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シャーロットの仮説  作者: ariya
箱の中の死

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15.


 取り調べにおいてオットーは口を割ろうとしなかった。

 犯行はあくまで自分がやったことだ。

 その一点張りである。

 おそらく別の場所で取り調べを受けているリーザも同様だった。


 自分たちの犯行を教唆した存在をいう訳にはいかない。

 ルース子爵がリーザを唆したなど。

 ルース子爵が経営する孤児院にはリーザの子、エミルがいる。

 もし、ルース子爵のことを喋ればエミルはどんな目に遭わされるかわからない。


 犯行がばれたのであれば仕方ない。自分はただ刑を待つだけだ。

 ただ、エミルの無事を願いながら。


「お前に面会が来ている」


 シェトラン警部が取調室へやってきた。

 面会を望む者なんて誰だろうか。

 もう唯一の血縁の母はいない。同郷のカロンであろうか。


 せめて彼にエミルのことを見守って欲しいと頼みたい。


 勝手な申し出だと思うが。


「オットー!」


 シェトラン警部が連れてきた面会人をみてオットーは目を見開いた。

 リーザの子、エミルだった。


「エミル……お前の母さんは別のとこにいるぞ」

「違う! オットーに会いに来たんだよ」


 エミルは頬を膨らませていった。


「もちろん母さんにはもう会ってきたよ。すごく泣いていた」

「だろうな……エミル、リーザのことは責めないでくれ。俺が勝手にやって巻き込んだんだ」


 恨むなら俺を恨んでくれ。


 オットーはそういった。


「オットー! 僕は大丈夫だよ。シャーロットが助けてくれたんだ」


 シャーロットという名前にオットーは思い出した。

 ルース子爵の圧力などものともせず、事件を解き明かした法医学者を。


「僕はルース孤児院でひどい目に遭っていた。院長からは僕がいるから母さんは幸せになれないんだと言って……面会に来てくれないのも捨てたから。だから、僕はこのまま1人で生きなきゃと思った」


 それを聞きオットーは眉をひそめた。みるみるうちに顔が歪んでいく。


「何だと、子供に何てことを言いやがるんだ」

「でも、違うってわかった。母さんはずっと僕に会いたかったけど、会えなかったってすごい謝っていた」

「そうだ。リーザはお前を捨てるものか。お前は、リーザの大事な、大事な子なんだ」


 オットーは思わずエミルの頭に触れようとした。一瞬で躊躇する。

 もうこの手は汚れている。エリックを絞め殺した汚い手でエミルに触れることはできない。


「オットー!」


 エミルは前へ出てオットーの腕を握った。彼の傷だらけの手がエミルの頭に触れた。


「僕はオットーが好きだ。本当はあんな奴よりも母さんと一緒になって欲しかった。オットーが父さんだったらいいのにって」

「馬鹿いえ、俺は何もない。もう前科つきだし」

「そんなの関係ない。オットーはオットーだ」


 エミルはぎゅうっとオットーの手を握り締めた。


「オットーが教えてくれたんだよ。子供は大人に守られるものだって……だから、僕のお父さんになってよ。僕は待っているよ。だから悪い奴に負けないで……僕は大丈夫。公女様が守ってくれたんだ」

「こ、公女?」


 予想外の名前にオットーは目をぱちぱちとさせた。

 公女というと王族ではないか。そんな雲の上の存在がどうして。


 混乱しているオットーを見て、エミルはにかっと笑った。


「オットーが会わせてくれたんだよ」


 ますます意味がわからない。だが、エミルは笑っている。それが何よりもオットーの救いだった。


 ◆◆◆


 数日後、新聞各社は大々的にルース子爵の悪事について報道し始めた。

 ルイスが勤務するグレル社の新聞部門もお祭り騒ぎであった。


 パトリシア公女の後ろ盾もあり、彼らは今まで持っていた情報を全て記事に載せていく。


 税務官殺害事件の犯人はルース子爵の教唆されて犯行に及んだ。

 エリック・レインはルース子爵の脱税を見破り、そこから多くの悪事を握りルース子爵を強請っていた。

 ルース子爵はエリックの身内を使い、彼を殺害させた。

 その脱税情報も堂々と報じられた。


 また、孤児院での子供たちの虐待をそのままにしていたどころか、女王の認定で受けていた支援金を着服していたことが明るみになった。


 他にも多くの悪事が新聞に取りざたされる。


 喫茶店「ユーファ」でルイスは持ってきた新聞を眺めていた。

 目の前でアイスを美味しそうに頬張る小柄な女性はここまでを狙っていたのか。


「シャーロットさん、公女が来るとわかっていて強気に出たんですね」

「まぁな……だが、公女が来ていなかったら他の案を考えていた。オルガに頼んで、いろいろとな……アルテミア子爵夫人も協力的だったし」


 以前の事件でシャーロットが助けたことになっている名前の面々を聞いてルイスは苦笑いした。

 公女が来なかったとしてもシャーロットはルース孤児院を破滅させる気だった。

 もちろん、あんな虐待院など破滅して問題ないのだが。


「公女のおかげで堂々と潰せたし、彼女の名前で新聞会社も強気にでた。この件で女王陛下もかなりご立腹なようだしな」


 ふふっとシャーロットは愉快そうに笑った。

 まさか女王陛下まで巻き込むとはとんでもないことをしでかすな。


 だが、今回はルイスも小気味よかった。


 

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