと言っていたのを思い出した。


「帰宅の馬車の準備をします?」


 元々シャーロットの目当ての模擬戦は終わったのだからそろそろ帰宅してもいいだろう。


「いや、今から騎士役の面々と挨拶するのだろう」


 シャーロットは首を横に振った。


「そんなこと気にしなくても」

「サラ様が用意してくれた休憩室で休んでいる。君は騎士役と交流をしておいてくれ」


 シャーロットは近くにいた使用人に声をかけた。

 彼はすぐに休憩室へ案内してくれるという。


「パレード楽しみにしているから」


 そう言い残して彼女は去っていった。

 残されたルイスは騎士役がいる場所への案内を受ける。


 ルイスを見て1人が立ち上がり挨拶してきた。


「ああ、君か」


 鎧を脱ぎ、礼服に身を包んだ役者たちはルイスを迎え入れた。

 ここにいる騎士役は3名。

 ランチェト卿の配置近くの者たちだった。


 下級貴族と、豪商の子息が中心でそこまで固い雰囲気はなかった。


 他の騎士役は心中の令嬢とのダンスを楽しんでいるようだ。


「ゴーヴァン卿はいないのですね」

「ああ、彼は君と位置は一番遠いからね。今頃目当ての着物令嬢を探しているのかもね」


 それにルイスは苦笑いした。


「実は、彼女は俺の本日のパートナーで……」


 そういうと彼らは目を輝かせた。


「ほほぅ、では決闘するか?」

「判定は俺がしようか?」


 ゴーヴァン役が代理のランチェト役の令嬢を乙女に選んだ。

 なかなか面白い寸劇が見れるのではないかと彼らは調子のよいことを言った。


「いえ、俺は剣術はそこまで得意では……それに祭りの一貫ですし」


 ルイスは首を横に振った。


「ああ、君は知らないのかい。この模擬戦の花冠はな……プロポーズの場に利用している者もいるのだよ」

「去年までの勝者は婚約者か、妹がメインだったな」


 プロポーズという言葉にルイスは胸がざわついた。

 先程の光景を思い出す。

 シャーロットの表情が一変したことに気を取られていたが、確かにロマンチックな場面であった。

 異国の着物を着た令嬢と、キスをする騎士の姿は絵になる。


「いや、その……まさか」


 自分は恋人ではないからと思っても口にできずにいた。

 それがなぜなのかわからない。


「はぁ……参ったよ」


 新しい男が集まりの中へと入ってくる。

 髪を短く揃えた、筋肉質の男であった。

 顔立ちは他の騎士役同様に整っている。


「おや、噂をすればゴーヴァン卿ではないですか?」

「決闘の予感だな」


 騎士役たちはわくわくと囁く。


 これがゴーヴァン卿?


 先程シャーロットを乙女にした騎士?


 ルイスは首を傾げた。出立と雰囲気が違うように思えた。

 鎧姿じゃないからそう見えるのだろうか。


「君たち聞いてくれよ。今、私は目を覚ましたばかりで知らない間に優勝していたのだけど」


 ゴーヴァン役の男は混乱しているようで早口であった。


「ああ、嫌味か……優勝できなかった私たちへの」


 騎士役たちはぷんぷんと酒を煽った。


「私は真面目に言っているのだよ。朝までは確かに休憩室で準備していたのだが、気づけばソファで爆睡していて……本当に今起きたばかりなんだよ」


 ゴーヴァン役は信じてくれない仲間たちに訴えた。必死な様子で嘘は言っていないようだ。


 おかしな話に騎士たちは顔を見合わせた。


「確かに剣の筋が違うなとは思ったけど」

「では、誰だ? さっきのゴーヴァン役の男は」


 ルイスは立ち上がった。


「すみません。少しパートナーが気になるので……この辺で失礼します。どうか、パレードの時はよろしくお願いします」


 酷く慌てた様子で騎士役たちも頷くしかない。


 騎士役の集まりから離れてルイスは休憩室へと走った。

 先程のゴーヴァン役の騎士は偽物だった。

 本物を寝かせたとする。


 彼がシャーロットを乙女に選んだとすると、彼女に近づくためだろう。


 あれは、あの場にいてはいけない相手だった。


 休憩室の場所を確認して階段をあがる。

 踊り場のところで上を見るとルイスは心臓が止まる感覚を覚えた。


 上階にいる着物姿の女性がいた。

 彼女は両手で顔を隠していた。


「シャーロットさん!」


 彼女は両手を外してルイスを見た。

 何か言いたげにその場から駆け下ようとした。


 崩れ落ちる体を、ルイスは反射的に抱き止めた。

 先日も感じたが、その体は軽い。

 夏の花の瑞々しい香りがした。


「ルイス」


 かすれた声が耳に響く。

 彼女が回す手は震えていた。首筋でそれを感じる。


「頼む……私をここから連れ出してくれ」


 切ない声での懇願であった。

 彼女は何に遭遇したのだろうか。


 話を聞きたくても、聞ける状況ではない。

 今は彼女を安心させることが優先事項だ。

 彼女が求めるならこの城から出るべきだ。


「わかりました」


 理由を聞かずにルイスは頷いた。

 シャーロットを抱き上げて、彼は馬車が並ぶエリアへと向かった。


 その姿をベランダから眺める存在がいた。

 薄い金色の髪はゆるやかなカールをしていた。

 肌は驚くほど白く、美しい容顔を持つ男だった。

 特筆すべきはそれだけではない。

 シャーロットと同じ紫の瞳をしていた。


 男は、わずかに口元を歪めていた。

 

 

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